人生が激変する「没入読書」…年間3000冊以読破の読書家が勧める、誰でも集中力と認知力が向上する読書法とは?
人生が激変する「没入読書」…年間3000冊以読破の読書家が勧める、誰でも集中力と認知力が向上する読書法とは?

大ヒット中の『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(著:三宅香帆、集英社新書)が描いているように、忙しさやスマホ依存などで、かつてのように本が読めなくなっている人は少なくない。単そんな人におすすめしたいのが「没入読書」という読書法だ。

意志力や意識的な集中に頼らず、自然と本の世界に引き込まれていく状態に。どんな状態になり、どんなメリットがあるのだろうか。年間3000冊以上読破する読書家の渡邊康弘さんの著書『没入読書』より一部抜粋、再構成してお届けする。

没入とはフロー状態になること

没入とは、辞書によるとこのように書かれています。

「入ること、陥ること、没頭すること」

「何かに没頭していること、何かの世界に入り込んでいること」

この没入という感覚は、スポーツをされている方はご存じの「ゾーン」や「フロー」に入る感覚と近いでしょう。 

没入状態になるためには、この「フロー」を探っていく必要があります。

フローという概念を生み出したのは、アメリカのクレアモント大学院大学の特別栄誉教授ミハイ・チクセントミハイです。

チクセントミハイは、「最高の楽しみの瞬間」「外部の力で運ばれていく感覚や努力せずに流されていくような感覚」「複雑なことでも思ったことが思ったように進んでいく状態」をフローと名付けました。

こののめり込んでしまう状態であるフローをより実感するには、「よい本を読むこと、読書中に我を忘れるほど登場人物になりきり、物語に没頭すること」と述べています。まさに没入読書といえますね。

フロー状態を感じているときには、7つのことが起こっています。

その7つとはこちらです。

1●目標が明確:何を目標としているかが明確で、その道をたどる過程での経験を楽しんでいる状態。


2●即時フィードバック:自分がしていることに対して、どれくらいやれているかというフィードバックを得られている状態。 
3●「チャレンジ」と「スキル」のバランス:自分の能力に対してある程度のレベルの複雑さにチャレンジしている状態。
4●集中の深化:没頭して、集中の度合がある基準を超えたために、突然その世界の中に深くのめり込んでいる状態。
5●現在に集中:楽しく、ワクワクしていて、いまこの瞬間に集中している状態。
6●自己コントロール感:こうしようと思ったことが思ったままできる、自己やその場をコントロールしているような感覚がある状態。 
7●時間感覚が変化:実際の時計の時間よりも、妙に長く感じたり、反対に短く感じたりする状態。

この7つが生じていると、自分自身を忘れているような没我の状態になります。

本を読んでいて、この状態になるのが「没入読書」です。

集中力・フロー状態となり、擬似体験も

働く前の、あの本にのめり込んでいた感覚を取り戻してくれます。もちろん、いままでそのような本にのめり込む経験がなくとも、大丈夫。本を読むことが楽しいと思えるようになる読書法なのです。

没入読書によって得られる7つのメリットのうち3つをご紹介しましょう。

(1)集中力・フロー状態

没入読書は、集中力やフローと呼ばれる意識状態を身につけることができます。



集中力やフロー状態を身につけることは、これからの時代を生き抜くために必須のもの。2020年代からAIに関するイノベーションが急速に進み、ChatGPTやGemini、Claude(クロード)といった生成AIが誕生し、私たちの生活の流れも変わってきています。これからの10年でこれまでの100年分ともいわれる技術変化に対応していくのは本当に難しいことです。

そうした中、ピーター・ディアマンディスは『2030年 すべてが「加速」する世界に備えよ』で、技術変化に対応する唯一の方法が、「常に、そして継続的に学びつづける」ことだと結論づけています。

そして、学びには心理的なものと、物理的なものの2つの核となる要素があり、心理面ではフロー状態に入る方法を身につける重要性について述べています。

フロー状態では、脳の基本的な情報処理能力がすべて強化されるので、思考のスピードを高め、スケールを広げられるといいます。そして、想像力や生産性、学習能力、協業の能力を強化することで、パフォーマンスを大幅に高め、変化に対応できる
としています。

ちなみに、もうひとつの物理的な要素とは、物理的に存在するテクノロジーに関する学びとしています。ChatGPTなどのテクノロジー分野の先端がどうなっていくのかを学ぶことが重要なのです。

平たくいえば、精神的なものは「集中力」、技術的なものは「スキル」と言い換えることができるでしょう。

(2)疑似体験・エンタメ

本は、「まだ見ぬ世界を体験できる」というエンタメを提供してくれます。

特に没入読書では、深くその本の世界に入っていくことができます。


「人間とサルとの違い、それは、人間は書物を通じて、人の一生を数時間で疑似体験できる。だから、本を読め。生涯、勉強しつづけろ」

これは、GMOインターネットグループ代表の熊谷正寿氏の父親の教えです。

本の世界に入り込む

本は、何百年という時間を超えて、その当時の情報を伝えてくれます。

本は、そこに描かれているところに身を置けば、その当時を疑似体験できます。

中でも小説では、まだ見ぬ世界に入っていくという感覚を味わえます。

村上春樹氏の本であれば、「井戸の底」という世界にどんどん入っていく感覚があります。井戸の底とは、村上氏の言葉を借りれば、好奇心そのもの。ドアがそこにあって、開くと別の世界へ足を踏み入れられるもの。

『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『街とその不確かな壁』。私は、彼の小説を読んでいるとどんどんその世界に降りていく感じがあります。その暗い暗い世界の中で、気味の悪いキャラクターに出会います。それによって、自分という存在を再認識させられます。

阿部智里氏の『烏に単は似合わない』に始まる「八咫烏シリーズ」を読めば、平安時代のような世界を体感できます。

辻村深月氏の『かがみの孤城』は、自分自身の嫌な感情、あまり人に見せたくないような感情を癒してくれます。

歴史小説を読めば、その登場人物に自分を重ね、戦場を駆け抜け、外交や政治を疑似体験します。意思決定の仕方、人の見極め方、採用・育成の仕方……そのノウハウが歴史小説の中にあります。

経営者の多くが歴史小説を好み、特に戦国・安土桃山時代の織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、また『三国志演義』や『水滸伝』などの人気が高いです。経営者は、自分を登場人物に重ねて難局を疑似体験し、いま起こっている経営状況を判断しているのです。

本というのは文字情報だけですが、その情報を読むことによって起こる想像・連想を通じて、だんだんとその世界に入り込んでいけます。

その世界がイメージで現れてきます。このイメージはビジュアルイメージというケースもあるし、匂いや香りといったものだったりするかもしれません。何か音が聞こえてくるような感覚がするかもしれません。

これが、先ほどお話ししたゾーンやフローといわれているような感覚、研ぎ澄まされている感覚に通じているのです。

認知力もある程度高められる

(3)頭がよくなる

本を読むことで、頭がよくなります。

ここでいう頭のよさとは「認知力」のこと。

記憶力や思考力、計算力、言語力といった学力のことです。この認知力は、ただ文字を読むだけでも高まります。

読書のプロセスは、文字を目から画像として取得して、その画像を文字列に認識する。そして、文字列を意味に変換して、意味をイメージとして理解するものです。

このプロセスは、生まれてすぐに獲得しているという能力ではなく、生まれた後に段階的にトレーニングを積んで獲得するものです。

文字が速く読めるかは、このトレーニングの量、結局のところ経験則なわけです。量が多ければ多いほど優位になります。また、ますます重要性が高まる生成AIが作り出す情報も、多くがテキストのものです。そのため生成されたものを速く処理する力が大事になります。

さらに本は、自分と似たような考え、逆にまったく違う考えを学べます。いろいろな人の考えを知り共通項を探ったり、差異点を見つけたりすることは、頭のよさである認知力のアップにつながっていきます。

現在、行動遺伝学の世界では、遺伝要因が9割優位とされます。


しかし、本が好きになるかは、遺伝ではなくて環境要因にあるといいます。

たとえば、親に絵本を読んでもらって、本が好きになったという人も多いでしょう。また、親がよく本を読んでいるので、自分でもその行動を真似て本を読んでいたという経験をもつ人も多いはず。

実際、オーストラリアのある研究では、親が読書を楽しんでいると、子どもも20%増の割合で、読書を楽しんでいるといいます。

頭のよさである認知力も、訓練を行えばある程度高められます。

その訓練のひとつが、本を読むことです。

さらに、没入読書は通常の読書と比べ、本を読む量が圧倒的に増えます。そのため、認知力をアップさせるのにより適切といえるでしょう。

後編では没入読書によって得られる7つのメリットのうち残る4つのメリットを解説します。

没入読書

渡邊康弘
人生が激変する「没入読書」…年間3000冊以読破の読書家が勧める、誰でも集中力と認知力が向上する読書法とは?
没入読書
2025/3/131,650円(税込)208ページISBN: 978-4763142047

忙しくても本を読める人がやっていること。
やる気に頼らず、自動的に集中できる本の読み方。


「本の内容が頭の中に入ってこない」
「働きはじめてから、読書に時間が取れなくなった」
近年、本を読みたくても読めなくなった人が多いといいます。
しかし、その理由は“忙しいから”だけではありません。

それは、スマホが身近になったから。
反射的に起こる通知に身を委ねてしまうと、
私たちはその刺激から抜け出せなくなるのです。
スマホの通知音などの刺激から脱し、本に集中できる方法、
それが「没入読書」です。


没入読書の特徴は3つ。

◉やる気や意志力を使わない
◉意識的に集中しようとしない
◉本を読むことに価値があると体に思い込ませる

没入であるフロー状態とは、「目標を設定」したり、
「呼吸を整えたり」するといった具体的な方法で導くことが可能です。
さらに、本の難易度が自分にとってやさしすぎても、
難しすぎても集中が切れてしまいます。
こういった具体的な方法で、
科学的に集中力を自動的に高める方法をお伝えします。

さらに、本書を読みながらすぐに実践できる
「47秒間読書」「10分間指速読」から、
究極の没入読書である1冊20分で読める
「レゾナンスリーディング」も公開します。

没入する体験は、本を速く、たくさん読めて内容を忘れないことはもちろん、
ストレス軽減やアイデアが湧くといった副次的な効果もあります。
これで、忙しくても、スマホが手元にあっても
本に没入できるようになります。

【目次より】
◎まずは毎日の「47秒読書」で本と付き合いはじめる
◎スマホがあっても集中できる「10分間指速読」
◎読書前に「呼吸を整える」だけでも集中できる
◎【没入読書1】集中力の第一歩は「目標設定」にある
◎【没入読書2】「即時フィードバック」が集中状態を生み出す
◎【没入読書3】「チャレンジ」と「スキルのバランス」で集中が途切れない
◎めんどうだけど没入を生むのに効果的! 読書メモ
◎自己コントロール感を生み出す「読書ノート」
◎書店には「目的」をもって入店すれば失敗しない
◎生成AI時代だからわかった! 天才たちが大事にしていた「問い」

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