
昨年、50―50というMLB史上初となる歴史的偉業をなしとげたドジャースの大谷翔平。今季はついに二刀流復活のシーズンとなるが、これは彼の打撃成績にどのような影響を及ぼすのだろうか?
現地のドジャース番記者が綴った『SHOーTIME 3.0 大谷翔平 新天地でつかんだワールドシリーズ初制覇』より一部を抜粋、再構成してお届けする。
二刀流復帰への試考錯誤
ドジャースは2025年3月19日と20日に、シカゴ・カブスとの開幕2連戦を、相手に東京ドームで試合することになっている。当然、日本人ファンが熱望するのは、この2試合に大谷翔平と山本由伸が先発登板することだ。ドジャースのブランドン・ゴメスGMは念を押した。
「われわれとしては、ショウヘイが健康体でいられるように注意事項を1つひとつ確認して、チェックをいれていかないといけないんだ。それで1つでも欠けている項目があれば、それを賢明かつ整然とした手法で潰していかなければならない」
ほかにも、2025年に大谷が二刀流を再開するにあたり、「賢明かつ整然とした手法」がドジャースに求められる問題点がある。
1つ目に、いかにしてドジャースは、この2年間に負傷者続出でガタガタとなった先発ローテーションに大谷を組み込んでいくのか、ということだ。
大谷と山本は、ともに先発登板の間に少なくとも5日間の休養を与えられる予定だ(本来は中4日が通常の休養期間だ)。ということは、先発投手6人体制でまわしていくことが必要になりそうだ。実際に、大谷が投手として登板していたエンゼルスはそうしていた。
2024シーズンが終幕し、ドジャースには2025年にケガからの復帰を期待されている投手が何人も控えている。
タイラー・グラスノー、トニー・ゴンソリン、クレイトン・カーショー、ダスティン・メイに加え、若手有望株のエメット・シーハン、リバー・ライアン、カイル・ハートがそうだ。
新人の年に大車輪の活躍を見せたギャビン・ストーンは10月に肩の手術を受け、2026年まで復帰は絶望視されている。ウォーカー・ビューラーはフリーエージェントになる。
「まだわからないな」
フリードマンは、大谷を加えたドジャースの先発投手ローテーションはどのような体制になるのかと問われ、率直に答えた。
「われわれとしても、大まかな計画は立てている。そこから微調整を加えて、評価して、(先発したあとに)どのように回復していくのかを見定めて決めていくことになる。今の時点で会議室に座って考えても、わからないことはわからないのだから、知ったふりをするつもりもないよ。できるだけ柔軟に考えられるようにしておいて、今後、さらに多くの情報やデータが集まったらだんだんかたちが見えてくるようになると思うよ」
ドジャースとしては、2025年に投手としての大谷が加わることにより、「投手陣に深みが出てくるのを期待している」とゴメスGMが明言しつつ、こう強調した。
「彼には通常の休息期間と登板を行ってもらうことは期待していない。そのほうが長い目で見れば活躍の期間が伸びるはずだ。シーズンに入り、われわれはじっくり腰を据えて今後の進め方をどうするか話し合った。彼に年間220イニングを投げてもらおうとは思っていない(大谷の最多記録は2022年の166イニングだ)。今はどうすれば彼の能力を最大限に引き出せるのか、徹底的に検討をしている段階だよ」
「去年よりさらにすごい成績を出すかもしれない」
2025年に大谷を二刀流選手として起用できれば「多くの利点」が生まれてくる、とフリードマンは付言した。
「投手陣は13人体制なわけだ。それに加えてショウヘイだぞ。しかも、数年前にルール変更があっただろ。
大谷が2025年に投手として復帰するとなれば、当然、登板することが打者としてのパフォーマンスにどう影響するのかが気になるところだ。
2024年の歴史的偉業を見るにつけ、指名打者として打撃のみに集中すれば、大谷が打者として最大限の力を発揮できることが明らかになっている。しかも、走者としても超一流というおまけといえないほど大きいおまけつきだ。
フリードマンは、2025年に大谷が二刀流選手としての活動を再開したら、打撃成績にどのような影響が出るかについて問われ、こう答えている。
「それは、わからないな。現時点の私には何も断言できない。何もかも前代未聞の事態が続いているわけだからね」
ドジャースのロバート・バンスコヨク打撃コーチは、同じ問いに対して3ワードで回答した。
「I don’t know(私にはわからないよ)」
2025年に二刀流選手として復帰したら、大谷の打撃成績にどのような影響をおよぼすことになるのかという、いつもの問いに対する答えだ。
「明らかなのは、まだ私はその状態を見たことがないんだ。彼が投手として投げる様子をまだきちんと見ていないし、それがほかのもろもろにどのような影響をおよぼすかも、当然まだ見ていないわけだ」
バンスコヨクが率直に答えた。
「ショウは、あらゆる事象を細かく切り分ける能力に長けている。
投手をやめたら「打撃には悪い方向に響くだろうね」
ブランドン・マクダニエルの理論で、大谷の投手としてのリハビリは、試合で打者として出場しているからこそ順調に進んでいるというのがあるが、ドジャースのアシスタント打撃コーチであるアーロン・ベイツも、大谷が打者として試合に出ているからこそ投手としての恩恵も受けていると考えている。
「私にも自分なりの理論がある。正直、完全に正しいのかどうかわからないが、来年には正しいかどうか証明されるだろう。仮にショウヘイが来年いっさい投手としての活動をやめたとしよう。そうなればおそらく、打者としての破壊力は少しずつ落ちていくと私は思う。
なぜなら、投手としてのワークアウトは打者としての彼に大きな力をもたらしているからだ。メンタル面でも大きく寄与していると思うよ。今年の彼は打撃一本に絞ってエリートの次元に達したわけだ。
そこで投手としてのリハビリを続けていたことはどういう役割を果たしたか。1つ目に、単純に打撃からいったん離れる休息の役割を果たしていた。
この強靱な下半身から生み出される力が、ショウヘイのスイングに寄与している側面は絶対にあると思うよ。そんなショウヘイが突然、投手としての活動をいっさいやめたとしたら、今まで投手として積んでいたワークアウトを続けるのだろうか。というのも、あの下半身の強さは衝撃的なものだからね。
あの強靱な下半身は投手として必要だから身についたものだと思う。数字だけを追えば、いいシーズンも悪いシーズンも必ずある。でも、今後も彼は打者としてもっと上を目指し続けると思う。だがあの強靱さがなくなったとしたら、打撃には悪い方向に響くだろうね」
文/ビル・プランケット 訳/タカ大丸
SHOーTIME 3.0 大谷翔平 新天地でつかんだワールドシリーズ初制覇
ビル・プランケット (著)、タカ大丸 (翻訳)
しかし、開幕早々に襲いかかった悲しい大事件――。
いったい、大谷翔平は、どのようにしてメンタルとフィジカルを保ち、50―50というMLB史上初となる歴史的偉業と、悲願のワールドチャンピオンを獲得するに至ったのか。
現地のドジャース番記者が、かずかずのチームスタッフ、選手たちの証言によって明かす、生きる伝説・オオタニショウヘイの真実の肖像!