
今年も結成16年以上のコンビによって争うお笑い賞レース『THE SECOND~漫才トーナメント~2025』が開催される。史上唯一2年連続グランドファイナルに進出している漫才コンビ・金属バットは今年も参戦。
開幕戦で辛勝の金属バットを直撃
—今年のTHE SECOND「開幕戦ノックアウトステージ32→16」を終えましたね。とりあえず、おつかれさまでした!
友保隼平(以下、友保) 危ない危ない。エルさん(対戦相手のエル・カブキ)めちゃくちゃ強い。いや、勝ってよかったっすわ。
—2025年のTHE SECONDは1組目からとんでもない対決でした。
友保 いきなりトップバッターがエルさんたちみたいな時事ネタ漫才から、俺らみたいなわけわからん漫才、ウケないですよ。寄席やと思って考えてみてください。ちょっと順番がよくないですね。すべて順番が悪いです。俺らは何も悪くない
—以前の取材で小林さんはTHE SECONDの勝敗は「結局は組み合わせ次第」とおっしゃってましたもんね。
小林圭輔(以下、小林) じゃんけんみたいなもんです。
—組み合わせ抽選前からエル・カブキさんに注目されていて「選考会クリアしたら絶対に強い」と警戒していました。
小林 エルさんがやりやすそうな世間の風潮になってきてますからね。
—世の中が荒れているということですか。
小林 荒れ狂ってますよ。
—先攻のエルさんの勢いが面白くて、ちょっとヒヤっとしました。一昨年のマシンガンズさんを彷彿とさせるような……。なりふり構わずくる歴戦の芸人はすごいパワーありますね。
友保 そうなんすよ。いや、(今年の1発目ということもあってか)ハマらんなって。危なかった。マジで耐えましたねえ。
—ハマらんなと思いつつも勝つとは、金属バットの地力もすごいです。
友保 いやいや、人気だけですから、俺ら。
—『漫才ブーム10年間ツアー』を一緒に周っている後輩のツートライブさんも勝ち上がりましたね。
友保 マジよかったっすわ。脱法ジビエ(笑)。
小林 ツートライブは次ななまがりさんとか……。
友保 ななまがりさんもめっちゃおもろかったのに、そこまで客が拍手してなかった。びっくりしました。わし後ろで見てたんですけど、もっとリアクションあってもええやろと。
—司会の(ガクテンソク)奥田さんとは何かお話されました?
友保 舞台裏であったんすよ。ほんま悪い顔してた。もう上がってるもんなぁ。
—奥田さんは今年のTHE SECONDの優勝候補に金属バットを挙げてました。
友保 今日の点(264点)見てみろ(笑)。(開幕戦ノックアウトステージ32→16の最高得点は囲碁将棋の297点)
警戒していたエル・カブキの爆発力
—奥田さんの理論では賞レースで優勝するチャンスは、3年に1度なんだそうです。この理論についてお二人はどう思われますか。
友保 いや、まああるんじゃないですか。チャンピオンが、そう言わはるなら。
—金属バットさんのTHE SECOND優勝のタームはいつなのか。
小林 どうなんすかね。去年(金属バットはベスト4敗退)がチャンスやったって考えたら、あと3年間はないですね。
—開幕戦の対戦相手エル・カブキさんはどうでしたか。
友保 エルさんはハマれば、めっちゃ強いっすからね。よう地下ライブいっしょにやったけど、バチバチのときエグいもんな。
小林 今日なんて、まだハマってない感じやったな。
—え? ハマってなくてあんなに面白いんですか?
友保 そうなんですよね……まあまあ、(オープニングアクトの)TEAM近藤が1番ハマってなかったですけどね(笑)。
—地下ライブでハマったときのエル・カブキさんってどんな感じなんですか?
友保 なんでしょうね。もっとガンガン刺してくるし。放送できへんこともっと言うし。今日は配信があったから助かりましたわ。でも、なんかどうやら林さんの足、震えてはったらしいなあ。
小林 へえええ。
友保 そう、終わった後、しゃべっててんけど、足が震えてたって。
小林 全然そんなふうには見えんかったよな。あの芸風で震えるのかぁ。
友保 「まあ、黙ってバイト行ってください」って言うときました、俺は。
—これぞTHE SECONDですね……。
友保 エルさんとは対戦前にフジテレビの喫煙所で会って。
小林 上田さんが楽屋に来て、けっこう居座ってしゃべってたんですけど。最初は「懐かしいなぁ」みたいな話してたのが、楽屋にいたうちのマネージャーのこと見て「強そうですね」って。で、お互い格闘技やってることがわかって。そこでむちゃくちゃ盛り上がってました(笑)。「誰々さんについてる誰々さん知ってる?」とかマニアックな格闘技話で。
友保 上田さん寝技よな。柔術のほうやから。
小林 うちのマネージャーが行ってるジムのことまで知ってたな(笑)。
友保 昔インディーズライブで一緒やった時、そんな格闘技とかやってはったかなぁ。
フジテレビで出会ったドデカい男
—当時のエル・カブキさんはどんな芸人だったんすか?
友保 いや、あのままですよ。
小林 林さんはあのままよな。
友保 林さんは年も食ってなかったわ、久々に会うたけど。まんまやったな。何にも変わってなかったな。ただ上田さんがあんな髪色じゃなかったよな。
小林 あー黒かったよな。黒かった黒かった。
友保 ほんまに配信があったから俺ら勝てましたよ。あれ、たぶん配信なしやったら、もっとムチャクチャ言うてるから。助かりましたわ。
出番前、袖で待ってたら、向こう(対戦相手側)の袖も見えるじゃないですか。エルさんが先攻やったんで、いざ行くっていう時に完全に俺に中指立ててたんですよ、あいつら。ええ。で、林さんも完全にギロチンポーズ。完全に格闘技やったな(笑)。
小林 出番前、上田さんケータリングにはない2リットルの水飲んでたしな。地下芸人かい!
友保 飲んでたからよかったよ。あれ飲まんかったらマジでただの猫除けやから。
小林 なぜかラベルも外してたな。
友保 家から汲んできたん水やな。
—若い頃に一緒にライブやってた芸人同士が対戦するなんて、熱いですね。
友保 終わってからもずっと一緒にしゃべってたんですけど、もう平和なもんですよ。ええ、スッキリ。あ、そうそう林さんと喫煙所から出たら廊下になんかえらい大人がいっぱいおって、なんや思たら奥からラモス(瑠偉)出てきてびっくりしたわ。
小林 デカかったな。こんなデカイんやって。
友保 そんでスタッフが「お久しぶりです」って手ぇ出したら、ラモスさんが「うわーめっちゃ久しぶりやん」言うてパってハイタッチ。マジで文化ちゃうな、あれ。
—ラテンですね。なんの仕事で来てたんですかね。
小林 珍プレー好プレーです(笑)。
友保 林さんと小さい声で「ルイやな」って。
小林 上原(浩治)もいましたね。
—「プロ野球珍プレー・好プレー大賞」の生放送で、亡くなったみのもんたさんが最後のナレーションだったんですね。
友保 それで集まってはったんや。
小林 そういえばいつも対戦相手は真ん中の喫煙所挟んで反対側の楽屋なんですけど。たぶん珍プレー好プレーがあったから、全部一箇所に集められてたよな。
友保 ぎゅっとしてたよな。
—フジテレビは珍プレー好プレーファースト……。
友保 何言ってるんですか、それはそうでしょう(笑)。
ぼんち師匠の最大の敵は「夜の眠気」
—ザ・ぼんち師匠も勝ち上がりました。
小林 夜のぼんち師匠、あんま見れることないんで貴重ですね。夜働くイメージはない。
友保 寝ちゃうもん。朝4時半に起きてるから寝ちゃうよ。大丈夫なんかな。
—寝ちゃう…(笑)。
友保 たしか今日は日中にNGK(なんばグランド花月)で公演があって、それ終わってからきてるはず。貸切公演でぼんち師匠指名やったらしいわ。
小林 すごい、若手の動きしてる。
友保 NGKで貸し切りで昼やって、それやってから東京きてはる。寝ちゃうんじゃないかな。
小林 寝ちゃうな。
友保 まさと師匠はピリっとスカしてくるやろ。スカすからな~。
—ぼんち師匠の対戦相手はモグライダーさん。
友保 モグさん強いっすね。長い方が強い。M-1ツアーでも大体時間オーバーしてましたよ。ウケるもんやから。いやでもぼんちさん不利っすね。やっぱ夜やから眠たなってはるもんな。
小林 おさむ師匠めっちゃ朝早いから(笑)。
友保 まさと師匠は勝った時のビールが1番うまいって言ってた。めっちゃ眠たいこと言うやん(笑)。
—ぼんち師匠も金属バットも揃ってグランドファイナルに上がってくれたらうれしいですね。
友保 いやぁね、わしら単価もあげてえし、あと子供に夢も与えんとあかんし。忙しいですわ。
小林 決勝行ったら、ぼんち師匠(の単価)も上がるんかな……。
友保 そりゃ上がるだろ。1000円上がるよ。
小林 そうか。
友保 200万1000円なるよ。なりますね。
小林 しかし0時前ぐらいまで放送あるんか、大丈夫なんかな……。
—昭和の時代に『オレたちひょうきん族』でフジテレビはめちゃめちゃ来てらっしゃいましたし、慣れたものなのでは……。
友保 いや、あの頃はフジテレビ海沿いじゃなかったから。
小林 河田町時代。そもそも当時はまだ若かったでしょ(笑)。
グランドファイナル進出に立ちはだかるリニアの不敵な笑み
—次の対戦相手はリニアさんですね。
友保 ねえ、リニアさん、ちょっと舞台裏で会うて。「先攻いってください」って言うたんです。男を見せてくれって。そしたら「絶対に後攻!」って言ってましたよ(笑)。
小林 (笑)。
友保 で、あの顔の感じ、いいネタまだ残してる顔してましたよ。なんかまだ持ってる顔してましたね。
—リニアさん、去年も面白かったですし。
友保 いや、なんかありそうですわ。なんか顔がホクホクしとったから。
小林 勝ったからじゃない(笑)?
友保 いやいや、「これで勝てた」の顔してましたね。
—なるほど、まだ勝負ネタは温存していると。
友保 事務所どこでしたっけ。人力舎ですか。なんとか毒盛れないですかね。一服飲まされへんかな。でも、まあとりあえずね、よかった。3週間生き延びました。
—お二人はリニアさんとどう戦うんですか。
友保 最終的には殴ってやろうと思ってます。
小林 勝てる気せんけどな……。
友保 おまえはデカいほう行けよ。キャラ被ってるほう。俺、ちっちゃくて毛あるから。
小林 殴られたことにも気づかなそう。
友保 もうあれや、おまえダイナマイト巻いて抱きつけ。
小林 俺、出られへんやん、勝ったとて。
友保 俺は次の試合生き残ったほうと出るから。生き残ったデカいハゲ。なんなら俺がリニアで出る場合もあるよ。
小林 てか、東京でダイナマイト巻けって、もう「東京ダイナマイト」として出よか!
取材・文/西澤千央 写真/石垣星児