記事が読まれるかどうかは見出しで決まるって本当?「47NEWS」の部長が教える「読まれる見出し」4原則
記事が読まれるかどうかは見出しで決まるって本当?「47NEWS」の部長が教える「読まれる見出し」4原則

新聞社や出版社に勤める人だけでなく、広報やリリース、資料作成など、あらゆる活字を扱う場面で多くの人が悩むこと。それは見出しだ。

本記事では共同通信社のWEB媒体「47NEWS」の部長を務める斉藤友彦氏が見つけた、読まれる見出しの4原則を惜しげもなくすべて公開する。

書籍『新聞記者がネット記事をバズらせるために考えたこと』より一部を抜粋・再構成し、読まれる見出しの秘密に迫る。

最後の課題「見出し」

新聞とデジタル記事とでは、見出しの付け方は明確に異なる。

新聞は、すでに新聞を手に取っている読者に向けて、記事のエッセンスであるリードの、さらにエッセンスを見出しにする。一方で、デジタル向けではプラットフォームに並ぶ無数の記事の中から、自分が書いた記事を何とか選んでもらえるような見出しの付け方をしている。簡単に言えば、競争があるかないかの違いとも言える。

ただ、選んでもらえるなら何でもいいわけではなく、いわゆる「釣り見出し」にならないよう注意する必要がある。

読者の目を引くことを第一目的にすると、どうしても大げさな表現を使いたくなる。その結果として、記事に書いていない内容を見出しに取りがちになる。結果的にその記事単体では多く読まれたとしても、次第に読者が引っかからなくなる。

たとえば、それが47リポーターズであれば、その配信元である「47NEWS」の題字を見た瞬間に読者は「またか」「この媒体は釣り見出しが多かった」と思い出し、選ばれなくなる。

「釣り」にならずに、しかも読まれる見出しを付けるにはどうすればいいか。結論から先に言えば、いまだに100%の正解は分からない。

だが、試行錯誤の末、見出しを付ける際の考え方として次の4点は押さえておくようになった。

①文字数は長くていい。50字、60字超でも問題ない

②記者ファーストでなく、読者ファーストで考える

③何についての記事かが分かるワードを、できれば前のほうに置く

④読者の感情を動かせる表現を記事本文から探す

説明していくと、まず①の文字数だが、各プラットフォームが推奨するのは40字を少し超える程度までであることが多い。ただ、これまでにバズった各メディアの記事の見出しを見ていると、50字超が意外と多いと感じた。

それなのに、プラットフォームが長い見出しを推奨しないのは、スマホ画面の見出しの欄に収まるようにしたいからではないかと邪推したくなる。スマホ上では、長すぎる見出しは途中で切られ、以降は「…」と省略されがちだ。でも、そうなっても問題ないと私は考えている。実際に47リポーターズでバズった記事の見出しの多くも、50字を超えていた。

見出しの文字数を抑えることによる弊害もあると思う。文字数を抑えようとすると、どうしても新聞的になる。前述のような省略形を使いがちになり、動詞を書かず、助詞だけ付けて終わらせたくなる。

助詞だけで終わらせるとは、たとえばこんな書き方だ。

【例】 「信頼回復が重要」と岸田首相

この見出しを見てすぐに、岸田首相が何かについて「信頼回復が重要」と述べた、と正確に読み取った読者がどれぐらいいるだろうか。中には、助詞の「と」をandの意味だと思った人もいるのではないだろうか。

紛らわしい表現だと思うが、こうした見出しは新聞では日常的だ。理由はやはり、文字数が制限されているからだ。

一方で、デジタル記事でこうした見出しの付け方をすると、致命的になる。意味を誤読した読者は、困惑した瞬間に本文を開く気が失せる。ネットでは見出しの文字数が長くなってもいいと考える理由は、ここにある。

「これはあなたが共感できる記事です」

②の読者ファーストについては、私も経験があるが、記者に限らず、何らかの文章の執筆者は、自分が最も伝えたいこと、強調したいことを見出しに取りがちだ。気持ちはよく分かるが、それは読者から見ると、どうでもいい。数多く並ぶ記事から一つを選んでもらうためには、選ぶ読者側の視点に立って見出しを考えてほしい。どんな見出しであれば自分が読んでみたくなるか、突き詰めて考えることが必要になる。

③は、見出しの長さと関係している。60字を超える見出しは、見出しというよりもはや文章だとも言える。

そのため、読者は見出しすら最後まで読んでくれないかもしれない。

「何についての記事か」が早めに明示されないと、何のことか分からずに見出しを読まされることになり、ストレスを感じて途中で離脱する恐れがある。

一方で、「前のほうに置く」に「できれば」と注文を付けたのは、見出しには何についての記事かを明示するより、考えるべき重要な観点があるためだ。それが④の「読者の感情を動かせる表現」。この点を優先すると、「何についての記事か」は必然的にその後ろに回ることになる。

この④のポイントがなぜそれほど重要なのか。それはデジタル記事の特性を考えれば分かる。ネットで読まれるには「共感」が大切。ストーリー形式にするのも、読者が共感しやすくするためだった。

見出しを考える上でも同じで、共感を求めている読者に対し、「これはあなたが共感できる記事です」と伝えることが重要になってくる。見出しを見た段階で読者の感情が動けば、記事を読んでもらいやすくなる。

では、どういうワードであれば、読者の感情が動くのか。

言語化するのは難しいが、これまでに多く読まれた記事の見出しを見ていくと、いくつかのパターンらしきものがある。ここでその一部を紹介したい。

①カギカッコ付きのパワーワード

●「何かもう疲れてしまった。だめなお母さんでごめんなさい」障害がある17歳の息子を絞殺した母の絶望

●「犯人は10人未満のうちの誰かだ」重度障害の娘への性加害…でも警察は被害届を一時受理せず

●「ばばも死ぬから、死んで」78歳の女性は苦悩の末、孫の首に手を掛けた

●「ひとり残されるぐらいなら、自分も船に乗っていれば良かった」知床観光船沈没、元妻と息子はいまだに行方不明

●「まるでキャバクラ」国際ミスコン予選でまさか出場女性を審査員の隣にはべらせ…国連は「勝手にロゴ使用」と激怒

●「一緒になれないなら死ぬ」知的障害の2人は、反対を乗り越え62歳で結婚した

●「愛の中で逝かせて」21歳の娘は安楽死を選んだ 受け入れた母の思い

●「あまりに無謀で、迷惑」富士山にピクニック並の軽装で弾丸登山、寒さしのぎに山荘へ無断侵入、大量のゴミ…大混雑で世界遺産〝取り消し〞懸念の声も

●「中高年の転職の厳しさを知ってほしい」憧れの職業パイロットから、アルバイト掛け持ち生活に転落

これらは、記事本文の中から人を引きつける発言を抜き出し、それを見出しの最初に持ってきている。狙いはもちろん、読者の感情を動かすためだ。よく読まれた記事の見出しは、47リポーターズではこの形が一番多い。

②問いかけ

●通知表をやめた公立小学校、2年後どうなった? 子ども同士を「比べない」と決めた教員たちの挑戦

●女性の「生理」を男子校で教えたらどうなった? 「放課中に急いで交換」「蒸れやすく不快」

●「命だけは助かった」でも…残された荷物はどうなった? 羽田の航空機炎上事故、避難した乗客が語る「その後」

読者に質問を投げかける形。なぜこの形が読まれるのかはっきりとは理由を答えられないが、推測するに、人間は一定程度興味を持つ内容について誰かから質問されると、思わず答えを考えてしまう性質があるのかもしれない。

③他人の感情

●裁判長も同情、妊娠したベトナム人技能実習生に冷たかった日本 借金抱え、受診も断られ、企業と監理団体は「気付かなかった」

●捜査員が激怒「これが危険運転でなければ、何が危険運転に当たるんだ」

●JR東日本が言葉を濁す「れんが建築物」の正体 実は皇室専用車両の保管庫だった

●寺の住職がびっくりした「数百年後の恩返し」床が抜けそうな貧乏寺の改築費用を寄付したのは、まさかの「潜伏キリシタン」の子孫だった

●後藤田知事も激怒、高校生に配備のタブレット「3年もたず半数超が故障」の異常

誰かの感情が激しく動いているのも、人は気になるらしい。特に、目上の存在や、ある程度尊敬される立場の人の感情は注目されがち。

たとえば野球が好きな人なら、「大谷も感動…」といった見出しがあれば、気になって本文が読みたくなるのではないだろうか。

また、この形は、映画のコピーにも共通しているように思う。「全米が泣いた」といった映画の宣伝文句も同じ趣旨ではないかと思う。

最初にこのコピーに触れた時は、「アメリカ中でそんなに感動された映画ってどんなにすごいんだろう、見てみたい」と思ったことを覚えている。

④ストーリーの予告

●夜の路上で、いきなり頭から南京袋をかぶせられた 北朝鮮に連れ去られた曽我ひとみさん、帰国までの24年

●海底の坑道には、今も183人の遺体が閉じ込められている…82年たっても政府が調査に後ろ向きな理由

●「感染者が立ち寄った店」知事のひと言で客は消えた…老舗ラーメン店主の絶望行政のコロナ対応は本当に妥当だった?

●成績トップだった中国人留学生は、母国の〝依頼〞を断れずスパイ活動の「末端」に転落した 夢を持つ若者を引き込む中国軍の情報活動日本へのサイバー攻撃関与の疑いで国際手配へ

●政界を揺るがした捜査のきっかけは、1人の「教授」の執念だった自民党の派閥裏金事件

これらは、これからストーリーが始まることを予告するような書き方。読まれる記事の分析で、読者は「共感を求めている」とあったように、記事本文がいわゆる「エモい」話になっていることが見出しを見た段階で分かれば、本文に流入する人は多くなる。

危険な見出し

多く読まれた記事の見出しについてここまで四つのパターンを挙げたが、これに倣ったからといって必ずしもうまくいくわけではない。実は、これらのパターンに当てはめたのに、あまり読まれなかったという記事のほうが圧倒的に多い。

うまくバズらせられない状況が長く続くと、デジタル記事を担当する責任者として、懸命に取材して執筆してくれた記者たちに顔向けできない気持ちにもなる。

だからといって読者の感情を動かそうとして見出しにあまりに凝りすぎると、失敗しがちだ。次に挙げる2本の見出しは、私が実際に失敗した例として、恥ずかしながら紹介する。

●「まるでキャバ嬢扱い」国際ミスコン予選でまさか出場女性を審査員の隣にはべらせ…国連は「勝手にロゴ使用」と激怒

●東日本大震災の多すぎる遺体、大きく貢献したソフトを作ったのは、遺体安置所にいた1人の歯科医だった

一つ目は「キャバ嬢扱い」という表現が不適切だと社内から指摘された。人の職業を貶めるような表現で、言われてみれば確かにその通りだが、PVを上げることに夢中になりすぎていた私は気付いていなかった。

その後、「まるでキャバクラ」と変更して配信したところ、結果多くの人に読んでもらえた。見出しどうこうというより、もともとの記事本文に読者を引きつけるパワーがあったからだ。小手先で何とかしようと思っていた自分が恥ずかしかった。

二つ目は誰が見ても分かるだろうが、「多すぎる遺体」という表現の不適切さ。これも紹介していて恥ずかしくなるが、あまりに配慮を欠いた表現だ。この見出しも社内で指摘を受けた。

言われて、こんな基本的なことに気付かなくなっていた自分が少し怖くなった。その後「東日本大震災の身元確認」と穏当な表現にして配信。こちらも多く読まれた。

この二つの失敗例は、見出しに凝りすぎるのはかえって良くない、という私自身への戒めになっている。デジタル記事を担当する社外の人と話していると、「PVは見出し次第」と言い切る人が一定数いるが、個人的には必ずしもそうだとは思わない。

大切なのはやはり記事本文の質であり、この配信元の記事は読みやすい、と思ってもらえるように、ブランド力を長期的に育てることこそ優先すべきだと思う。見出しは、せっかくの取材成果を多くの人の目に触れさせるよう工夫をすべき箇所だが、一方で、その危うさを認識する必要があるとも考えている。

写真/shutterstock

新聞記者がネット記事をバズらせるために考えたこと

斉藤 友彦
記事が読まれるかどうかは見出しで決まるって本当?「47NEWS」の部長が教える「読まれる見出し」4原則
新聞記者がネット記事をバズらせるために考えたこと
2025年2月17日発売990円(税込)新書判/240ページISBN: 978-4-08-721350-8

共同通信社が配信するウェブ「47NEWS」でオンライン記事を作成し、これまで300万以上のPVを数々叩き出してきた著者が、アナログの紙面とはまったく異なるデジタル時代の文章術を指南する。
これは報道記者だけではなく、オンラインで文章を発表するあらゆる書き手にとって有用なノウハウであり、記事事例をふんだんに使って解説する。
また、これまでの試行錯誤と結果を出していくプロセスを伝えながら、ネット時代における新聞をはじめとしたジャーナリズムの生き残り方までを考察していく一冊。

◆目次◆
第1章 新聞が「最も優れた書き方」と信じていた記者時代
第2章 新聞スタイルの限界
第3章 デジタル記事の書き方
第4章 説明文からストーリーへ――読者が変われば伝え方も変わる
第5章 メディア離れが進むと社会はどうなる?

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