
今夏に東京都議選と参議院選挙を控え、自民党が苦戦を強いられている。発足以降最低を更新した内閣支持率に追い打ちをかけるように、「コメを買ったことはない」発言で農水大臣が辞任。
危険水域の支持率、大臣辞任…都議選と参院選で苦戦必至の自民党
内閣支持率が危険水域に入りそうな石破内閣。毎日新聞では22%(17、18日)、読売新聞では31%(16~18日)と、各社の調査で発足以降最低を叩き出している。さらには「コメを買ったことはない」と発言した江藤農林水産大臣が21日に石破首相に辞表を提出し、政権への逆風が強まっている。
「今夏に控えている東京都議選と参議院選挙への影響は必至。その状況を示すように、候補者集めに苦戦をしているのです。参院選で東京選挙区(定数6、補選1)では通常、自民は2人候補者を立てるのですが、現職の武見敬三元厚労相しか決まっていない。
安倍政権に批判的な発言をしていたNPO法人代表の渡部カンコロンゴ清花氏の内定が報じられましたが、すぐさま保守層から批判を集め白紙になってしまいました」(自民党東京都連関係者)
東京都議選(6月13日告示、22日投開票)でも、勝敗を握る1人区で候補者がなかなか決まらない状況が続いた。
「特に苦戦したのは、ほかでもない井上信治都連会長のお膝元である青梅市の選挙区です。過去2回、都民ファーストに議席を譲り、ただでさえ苦しい選挙区。声をかけては断られ、候補者が発表されたのは、告示まで1ヶ月を切ってからでした」(同前)
都民ファーストに加え、今回は新たに国民民主党への追い風が脅威となる。厳しい戦況もあって、複数区でも候補者を1人に絞った選挙区もある。
定数3の墨田区では、これまで2人候補者を立てていたが、過去2回は1人しか当選できなかったこともあり、今回は候補者1人だけの安全策を選んだという。
自民都議選墨田区の候補に選ばれたのは地元でも有名な“サラブレッド”
その“落ちるはずのない候補”に選ばれたのは、墨田区議を務める藤崎剛暉氏(35)。2期目で経験は浅いが、墨田区では知られた政治家一家のサラブレッドだ。
父親は区議、母方の曽祖父と祖父は都議を務め、現在区長を務める山本亨氏は伯父にあたる。
剛暉氏も地元選挙区の松島みどり衆院議員の秘書を経て、19年に区議に初当選した。
「一家のなかでも特に有名なのが母親の忍氏です。39歳で夫が倒れたことから、一念発起し専業主婦から渋谷109のアパレルショップの店長に。その後、転職をしてハンバーガーチェーン・ドムドムハンバーガーの社長にまで上りつめました。
長らく経営が低迷していたドムドムをV字回復させ、『ガイアの夜明け』(テレビ東京)をはじめ複数のメディアで特集が組まれるカリスマ社長です。忍氏、剛暉氏とも、小学校から青山学院に通うセレブです」(自民党関係者)
低迷が続く自民党にとって、まさに期待のホープ――。
と思いきや、地元での評判は芳しくない。
「今年2月、区の福祉保健部の職員に対し、藤崎氏が高圧的な対応をしたとして、当該部局から区長や区議会議長宛てにパワハラ被害の申告がされているのです。しかもこれが初めてではなく、過去にも職員を厳しく詰めることがあり、報告するに至ったようです」(区議会関係者)
藤崎区議の「パワハラ疑惑」が浮上するもそのまま公認
編集部が関係者から入手した資料には、その詳細が書かれている。それによれば、藤崎氏の支援者が、親族に生活保護を受けさせたいと福祉保健部に相談した際の職員の対応について、藤崎氏が憤慨したという。
「俺がちゃんとやってくれと言ったのに、対応が悪かった」
「生活保護の件を頼んだのに生保を受けられないと言われて支援者から怒られた」
「(親族を)路上に出せば生活保護が受けられるのか」
などと強い口調で迫り、職員は〈終始、圧力をかけてくる態度であって非常に恐怖感を覚えた〉という。当該の部局では、〈パワハラやカスハラの事案に該当する可能性がある〉として、区長や議長に報告をした。
「藤崎氏は、区職員とのやりとりは認めつつも、不適切な言動はなかったと否定していました。全く悪びれていないようでした」(前出の区議会関係者)
しかし、4月25日には、区議会のホームページに〈議員の不適切な言動に関する議会の対応についてお知らせします〉と、一連の対応が掲載された。ハラスメント行為は認定されなかったが、〈議員として不適切な言動があった〉と認め、議長から口頭注意を受けることとなった。
前出の自民党都連関係者がこう嘆息する。
「もともと今回の候補者選定は、藤崎氏ありきでした。問題発覚後の2月末に開かれた支部の党大会でも、藤崎氏を都議選候補として紹介。この騒動で、党本部への公認申請が遅れましたが、候補を差し替えることなく公認がおりてしまった。今回の騒動で他の候補に差し替えすることも可能だったのですが、自民からすれば確実に取れると見込む選挙区だけに、結局そのまま公認してしまったのです」
母親の忍氏は過去のインタビュー(GOETHE)で、職場では「他者への尊重と思いやりのある言葉がけ」が大切だと語っている。誰よりもこの言葉を肝に銘ずるべきなのは、息子の藤崎氏なのかもしれない。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班