「仙台牛タン800円」の屋台で出されたのは“豚タン”だった… 店員に聞くと「豚です」と即答、SNSで大炎上した夏祭りの表示トラブル
「仙台牛タン800円」の屋台で出されたのは“豚タン”だった… 店員に聞くと「豚です」と即答、SNSで大炎上した夏祭りの表示トラブル

夏祭りで屋台をめぐるトラブルがSNSで話題となっている。「仙台牛タン」と掲げた屋台で提供されていたのは、なんと“豚タン”だったという。

「牛タン」と偽って「豚タン」を販売

問題となったのは、ある地方都市の夏祭りで営業していた「仙台牛タン800円」と書かれた屋台。

「地元の祭り来たら『仙台牛タン800円』。でも買ったら豚タンだった。良い商売してるね、客ナメてんな」

Xに投稿されたこの体験談と写真は瞬く間に拡散され、大きな反響を呼んだ。

「お祭り価格なのは承知の上で買ってるので、表記だけちゃんとして欲しいと思う」

「ここまでのは見たことないけど、普通に詐欺まがいの金額表示の仕方が横行してるから祭りが基本的に嫌い」

「これ、豚肉アレルギーの人が食べちゃったら大変なことになるよね。素材の偽装は絶対やっちゃいけないって」

また、同様の体験談として、「カニ串」屋台で提供されたのがカニカマだった、「広島風お好み焼き」を1000円で買ったらキャベツだけだった(肉すら入っていない)、じゃがバターの「バター」が実はマーガリンだった――といった報告も相次いでいる。

一方で、「屋台なんてそんなもんでしょ」といった、ある種の“あきらめ”のようなコメントも多数寄せられ、投稿は数千万インプレッションを記録した。

投稿者によると、屋台のスタッフに「美味しかったです。豚ですよね?」と尋ねると、半笑いで「豚です」と即答されたという。しかし、屋台のどこを見渡しても「豚」と記載された表示は一切なかったそうだ。

味自体は悪くなかったというが、地元で開かれた大規模な夏祭りで、県外からの来場者も多く訪れるイベントだっただけに、「遠くから来た人たちがガッカリしたんじゃないかと思うと、なんか悔しいです」と語る。

屋台には当初30~50人ほどが並び、その1時間後には70~80人近くにまで列が膨れ上がっていたという。狭い道に複数の屋台が出ていたため正確な人数はわからないが、周囲の屋台と比べても、圧倒的な行列だったそうだ。

その後、投稿者は屋台前に並ぶ来場者たちに向かって、何度か「ここは豚タンなので、牛タンが目当ての方はやめたほうがいい」と注意喚起を行なったという。

完全に違法でも摘発が難しい理由

「今は他の街に住んでいますが、もともと商工会関係の真面目に営業している方々や、屋台を家業にしている友人など、真剣にやってる人たちを知っているので……。一部の詐欺まがいの業者のせいで『屋台なんてそんなもん』と思われてしまうのは、本当に悔しかったですね」と投稿者は胸の内を語った。

では、実際に「仙台牛タン」と表記して豚タンを提供する行為は、法的にどう評価されるのか。

ゆら総合法律事務所の弁護士・阿部由羅氏に聞いた。

「実際には豚タンを販売しているのに『牛タン』と表記することは、商品の品質や内容について客の誤認を引き起こし得るものです。不正競争防止法違反に当たる可能性が高く、行為者は『5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金』に処されるおそれがあります」

阿部氏によれば、これは「優良誤認表示」と呼ばれ、景品表示法の観点からも問題がある可能性が高いという。消費者庁からの措置命令や課徴金、刑事罰の対象になることもある。

特に注目すべきは、「一般の客がどう受け取るか」が判断基準になるという点だ。中には「店名が『仙台牛タン』というだけで、その商品を売っているとは限らない」といった反論も見られたが、法的には通用しない可能性が高い。

「たとえば店名に『牛タン』と入っていて、売っている商品が一種類しかなければ、一般の客はそれを牛タンだと思うのが自然です。『牛タンは店名にすぎない』という言い分は、こうした判断基準からは通用しません」

とはいえ、こうした「臨時営業」の屋台に対して法的措置を取るのは、実際には非常に難しいのが現実だ。

「屋台営業の場合、運営者の素性が不明なケースや、不当表示をしていた証拠が十分に残らないケースが多くあります。仮に常設店舗で同様のことをすれば、すぐに摘発される可能性が高いでしょう。だからこそ、屋台という形態を利用し、摘発を逃れようとする意図があるのかもしれません」

真面目に営業している業者にとって、こうした“詐欺まがいの屋台”の存在は大きな迷惑だ。

一部の悪質な出店が、「屋台=信用できない」というイメージを広げてしまう。特に食品アレルギーは命にもかかわることなので、今後は、運営体制の見直しなど、主催者側の厳しい監視の目も必要になってくることだろう。

取材・文/集英社オンライン編集部

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