「投げられればエース」は本当だった…ついに覚醒した阪神・髙橋遥人、空振り率15%×被ハードヒット率27.7%の“異次元”投球
「投げられればエース」は本当だった…ついに覚醒した阪神・髙橋遥人、空振り率15%×被ハードヒット率27.7%の“異次元”投球

セ・リーグ連覇を狙う阪神タイガースが今季も前評判通りの強さを見せている。その中でも、最強投手陣を牽引する髙橋遥人のハイクオリティな投球は、早くもリーグ連覇を期待させるに十分すぎる出来と言っていい。

(※数字はすべて4月16日試合開始前時点)

髙橋遥人がついに覚醒した理由

「普通に投げられれば、今すぐにでも球界を代表する左のエースですよ」

以前、阪神タイガースOBの井川慶氏が語っていた一言を思い出す。開幕から約2週間、登板数はわずか3試合ながら、髙橋遥人の投球クオリティが近年まれにみるレベルに達している。

2017年にドラフト2位で指名され、今季はプロ9年目となる30歳。早い時期から素材の良さは高く評価されてきたが、左肩に左肘と、度重なる故障に悩まされ、昨季までプロ通算で57試合登板。

それでも、「投げられればエース」という井川氏の言葉通り、トミー・ジョン手術を受ける直前の2021年には7先発で2完封、防御率1.65。リハビリ明けの2024年は5先発で同1.52、昨季も8先発、43回1/3を投げて同2.28と高いクオリティを維持し続けてきた。

そして迎えた今季。開幕ローテの座を射止めると、シーズン初登板となった3月28日の巨人戦で9回112球、被安打3の完封。二度目の先発となった広島戦では6回1失点、そして今季三度目の先発となった4月12日の中日戦では9回123球、10奪三振で早くも今季二度目の完封と、まさに無双状態が続いている。

今季から本格導入されたNPB公式アプリ「NPBプラス」で髙橋のトラッキングデータを見ると、その凄味はさらに浮き彫りになる。直球の平均球速143.9キロ、最高球速148.7キロは、「高速化」が進む近年のNPBにおいては平均的だが、特筆すべき数字がふたつある。それが、「空振り率15.0%」と「被ハードヒット率27.7%」だ。

空振り率は、文字通り全投球に対してどれだけ打者を空振りさせられたかを示す数値だ。

15%という数値がそもそも非常に高いが、球種別に見るとその凄味はさらに浮き彫りになる。髙橋の決め球は鋭く落ちるツーシームだが、空振り率は実に24.0%。140キロ前後の球速で鋭く変化するこの決め球を、髙橋はしっかりと低めに投げ込むことができる。

また、同球速帯に逆方向へ変化するカットボールを持っていることも非常に大きい。ツーシーム同様、140キロ前後で投じられながら、右打者から逃げるように落ちるツーシームとは逆に鋭く懐へ食い込んで切る。こちらも空振り率24.0%と、「決め球」レベルのクオリティだ。

才木とは真逆の支配力 “当たっても打たれない”衝撃データ

いわゆる「ストレート系」の速い変化球は現代野球において不可欠な球種でもあるが、質の良いストレートに加え、逆方向に変化する2種類の「ストレート系球種」を自在にあやつれる投手は滅多にいない。

これこそが、高い空振り率を生み出す重要なファクターになっている。また、近年その有効性が再評価されている「遅い変化球」も、カーブとチェンジアップの2球種を持ち球としており、投球割合こそ高くはないが要所で良いアクセントになっている。

ふたつめに挙げた「被ハードヒット率」は、打者に打たれた打球のうち「ヒットになる確率が高い=ハードヒット」とされる速度153キロ以上の打球の割合を示す。まだ3試合に投げただけだが、髙橋の27.7%という数字はかなり優秀だ。高い空振り率を誇る投手は相対的に被ハードヒット率が高くなる傾向もあるが、髙橋は真逆。

たとえば、4月7日のヤクルト戦でセ・リーグタイ記録となる1試合16奪三振をマークした才木浩人(阪神)は、空振り率14.2%に対して被ハードヒット率は44.7%。

「空振りも多いが、バットに当てられたときは強い打球も多い」傾向が出ていると言える。一方の髙橋はそもそも空振りを奪えるうえに、バットにボールを当てられてもヒットになる確率が低い。

当然ながら、打者の出塁を許す可能性も低くなり、これがWHIP(1イニングあたりに許す走者の数)0.75という数字にも表れている。

「走者を許さない」という意味では、高い制球力も今季の髙橋の特徴のひとつ。3試合、24イニングで与えた四球はわずか5。9イニングあたりの与四球率は1.88で、奪三振÷与四球で導き出すK/BBは4.00と、ともに球界最高レベルの水準だ。

空振りが多い=球数がかさむ傾向もあるが、髙橋の場合は制球力も高いため1イニングあたりの平均投球数もわずか13.3球。3試合で2完投(2完封)という結果も、少ない球数でイニングをこなせるからこそなせる業だろう。

村上×才木×髙橋で完成 阪神“最強三本柱”が誕生

プロ9年目、30歳にして本来の実力を発揮し、ベールを脱ぎつつある髙橋遥人。チームにはすでに村上頌樹、才木浩人というダブルエースが存在するが、ここに左腕の髙橋が加わることで「最強の三本柱」が誕生する。スーパーエース級が3人いる先発ローテーションは他球団にとって脅威以外の何物でもないだろう。

あとは、井川氏が語ったように「投げられれば」の部分。

怪我に苦しみ続けた過去があるだけに、ファンとしても開幕直後からのフル回転っぷりは気になるところだろう。とはいえ、年齢やキャリアを考えると「将来を考えて慎重に起用する」という立場でもない。

プロとして働き盛りを迎えた今季の髙橋が、1年間通してローテを守るようなことがあれば、最強先発陣の完成、その先のリーグ連覇が、ぐっと近づくはずだ。

取材・文/花田雪

 

編集部おすすめ