
参議院選挙は7月20日投開票され、定員6と補欠1の計7議席が争われた東京選挙区では参政党の新人候補・さや氏(43)が午後8時の投票終了と同時に当確が出る大勝を収めた。前夜のマイク納めで「私を日本のお母さんにしてください!」と絶叫したさや氏は徴兵制導入や核武装を肯定し「外国人が優遇されて日本人が貧しくなった」と唱えてきた人物。
「私を皆さんのお母さんにしてください!」
「32人が出馬した東京選挙区。序盤は『安泰なのは自民公認の鈴木大地氏だけ』といわれるほど混沌とし、さや氏は当落線上にひしめく一人にすぎませんでした。しかし選挙戦終盤には悠々当選圏に入りました」(社会部記者)
ジャズシンガーであり、また保守系ネット番組でキャスターを務めてきたさや氏は、かつて元航空幕僚長の田母神俊雄氏の政治活動を支援する“田母神ガールズ”として活動し、女性天皇・女系天皇反対の論陣を張ってきた人物だ。
過去にはYouTubeで「学校教育のなかでは教えられないことを兵役の中では教えることができる」と発言したり、選挙期間中には「北朝鮮ですらも核兵器を保有すると一応国際社会の中でトランプ大統領と話ができるくらいまではいくわけですよね。
交渉ができるという。そういう状況まで行くということを考えると核武装が最も安上がりであり、最も安全を強化する策の一つ」と発言したりしている。選挙では日本人ファーストと反緊縮財政を公約に訴えてきた。
選挙戦最終日の19日夜、東京・芝公園で神谷宗幣代表も加わって参政党が開いたマイク納めでの演説では「この東京中を(党のイメージカラーの)オレンジ色に染めたい、ダイダイ色に染めたい、その思いで駆け回って参りました。その願いが本当に叶っていたと思います」と当選を確信していることを隠さなかった。
そして感極まった後には「私を皆さんのお母さんにしてください! 日本人のために働くお母さんにしてください!」と絶叫したのだった。
「玉木氏の不倫報道を見て気持ちが変わりました」
芝公園に「2万人」が集まったと主張した神谷代表は次にマイクを持つと「みんながよってたかって参政党を叩くから心ある日本人がみんな参政党を応援してるんです」と話し、自身の発言や政策が人権をないがしろにした差別だと批判を受けたことが逆に勢力拡大を後押ししたと主張。
さらに「明日われわれ20議席取って単独で予算付きの法案を提案できるようにしたいわけですよね。
参政党が目指す政治の姿について、経済政策を担当するという比例代表候補の松田学氏は芝公園で米トランプ政権の方針と同じだと言った。
「トランプ大統領の話は参政党が結党以来ずっと言ってきたことではないでしょうか。われわれこそ世界の主流、世界の本流なんです。行き過ぎた脱炭素、行き過ぎた戦争利権、行き過ぎた感染症利権、そしてLGBT、行き過ぎた差別撤廃。これ全部、世界を壊してきた。
これに対して世界中が今、国民運動で盛り上がってるんですよ。日本でこれをやるのは参政党だけじゃないですか。だからわれわれは日本人ファーストと言ってるんです」(松田氏)
こうした政策を芝公園まで足を運んだ支持者はどうとらえたのか。
自民党から支持を変えたという40代男性、Aさんは「参政党を知って目が覚めましたよ」と力強く語った。
「正直最初は怪しいと思っていましたが、党首討論での神谷代表の話はどこよりも訴える力がありました。われわれ就職氷河期世代にとって社会保険料の減額と消費税撤廃はすごくありがたいですし、安い労働力として外国人がどんどん入ってくると困るんですよ」(Aさん)
国民民主党から流れた人もいる。
別の40代男性、Cさんは「コロナ禍を経て参政党員になりました」という。
「コロナの時に何が正しいのか、世界にも目を向けてSNSなどで調べて、テレビよりも正しいことを言ってると気づいたんです。厚生労働省は嘘を言っていたんです」(Cさん)
芝公園には「差別に投票しない」「ヘイト集団」などと参政党を非難するプラカードを持つ人も100人以上集まり、党支持者との野次の応酬で騒然とした。
「徴兵制や核武装を言い戦争を起こすのではと恐怖を感じます」
60代女性、Dさんは「同じ気持ちの人(支持者)がこれだけたくさんいることが誇らしいです。われわれは日本人ですから日本人ファーストで何が悪いんですか。アンチは何人(なにじん)なんでしょうね?」と反対派をこき下ろした。
マイク納めの集会が終わった後も双方の小競り合いが続いた。「差別をやめろ、差別をやめろ」と連呼する抗議者側に、党支持者が同じリズムで「キャベツを食べろ、キャベツを食べろ」とリフレインして揶揄するなど殺伐とした光景が続いた。
声は上げず抗議のプラカードを掲げていた50代の女性、Eさんは「私はこの参院選で初めて演説への抗議をし、きょうで3回目です。
だが党支持者と抗議する人の数の差は圧倒的だ。そのことにEさんは「これだけ多くの人が支持するのは、物価高で貧しくなったりしてストレスのはけ口を求めているのではないかと思います。こうした風潮は恐ろしいです」と答えた。
投票が終わった20日午後8時、NHKが当確を打ち、東京・四谷のさや氏の事務所には万歳の声が響いた。
直後のNHKのインタビューでさや氏は「日本人ファーストが大きく誤解を受けていた。日本人を大事にするというのはイコール外国人を大事にすることでもあると私はお訴えさせていただいてまして…」と核心の公約について弁明。だが選挙中にさや氏は「外国人が優遇されていく中で私たち日本人はどんどん貧しくなっていった」と発言している。
「その後の質疑でも、核保有や徴兵制に絡む発言について『党の方針を中心に政策として訴えていく。いわゆる過去の発言は政策ベースでお話しているわけではない』と弁解し、徴兵制にからむ発言も“切り取り”をされたと主張していました」(全国紙記者)
参政党が一大勢力に躍り出た日本の政治はどこへ向かうのか。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班