
3年連続最下位と球団ワースト記録を更新している中日だが、今年こそ最下位脱出なるか。そのキーマンとなり得るのが7年目のシーズンを迎える根尾昂だ。
鳴り物入り入団もプロ6年で勝ち星なし
立浪和義前監督は就任から3年連続最下位となり無念の退任。さらにメジャー挑戦の小笠原慎之介と巨人へと移籍したライデル・マルティネスを失い、重い空気が立ち込める球団を引き継いだのが新監督に就任した井上一樹だ。
「立浪氏に比べるとタレント性は低く、球場に多くのファンを呼べるかという懸念はある。しかし、昨年のドラフト会議では4球団が競合した大学ナンバーワン投手、金丸夢斗を引き当てた際に派手にガッツポーズをして肩を痛めるなど、意外とおもしろいキャラクター。性格も明るく、中日の空気を一変してくれる雰囲気があります」(某スポーツ紙中日担当)
指揮官としての手腕も期待される。
「一昨年、中日の2軍監督に就任すると、ウエスタン・リーグで2年連続最下位だったチームを昨シーズンは2位に押し上げています。じつは2009年に現役引退をした後、1軍打撃コーチを経て最初の2軍監督を経験していますが、その年もチームをファーム日本一へと導いているんです。
当時、1軍監督だった落合博満氏もその指導力を高く評価していたと聞きます」(同前)
ついに1軍でその能力を発揮することになった井上監督。預かるチームの戦力も決して低くない。先発陣は昨季、最優秀防御率を獲得した髙橋宏斗を筆頭に、柳裕也、松葉貴大、涌井秀章と駒は揃う。
野手陣も石川昂弥、細川成也、村松開人、岡林勇希と若手の成長が目覚ましい。投打がうまく嚙み合えば、昨季の日本ハムのように躍進してもおかしくはないのだ。
そしてもうひとり、躍進の“ラストピース”として、中日ファンが熱視線を送り続ける存在といえば、二刀流として強豪・大阪桐蔭の主力を担い、春夏合わせて3度の甲子園優勝を成し遂げた根尾昂だ。
2018年にドラフト1位で入団して以来、将来を嘱望されるも打撃は通用せず、2023年からは投手に専念しているが、いまだにひとつの勝ち星もあげられていない。
彼はいったい1軍の舞台で活躍できるのか。辛口評論家で知られる“エモやん”こと江本孟紀氏はこう斬り捨てる。
高校野球のスターがプロで通用しない理由
「正直に言ってしまうと、(根尾のブレイクは)もう無理だね。彼は今年で25歳でしょ? 高卒だったら22歳前後で出てこないと。プロ野球の大変なところは何年も継続して成績を残すこと。
たとえ15勝するシーズンがあっても、翌年6、7勝なら意味がない。それなのにいまだに1年も活躍してない選手が今後それをできますかと」(江本氏、以下同)
高校野球では間違いなくスター選手だった根尾が、なぜプロの世界では本領発揮できないのか。
「斎藤佑樹もそうだけど、過去にも高校でスターになってプロで通用しなかった例はいくつもある。高校生くらいの子どもの能力って同い年でもバラつきがあるし、甲子園に出場する高校出身でも大学や社会人ですら野球を続けられない子がたくさんいるわけじゃない。
そういう投手を、打ったり、打線を抑えたからといってプロでそれをそのまま評価の対象にしているほうがおかしい。甲子園で活躍すればものすごくいい選手に見えるけど、(プロのスカウトなら)そのくらい(プロで通用しないことを)見抜かなくちゃイカン」
一方で、清原和博や松井秀喜、松坂大輔のように超高校級からプロ入りして、ルーキーイヤーからいきなり通用するケースも少なくない。
「清原も松井も身長は188センチ、松坂は182センチ、小さそうに見えるイチローだって180センチあるからね。そういうのに比べると根尾は小さい(177センチ)。我々が少年野球の子どもたちに教えるときに『身長は関係ないよ』と言ってるけど、一定のレベルを超えるとやっぱり差が出るよ。
同じくらいの身長で活躍してる今永(昇太)みたいな選手もいるけど、彼は特殊な体幹を持ってる。小さな選手が成功するためには、デカイやつの何倍も練習をしなくちゃいけないからね」
バッサリと斬られてしまった根尾。とはいえ、やはり中日ファンは彼の活躍を願ってやまない。プロ7年目の今季に、その真価を目の当たりにできるか。
取材・文/集英社オンライン編集部