「やっぱり彼の一本となるとタイタニックなのよね」アイドルイメージから脱却、悪役も演じたディカプリオの、社会現象となった出世作
「やっぱり彼の一本となるとタイタニックなのよね」アイドルイメージから脱却、悪役も演じたディカプリオの、社会現象となった出世作

字幕翻訳の第一人者・戸田奈津子さんは、学生時代から熱心に劇場通いをしてきた生粋の映画好き。彼女が愛してきたスターや監督の見るべき1本を、長場雄さんの作品付きで紹介する。

ディカプリオの出世作なら

世界で初めて『タイタニック』(1997)がお披露目されたのは1997年の東京国際映画祭でした。主演のレオナルド・ディカプリオはジェームズ・キャメロン監督と一緒に来日しましたが、その時のレオ・フィーバーはものすごく、その様子をおもしろがった監督はファンにもみくちゃにされる彼を追い、カメラに収めていました。

俳優として、あの大ヒットはとてもいい経験だったと思いますが、レオ本人にとっては相当なプレッシャーでもあったようです。

『タイタニック』の後に出演を決めた作品が、ダニー・ボイル監督の異色作『ザ・ビーチ』(2000)だったことからも、アイドル的イメージを脱却しようとしていたことがうかがえます。

その後はマーティン・スコセッシやクリント・イーストウッド、クリストファー・ノーランやクエンティン・タランティーノなど名だたる監督たちとタッグを組み、今ではキャリアも見た目も立派なベテラン俳優になりましたが、やっぱり彼の1本を挙げるとなると『タイタニック』なのよね。出演作が社会現象になる経験をしたスターは多くありません。



レオの魅力満載の大出世作だったと思います。

『タイタニック』(1997)Titanic 上映時間:3時間14分/アメリカ

1912年4月10日、当時史上最大の豪華客船タイタニックがイギリスのサウザンプトン港からニューヨークへ向け処女航海に出発した。新天地アメリカに夢を抱く画家志望の青年ジャック(レオナルド・ディカプリオ)は、上流階級の娘ローズ(ケイト・ウィンスレット)と運命的な出会いを果たす。

ところがローズは、保守的な母から政略結婚を強要されており、資産家の婚約者キャルも同船していた。それでも2人は、身分や境遇を超えて情熱的に惹かれ合うことに。しかし航海半ばの4月14日、タイタニック号は氷山と接触。

船は徐々に傾き始める……。

ジェームズ・キャメロン監督作。アカデミー賞では作品賞、監督賞、撮影賞など11部門を受賞した。

レオナルド・ディカプリオ

1974年11月11日生まれ、アメリカ・カリフォルニア州出身。14歳から子役として活動し、19歳のときに出演した『ギルバート・グレイプ』(1993)でアカデミー助演男優賞にノミネート。『ロミオ+ジュリエット』(1996)ではベルリン国際映画祭の銀熊賞を受賞した。

『タイタニック』(1997)のヒットで一躍世界的なスターに。

その後は『ギャング・オブ・ニューヨーク』(2002)『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(2002)『アビエイター』(2004)『ディパーテッド』(2006)『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』(2008)『インセプション』(2010)『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012)『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013)など話題作に出演。

『レヴェナント:蘇りし者』(2015)でアカデミー主演男優賞を初受賞した。ロバート・デ・ニーロと共演した『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(2023)ではマーティン・スコセッシ監督と6度目のタッグを組んだ。環境保護活動家としても知られている。

語り/戸田奈津子 アートワーク/長場雄 文/松山梢