「真実でも報じていいとは限らない?」“マスコミの闇”を描いた報道ドラマがなぜブームに?『恋は闇』『キャスター』『御上先生』共通する“真実”のとらえ方
「真実でも報じていいとは限らない?」“マスコミの闇”を描いた報道ドラマがなぜブームに?『恋は闇』『キャスター』『御上先生』共通する“真実”のとらえ方

今期のドラマでメディアの在り方を問いかける社会派ドラマが注目を集めている。4月16日にスタートした日本テレビ系の新ドラマ『恋は闇』もその一つだ。

情報番組のディレクターと週刊誌記者のラブサスペンス

『恋は闇』の物語の舞台は、連続殺人事件の渦中にある東京。情報番組のディレクター・筒井万琴(岸井ゆきの)は、事件の取材現場で週刊誌のフリーライター・設楽浩暉(志尊淳)と出会う。彼は事件を【ホルスの目殺人事件】と名付けた名物記者で、事件を追う姿勢は万琴とは正反対。

立場も価値観も違う2人が、取材を通して惹かれ合い、やがて疑惑と葛藤の“闇”に飲み込まれていく——。

「第1話で万琴と浩暉は、事件被害者の報道の仕方でが大きく対立します。20代女性会社員の他殺体が発見され、事件を追っていく中で、その女性が学生時代にキャバクラで働いていたことが判明しました。

これに対して、万琴は『彼女のこれまでの人生が世間に間違って伝わる可能性がある』『事件に関係のない被害者の過去はさらすべきでない』として、キャバクラで働いていたことは報道すべきではないと主張。

一方で浩暉はその主張を“傲慢”だとして切り捨て、警察でも裁判所でもないメディアの使命は、大衆を煽って盛り上げ、事件を世間が忘れないようにすることだと論じていました」(テレビ局関係者、以下同)

『恋は闇』ではこの他にも、被害者の関係者に執拗にコメントを求める報道陣や、「事件ネタもエンタメだ」と発言するテレビ局の上司など、マスコミの“闇”ともいえる部分を赤裸々に描写。一方で、情報が集まることで事件解決の可能性につながるという、報道の意義にも焦点を当てている。

初回放送を観た視聴者からは、そうしたマスコミの姿勢についての感想が多く上がっている。

〈最近のドラマでマスコミとは何ぞやという問題提起が凄い気がする〉

〈サスペンスの体裁だけど、予想以上に犯罪被害者と報道の問題に踏み込んでるドラマだった〉

〈恋は闇、報道被害についてかなり踏み込んで描写してて感心する〉

〈報道ドラマバトルなの? 日曜劇場TBSと日テレ 規模感とお金のかけ方、 ストーリー性は全然違うけど〉

同じく報道姿勢をテーマにしたドラマには、今クール放送中のTBS系日曜劇場『キャスター』(主演:阿部寛)や、前クール放送の日曜劇場『御上先生』(主演:松坂桃李)などがある。

視聴率は苦戦気味のスタートだが…

『御上先生』では報道された側がその後どのような人生をたどってしまうのかなどが丁寧に描かれ、『キャスター』では阿部演じるキャスター・進藤壮一が「我々報道は真実の奴隷じゃない。真実を追求し、自らの頭で何を伝えるべきかを判断し、そしてその手、その口で責任をもって伝える」と語る場面が印象的だった。

「3作品に共通して描かれているのは、『たとえそれが真実であっても、それを報道すべきかどうか』という問いにあります。現代は誰もが情報発信者となれるSNS時代。これらの作品は、視聴者一人ひとりの情報リテラシーを問いかけています。

視聴者が『これって自分たちの現実にも通じているよね』と、“フィクションを通じてリアルを感じられる”ことで、令和を生きる今の人に刺さることを目指しているのでしょう」

現代は技術の発達によって、巧妙なフェイクニュースが簡単に生成され、デマと憶測、陰謀論が広く飛び交っている。「真実とは何か」をドラマ内で問いかけることによって、視聴者のメディアリテラシーが向上する可能性もあるだろう。

また『恋は闇』では、最近のトレンドである「考察系ドラマ」の要素も盛り込まれている。公式サイトには「万琴の取材メモ」という特設ページがあり、これまでの事件の概要や伏線がまとめられているのも注目ポイントだ。

初回の平均視聴率は4.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と厳しい滑り出しだが、こうした考察要素がうまく話題になれば、展開次第では視聴率の巻き返しも十分可能と見られている。

「ドラマの製作スタッフは『あなたの番です』『真犯人フラグ』と同じ。どちらも初回放送から序盤の視聴率的はそれほど高くなく、終盤にいくにつれて一気に伸びてきました。

特に『恋は闇』は、日テレ系水曜ドラマ枠1年ぶりの復活作で、ドラマの視聴習慣が一度離れていたところに再度アプローチしています。さらにこの枠では、裏のフジテレビでもドラマを放送している激戦区でもあるので、このくらいの苦戦はある程度織り込み済みでしょう。

ここからの“爆発”に期待が高まっています」

事件の裏にある人の想い、報道される側の痛み、そして報道する側の葛藤、『恋は闇』をはじめとする“報道ドラマ”はエンタメを超えて、現代社会そのものを映し出しているのかもしれない。

取材・文/集英社オンライン編集部

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