
新宿のホテルで外国人男性の財布から現金を盗んだとして、窃盗の容疑で9月18日までに逮捕されたA子(21)。A子は今年7月、歌舞伎町・大久保公園周辺で“立ちんぼ”をし売春防止条例で逮捕され(本人は後に不起訴になったと主張)、「立ちんぼ四天王」と呼ばれた女性の1人で、これまでも同様の逮捕歴があるという。
「本当は大学に行きたかったけど親が…」
「四天王」と呼ばれていたA子は売春をしていたことは認めたが、売春相手への詐欺行為や窃盗については否定していた。取材にも淡々と応じた彼女は、そもそもなぜ売春を始めたのだろうか。
「いわゆる毒親育ちで、幼少期から中学までは親から暴力に加え、風呂場の脱衣所に何時間も閉じ込められたり、犬のリードで繋がれたりしていました。
けど、親はある学校法人の代表で、教育熱だけはあって塾にも行かせてくれてたし、私も勉強が嫌いじゃなかったから、中学の全国模試では全国13位になったこともあるんですよ。
一方で、全員父親が違う3兄妹の真ん中の私だけ、『義務教育が終わるから中学を出たら働け』って言われてましたね。たぶん、私の父親が一番ロクデナシだったから。
結局、高校まではなんとか行かせてもらえたけど、修学旅行とかのイベントごとにはお金を払ってくれない、いわゆる金銭的DVが始まった。それで、高校時代からバイト漬けで、タイミーで朝までバイトしたり、“大人アリ”(セックスあり)のパパ活も始めていました」
高校卒業後は、親が代表を務める学校法人の関係先に半ば強引に就職、学童施設で3カ月ほど働いていたという。
「本当は大学に行きたかったけど、親が看護科か教育学部しか許してくれなかったし、世帯年収が高くて奨学金がもらえなかったから、『もういっか』ってあきらめました。
とにかく親の監視下から離れたいと思って、こっそりピンサロやデリヘルでアルバイトを始め、ある程度のお金が貯まったら学童の仕事は飛んだ(連絡せず辞めた)。その後はコンカフェやデリヘルの仕事を転々としつつ、メンコン(メンズコンセプトカフェ)やホストに通い始めて好きな担当も見つけて貢ぐようになりました」
「自身は才女だけど家庭環境が悪かった」と主張するA子が、新宿で“立ちんぼ”になったのはこうした生活を始めて半年ほど過ぎた頃だった。
「デリヘルのスタッフが、『待機の間、立ちんぼすればもっと効率的に稼げるんじゃない?』って。
「今後はちょっと普通の恋愛をしてみたい」
実は、A子は立ちんぼ生活1年目のときにも、売春防止法違反で逮捕されている。だが、当時はやめる必要性を感じず、再び立ちんぼの世界に戻った。
「ほどなくして、好きだった担当と切れたこともあり、自分のためにお金をつかうようになりました。月に2回は日本各地に旅に出て、戻ったらまたやる生活。
この頃にはすでに、友達はみんな歌舞伎町の住人だったから、そのコミュニティから抜け出したいとも思っていませんでした」
A子はこともなげに話すが、立ちんぼ生活は、「客から殴られる」「スタンガンで気絶させられている間に金を抜かれる」といった怖い噂と常に隣り合わせだったという。そんな日常を2年ほど続けていくうちに、7月の逮捕に至った。
彼女は逮捕から2日で釈放され、「8月中旬に不起訴が確定した」と話していた。その後どのような生活を送っていたのだろうか。
「7月の逮捕で顔写真や実名を報道されたのはやはりダメージ食らったし、できればもうあの場所に立つ気はないです。
今は歌舞伎町で売春して生きる女の子のサポートをするNPOを手伝っていて、ホストに貢ぐお金が足りなくて泣きながら立ってる子に声をかけて話を聞いたりとかしてますね。でも、それだけだと1日3000円しかもらえない。
今後の展望についてはこう語っていた。
「本当はすぐにでもコンカフェとかでまともに働きたいけど、報道されてしまったので、今後はいったん身を潜めるつもり。あと、ちょっと普通の恋愛をしてみたいんですよね。
立っていたとき、たまに見かける同世代の普通のカップルをみて純粋に興味を持ち始めたんです。私は今まで、お金と身体を交換することでしか異性と繋がれなかったから。そんなことしなくても誰かと一緒にいられる人間っぽい気持ちを私でも体験できるのかな」
「新宿に来なければいいのではないか?」筆者はそうA子に伝えてみたが「友達もコミュニティも全て新宿にある、それは無理ですね」と寂しげな答えが返ってきた。
そしてインタビューから2週間、再びA子は逮捕された。
A子は今何を思うのか? 22日、留置先の警察署で面会を申し込んだが、面会は拒否されてしまった。21歳のA子が抱える闇は、想像以上に深い。
取材・文/清談社・集英社オンライン編集部ニュース班