心の問題は心で解決してはいけない…93歳の心療内科医が「自分にこそ『ここまでよく頑張った』と言ってほしい」と説く理由
心の問題は心で解決してはいけない…93歳の心療内科医が「自分にこそ『ここまでよく頑張った』と言ってほしい」と説く理由

16万部を超えるベストセラー『ほどよく忘れて生きていく』の著者で京都の小さなクリニックを営む93歳の心療内科医・藤井英子医師の言葉が静かな反響を呼んでいます。「まあいいか」という言葉に込められた、しなやかな生き方のヒント。

最新刊『ほどよく孤独に生きてみる』より一部抜粋、再構成して、心が楽になる言葉をお届けします。

自分にこそ「よく頑張りました」

人には親切なほうがいいですし、誠実なほうがいいのですが、自分の余力以上の力を他の人に注ぎ続けると、自分のエネルギーが枯渇して動けなくなります。

いつも人のために何かしなくてはと思いすぎて、人のために頑張りすぎて、結果、疲れ果ててしまうのであれば、自分一人になって自分の世話をする時間を持ってほしいと思います。

人は、自分の心に余裕がないと、人に親切にできず、思いやりも持てなくなり、「これだけしてあげたのに」と、見返りを求めてしまったり、人を羨ましく思ったり、妬みの心が生まれたりもするのです。

さらに、そう思ってしまった自分を責めて、「私が悪かったのかもしれない」なんて、自己憐憫に陥ってさらに苦しくなってしまうのなら、まずは、自分にこう伝えてあげてください。

「ここまでよく頑張りましたね」と。

そして、人に振る舞っていたエネルギーを自分のために使ってあげてください。少し、一人になる時間も必要かもしれません。おいしいものを食べ、美しい景色を見て、森林浴をして、深呼吸してみてください。

頭の中を空っぽにし、自分だけの、少し孤独な時間を大切にしてみてください。あなたの疲れた心をやさしくいたわることができる、一番身近な存在はあなたです。

「ネガティブ思考」に陥るときは

落ち込むことは誰にでもあることですが、すぐに切り替えて「これからどうするか」を考えられる人と、落ち込みを長引かせてしまう人がいます。

この、落ち込みを長引かせてしまう原因のひとつが、心理学的には「反芻思考」、医学的には「抑うつ的反芻」と呼ばれるものです。これらは、うつ病や不安障害などの精神疾患の症状やリスクとして考えられています。

「あのとき、ああしなければよかった」

「あの言い方が悪かったのかもしれない」

そんなふうに、ネガティブな考えがぐるぐると頭の中で繰り返してしまうと、徐々にネガティブなことを考えるのが習慣になり、何に対しても悪い方向に捉え、抑うつ状態を強めてしまうことがあります。そして「考えないようにしよう」と考えるほど、意識してしまってさらに囚われてしまうこともあるようです。

そういうときは、「今、それに対して自分にできることがあるか」について考えてみましょう。できることがあるのなら行動します。ないのであれば、そのことを一切考える余裕がないくらいに、別のことに集中する時間を持ちましょう。

たとえば、筋トレをしてクタクタに疲れてみたり、大人の塗り絵に没頭してみたりと、心の問題を心で解決しようとせず、からだを動かすことです。心は、からだを物理的に動かすことで解決できることがあります。

「まあいいか」で生きていく

クリニックを立ち上げてしばらくして、患者さんも増えはじめてきたころから、末娘の四女が土曜日にクリニックを手伝ってくれるようになりました。

四女だけはまったく実母の手助けなく自分で子育てをしたからか、四女が一番私に性格が似ているようにも思います。

先日、私が「いつお迎えが来るかわからないから」なんて言ったそうで、四女は心配していたようなのですが、翌日には、「そんなこと言ったかしら」と私が言うので驚いた、と聞きました。私は、そんなことはすっかり忘れていたのでそう言われて驚いたくらいです。そのときは何かしら少しそうしたことを思ったのでしょうが、すぐに忘れてしまいます。

四女も私のそんな性格を受け継いでいるようで、何かいやなことがあったり、うまくいかないことがあったりしても、「まあいいか」とすぐに切り替えてしまうようです。

コツがあるのかというとわかりませんが、自分になんとかできないことに固執しないことかもしれません。

四女は「まあいいか」ですが、たとえば「よし、おしまい!」「まぁ、大丈夫!」など、何かご自分の「切り替えスイッチ」のような口ぐせがあるといいですね。言葉は言霊ですから、気持ちを変えて、行動を変える効果は大いにあると思います。

文/藤井英子

ほどよく孤独に生きてみる

藤井英子
心の問題は心で解決してはいけない…93歳の心療内科医が「自分にこそ『ここまでよく頑張った』と言ってほしい」と説く理由
ほどよく孤独に生きてみる
2025/2/201,540円(税込)160ページISBN: 978-4763142016

離れていい。ひとりでいていい。
誰かとうまくかかわるための、心地よい「心の守り方」とは?
予約が絶えない心療内科医の「近づきすぎない」幸せの秘訣。


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人間関係は、なければ寂しく、
あれば煩わしいものですね。
ときどき、ほどよい孤独を選んでみませんか?
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93歳の現在も、日々診療に向き合う心療内科医の藤井英子医師。
現役で仕事を続けるなかで紡ぎ出される自然体の言葉が評判です。
日常の暮らしのなかで、心がすこし曇り空の日、雨降りの日など、
ふと立ち止まる日に心を軽くする言葉が満載です。

前作『ほどよく忘れて生きていく』の感想にあった「1日誰とも話さない日があってさびしい」という声に、先生がお答えするかたちで、「ほどよく孤独に」というメッセージが生まれました。
人間関係も、人の目も、情報も、
「すこし離れている」くらいでちょうどいいのかもしれません。


日々、自分の心に目を配り、からだを動かして、人間関係をすこし軽やかにする。

見開きに1つのお話で、さらりと読めるのに心に残る、
ずっと手元に置いていただきたい1冊です。

【目次より】
◎「属さない」自由
◎近い人ほど「あっさり」
◎気が合わないのは「あたりまえ」
◎「友だち」より「話し相手」
◎「人の噂」は半日もたない
◎恨みは「忘れる」ではなく「かき消す」
◎いつだって「これから」を話す
◎過去は「アルバム」にだけ
◎「まあいいか」で生きていく
◎自分にこそ「よく頑張りました」

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