
異様なまでに散らかされた民泊の部屋が話題になっている。写真をよく見ると、散らばっているのは“ポケカ”ことポケモンカードの残骸だった。
入手困難なポケモンカードのポイ捨てに怒り
8月2日、都内で民泊を運営するオーナー・マコさんがXにこの写真を投稿すると、瞬く間に注目を集めた。宿泊客はどうやらポケモンカードを大量に箱買いしたようで、開封された箱やパックが積みあがるほどに部屋の中に捨てられている。
しかも驚くべきは、その中身までも取り残されていること。お目当てのカードだけを取り出して、いらないカードはゴミとして捨てたのだろうか。
無残に取り残されたカードたち。Xではあまりにも悲惨な光景に怒りの声が殺到した。
「転売屋がやってきて、戦利品を開封して金目のものだけ選りだして捨ててった感じ?」
「うちの子が欲しがって買えなかった、カードまで捨ててある…。ポケカプレイヤーからしたらノーマルカードだって大切なのに悲しくなる」
「ノーマルカードをゴミとかハズレとか…大切にできない人は買わないでほしい」
「クソ転売ヤーがこんな事するから子どもたちがポケカ普通に買えなくて遊べなくなってるんじゃないか。関係ない宿泊施設にも大迷惑かけてるし」
いったい、この部屋で何があったのだろうか。マコさんに当時の状況を聞いた。
「ゲストがチェックアウトした朝10時、清掃会社さんからの報告で写真と動画が送られてきて、今回のことが発覚しました」
マコさんはすぐに現場へ向かった。当日に別のゲストのチェックインがある日だったため、「とにかく早くきれいにしなきゃ!」という一心だったという。清掃会社にも無理を言ってスタッフの増員をお願いし、緊急事態ということで、マコさんも家族の予定をキャンセルして現地で清掃にあたった。
その日チェックアウトしたのは、大人6名で5泊していたゲストグループ。国籍や年齢はプライバシーに配慮して伏せるが、現場は、言葉を失うような状態だった。
ポケモンカードとともに捨てられていたひど過ぎるゴミ
「とんでもない量で部屋中にゴミと共に散乱していました。おそらく数万枚はあると思います」
部屋の床一面に広がっていたのは、ポケモンカードだけではない。食品ゴミやペットボトルも混ざっており、中にはタバコの吸い殻も。禁煙室のうえ、一歩間違えれば大惨事にもつながりかねないゴミに、「怒りと恐怖を覚えましたね」とマコさんは話す。
ただ意外なことに、現時点で宿泊者に連絡・対応などはしていないという。これには、民泊の経営者が抱える悩みがある。
「報復レビューといって、レビューを悪く書かれてしまうと困るので慎重になっています」
民泊プラットフォームでは、ホスト・ゲスト双方がレビューを付け合うシステムが一般的だが、「理不尽な内容でも、悪い評価をつけ返される」という事態が珍しくない。
レビューを低くされると今後の予約の悪さに直結し、ひどい場合にはプラットフォーム側に物件の掲載を停止されたりもするという。
一応、マコさんはこういった悪質な客への事前の対策として、物件の掲載ページに『通常より汚された場合は追加請求いただきます』と記載しているが、請求しても払ってもらえるかは分からないうえ、「今回は逃げられるんじゃないかな」と肩を落とす。
さらに民泊の経営者には別の問題も抱えている。“返金詐欺”だ。
「例えば1ヶ月の予約のゲストが旅行終盤になって『騒音が気になる』『匂いが気になる』などといい、プラットフォームのサポートにクレームを入れたりします。その場合プラットフォームが公平な手続きを取らずにゲストに返金したりしてしまうのです。
そしてその費用負担は我々ホスト(オーナー側)になります。ひどい場合には、そういったクレームを付けてきたゲストが、延泊申請してさらに長く泊まり、さらに返金要請したりするケースも聞いたことがあります」
捨てられたポケモンカードの行く先は…
ただ、マコさんはこうしたケースはほんの一部に過ぎないと強調する。
「誤解してほしくないのは、民泊を利用いただくゲスト様の99%はきれいに使ってくださる素晴らしいゲスト様です。私もコロナ禍中から5年以上民泊ビジネスをしていますが、ここまで荒らされたのは初めてですし、過去荒らされた経験は5年間で数回しかありません」
幸い、散乱していたカードはまだ使える状態だった。そこでマコさんは、周囲の子どもたちに配ることを選んだ。
「昨日は民泊仲間のお子さんとかに余ったカードをあげたりして、子どもはめっちゃ喜んでくれました!」
今回の件は、民泊が抱える問題を浮き彫りにしただけでなく、モノに対する価値観の差もあらわにした。数万枚のポケモンカードを開封し、そのままゴミのように捨てていった宿泊者たち。そして、それを手にして楽しく遊ぶ子どもたち。子どもたちによって、捨てられたカードたちも救われたかもしれない。
取材・文/集英社オンライン編集部