なんでも、昨年放送された「心霊番組」は20本以上に上るそうだ。心霊系のDVDや雑誌の売り上げも好調で、その市場規模は何と400億円以上。
廃れてしまった文化かと思いきや、実は意外なほどに活気づいているのである。
もっとも、心霊をテーマにする場合、コンプライアンスや自主規制により、デリケートな表現となってしまうのが現在のメディアを取り巻く状況。そこで「恐怖映像」として、答えをぼやかす形での放送が大半となっている。

しかし、90年代のテレビはえぐかった。心霊現象は無条件に全肯定の上で、霊視や除霊もやりたい放題。特に織田無道がメディアを席巻した時代は凄かった。


酒好き・女好き! 織田信長の子孫を自称した織田無道


織田無道は織田信長の子孫を自称し、80年代末から90年代中期に掛けてバラエティ番組に出まくっていた自称・霊能者。
ウィキペディアにある紹介からして奮っている。
「型破りな性格で知られており、酒は小学校6年の頃から飲んでいた」
「性欲が非常に強い事を公言しており、初めて女性の体を知ったのは13歳のときであるという」
僧侶とは思えない、煩悩の塊っぷりである。
いかつい風貌、声量たっぷりのバリトンボイス。一度見たら忘れることのない強烈なキャラクターで、一躍お茶の間の人気者となっていく。

織田無道、とんねるずの番組での「霊視」で大ブレイク


大ブレイクしたのはやはり『生ダラ』への出演だろう。正式なタイトルは『とんねるずの生でダラダラいかせて!!』。日本テレビ系水曜夜9時からのバラエティ番組だ。

視聴者から寄せられた心霊写真……とされるものを織田無道が鑑定し、「霊視」と称して過去の因縁やら土地の因果やらのそれらしい理由を並び立てる。

織田は、1200年の歴史を持ち、1,000を超える檀家を有するとされている寺の住職。さらに、柔道2段・空手3段を所有しており、世田谷区大会柔道青年の部で優勝経験を持つ。
このバックボーンに、目力あふれ過ぎな鬼気迫る表情と圧力感じる低い声。真贋を超越した妙な説得力を醸し出していたのは事実。そんじょそこらの悪霊など、力づくで除霊されてしまいそうな雰囲気なのである。


マルチタレントすぎる霊能者・織田無道


90年代初頭の「心霊ブーム」のもうひとりの牽引役となる宜保愛子の活躍の場が、霊的な現象を扱う番組やオカルト番組だけに限定されていたのに対し、織田は霊的要素皆無のバラエティ番組やクイズ番組などにも頻繁に出演。
ドラマや映画では俳優業にも取り組み、『オールスター感謝祭』の名物となっているマラソンで優勝するなど、マルチに活躍していた。
心霊ブームが終息しても、お構いなしに活躍の場が広がっていった織田。しかし、全身からにじみ出る胡散臭さはさらに色濃くなっていったのであった。

スタローンやマイケル・ジャクソンが呼べる人脈!?


2002年9月、織田は宗教法人の乗っ取りを計画し、公正証書原本不実記載・同行使の容疑で逮捕される。事実無根を主張するも、判決は懲役2年6か月、執行猶予4年。これを機にマスメディアの表舞台から姿を消した。


懲りない織田は、07年には格闘技興行をプロデュース。
「ゲストに倖田來未や松浦亜弥などを呼び、さいたまスーパーアリーナでビッグマッチを開催。上海、台湾にも進出する」「シルベスター・スタローンやマイケル・ジャクソンなどの海外セレブをゲストに呼んでいるなど」とぶち上げたが、もちろんひとつも実現せず。集客も散々で、関係者へのギャラ未払いトラブルを起こしている。

さらに、従業員への給料不払い騒動が発覚するなど、トラブル続きの織田無道。全盛期には「除霊」と称して、「このものに宿る邪悪なる魂よ、出て行け!」と一喝していたが、自身に宿る「邪悪なる魂」は追い払えないようである……。

(バーグマン田形)

悪霊除霊~織田無道 本当にあった呪いの話~第一巻 [DVD]