
「24時間戦えますか」がまかりとおったかつてのバブル期の企業戦士時代には、健康で体力があるかどうかもビジネスパーソンの明暗を分ける大きなポイントだった。では、今の富裕層はどのように体をメンテナンスしているのか? 整体やサ活といった令和のトレンドを解説する。
新刊『億までの人 億からの人 ゴールドマン・サックス勤続17年の投資家が明かす「兆人」のマインド』より一部抜粋、再編集してお届けする。〈全3回のうち3回目〉
富裕層が絶対に怠らない3つのこと
富裕層たちが日常生活を送るなかで、「これだけは絶対に怠らない」と決めている3つのことがあります。
それは、「人脈に関する情報を仕入れること」「創作意欲を満たす情報を仕入れること」「体をメンテナンスすること」です。
2つ目の「創作意欲を満たす情報を仕入れること」とは、たとえばアートや音楽といったクリエイティブな領域に対し、鑑賞、ときに参加、さらには支援するような富裕層も多いです。
人生を豊かに彩る目的だけでなく、投資対象にもなり得るので、新鮮な情報を見聞きすることを大切にしています。
「Hip Hop界のレジェンドNotorious B.I.G のNFTコレクション」という、アートと最新テクノロジーの融合商品に投資している人にも出会いました。
もうひとつは、「体をメンテナンスすること」について。健康で体力があるかどうかは、戦国時代なら文字どおり死活問題、バブル期の「24時間戦えますか」という企業戦士時代ではライバルに差をつける大きな要素でした。
現代では一見緊急性が低いため、つい後回しにしてしまいがちですが、健康な体でいることは最大のリソース、重要度が高いカテゴリーのものです。有限の原資だからこそ大切に扱うべきでしょう。
僕も、2週間に1度のペースで整体に通っています。以前は、調子が悪くなったときだけ行っていました。ところが、何も不調を感じることがなくても定期的なメンテナンスとして通うようになってから、怪我もなくなり、仕事のパフォーマンスもいい状態でキープできるようになりました。
そこで、今はメンテナンスの優先順位を高くして、予定表には整体を優先的に入れるようにしています。
体のことを優先的に考えてメンテナンスを習慣化するのに、早すぎる年齢はありません。「困ってからの絆創膏」ではなく、平時の定期メンテナンス、予防は治療にまさります。
富裕層は「カネ→カラダ→ココロ」の 順番で整える
「ストレスフルな毎日、メンタルを安定させたい」「将来への漠然とした不安を払拭したい」――「心」の問題が生じたときに、いきなり薬やカウンセリング、といった直接的な対処に取り掛かるのではなく、まずは「体」を先に整えてみる。これは、多くの富裕層も実践している方法です。
ゴールドマン・サックス時代、入社してから何度もいわれた言葉は「プライオリティ(優先順位)をつける」「期待値コントロールをする」の2つでした。
達成したい目標がある場合、「まず何をどうするか。次に何をどうするか」という優先順位を的確につけていくことが、有限な時間の使い方として大切です。
心の問題を引き起こす本質的な原因は、すぐに解決できないものも多いので、いきなり心の問題に取り組む前に、まずは体の健康を整えて万全な状態になってから心の問題に取り組むことで解決できる場合もあると考えています。「体の健康は心の健康」ということです。
メンタルヘルスの3本柱は、「睡眠」「運動」「食生活」といわれています。ここでは「運動」についてお伝えします。
会社員時代、ストレスや激務により心身ともにボロボロになった時期がありました。
「疲れて何もしたくない」というなかで、さらに疲れることをするのか、と思いますが「運動する」→「血流が促進される」→「細胞が活性化される」→「体も健やかになる」→「さらに自律神経も整う」という、一時的な肉体疲労を凌駕するメリットがあります。
運動を習慣化したことでもたらされた副産物もありました。僕は最初、ひとりでランニングをはじめたのですが、しばらくして会社のアスリートコミュニティに参加することにしました。そこでは仕事の話は一切せず、大会の話やトレーニングの話、ギアの情報交換しかしません。
利害関係のない世界で仲間ができたことは、心身を回復させることに大いに役立ったと思っています。
ビジネスシーンにおけるサウナの有効性とは
「サ活」は一般名称化するほど定着していますが、富裕層や経営者の多くも、サウナに入ることを習慣化しているケースも少なくありません。
サウナを単なるリラクゼーションだけでなく、健康やビジネスにおいて高いパフォーマンスを維持するための重要なツールとして活用しています。
たとえば、サウナには疲労回復や血行促進、代謝アップや自律神経の調整などの健康効果が期待できます。血流が改善し、体温や心拍数が上昇することで、脳内にアドレナリンやエンドルフィンが分泌され、集中力や決断力の向上の一助になるともいわれています。
いわゆる「幸せホルモン」と呼ばれるものには、ドーパミン、セロトニン、オキシトシン、β‐エンドルフィンの4種類があり、それらをバランスよく分泌させ、相互作用を働かせるのがよいという研究があるようです。
運動全般によってドーパミン、リズム運動であるウォーキングやランニングでセロトニン、コミュニティに属し心理的安定を得てオキシトシン、サウナに入ってβ‐エンドルフィンを分泌させる、というのはバランスにも優れ理にかなった、体の整え方であるのかもしれません。
ここまでは「体→心」の順番についての話でしたが、そもそも「モノや時間」といったリソースが不足している状態では、余裕がなくなり、体の健康も心の健康も損ないやすく、妬みや嫉みといった人間のもっとも恐ろしい感情が湧き起こってしまいます。
本記事でお伝えしているような方法で、時間をコントロールする習慣を身につけ、お金にお金を稼がせて、物質的な欲から解放される。それが体を整え、心を整えるための土台になるのではないかと思います。
文/田中渓 写真/Shutterstock
『億までの人 億からの人 ゴールドマン・サックス勤続17年の投資家が明かす「兆人」のマインド』
田中渓
金融業界はもちろん、世界中の名だたる企業も軒並み大きな経済的な打撃を与えた金融危機の影響で、53回もの面接をくぐり抜けてやっとの思いで入社した僕自身も「毎日いつ自分も解雇されるのか?」という不安を抱える日々が続きました。
幸いにしてクビは免れたものの、その後ボーナスはゼロ、大幅な減給に加え、在籍部署の9割の人員が削減されるという壮絶な展開が待っていたのです。
ところが、そんなどん底時代を経験するも、その後17年続いた会社員生活では最終的に投資部門のトップである日本共同統括を務めることになります。
在籍17年間では、20ヵ国以上の社内外300人を超える「億円」資産家、「兆円」資産家、産油国の王族など超富豪などと協業、交流をはたしてきました。
この本は、そんな僕が会社員時代に学んだ富裕層の哲学や思考、習慣など、彼らの生態系について学んだことを、あますところなくお伝えする一冊です。具体的な投資方法や特定の銘柄を推薦するような、いわゆる「投資術の本」ではありません。「富裕層マインドを学ぶ本」という位置づけです。
なぜ、富裕層マインドを学ぶことが大事なことなのか。それは、今どのような環境に置かれている人であっても、富裕層マインドにシフトすることで「億を超える人」になれる可能性があるからです。
人は想像ができないことはできません。想像ができない人にもなれません。だから本書を通じて、富裕層について皆さんがイメージを持てるように、さまざまな角度から、その実態や生態系にお伝えしたいと思います。
(プロローグより)
Chapter1 年収1億円以上「富裕層の思考」
Chapter2 富裕層だけが知っている「お金の哲学」
Chapter3 お金がお金を生む「お金の使い方」
Chapter4 とんでもなく稼ぐ人の「時間の使い方」
Chapter5 普通の人でも実践できる「億稼ぐ人の生活習慣」
Chapter6 一生お金に困らない人の「人間関係の築き方」