全国放送のない地域密着型のローカルTV局は、その土地ならではのおもしろい番組やCMなどが見られることから、注目が集まることもある。HTB「水曜どうでしょう」やMX-TV「五時に夢中」などが有名だろう。

そして、20年にわたって神奈川地域のローカル局TVKで放送され、数々の伝説を生んだ音楽情報番組「saku saku」もそのひとつ。そんな「saku saku」は今年3月に放送終了することが発表され、惜しむ声が続出している。

「saku saku」名物! 屋根上トーク


「saku saku」といえば欠かせないのが、番組セットでもあるアパートの屋根を模した舞台の上でトークを進めるスタイル。ここで司会MCと影武者になったスタッフでもある“黒幕さん”が演じるパペットぬいぐるみ“増田ジゴロウ”のトークが話題となり、次第に人気を得ていく。

それというのも「saku saku」の前身番組だった「saku saku morning call」でMCのPuffyが降板したことにより、当初はぬいぐるみだけによる番組編成だったのだが、ここで初代MCとして新人タレントだった、あかぎあいが迎えられて現在のスタイルに変更されたのだった。
それ以降は約3年ごとにMCを交代し、木村カエラ、中村優、三原勇希、トミタ栞、NANAEと現在6代目まで続いている。

木村カエラの活躍と功績


特に番組の人気を押し上げたのは、当時はまだ無名のファッションモデルだった木村カエラの出演によるものが大きい。物怖じしないトーク力や増田ジゴロウとの掛け合いの面白さは、他のMCと比べても群を抜いていたと思われる。
木村カエラはその後の活躍に知られるとおり、音楽活動も積極的に展開し、メディアへの露出が高まると番組も一気に全国へと広がっていった。実際、この時期に「saku saku」を知って視聴していた人も多いのではないだろうか。
番組で企画したグッズやイベントが話題になりはじめたのもこの時期で、木村カエラが番組で企画した自主制作CDは発売3分で完売したという。

ジゴロウ降板問題


初代から番組の顔としてMCと進行していた、黒幕があやつるぬいぐるみキャラクター「増田ジゴロウ」について、制作したデザイナー等から権利的なトラブルによって、使用中止しなくてはならなくなるという出来事もあった。
アパートの管理人という設定のキャラで愛され、グッズ販売などもされていた「増田ジゴロウ」は、これによって2005年に番組から姿を消し、翌月からは「白井ヴィンセント」という新キャラクターがアパートの新管理人ということで登場することになる。

「楽しい時間であればいい」井戸端会議的ノリの番組!?


屋根の上でトークをする……というよりは学生同士が部室や放課後でダベるような番組の雰囲気が、とても心地よさを感じさせた「saku saku」。しかし番組の放送は、まだ視聴者が寝ぼけているような朝の早い時間だった。
それでも人気だったのは、学生などが帰宅する夕方などに多く再放送をおこなうというタイミングのよさによるのかも知れない。

世代には懐かしいファミコンソフトのピコピコ音が終始使われていたり、思いつきでやってしまう企画や、その場のノリでの会話など、なかなかキー局での番組にはマネできない演出がおもしろい。
また、音楽情報番組として率先して出演したゲストも多かったのも特徴的。aiko、いきものがかり、コブクロ、Clystal Kay、スガシカオなど、デビュー当時からサクサカー(番組のファンのこと)を自任して出演していた者も多い。

地域ネタの多いこの番組だが、同じローカル人気番組の「水曜どうでしょう」とのコラボ企画があったり、DVDの発売もされているなど、知名度は全国的なものとなってきていた。最近は番組構成も変わり、放送開始当時ほどのおもしろさが薄れていた気もするが、ファンにとっては番組終了は惜しいものだろう。
どこかでまた屋根上トークの復活を期待したいところだ。
(空町餡子)

※イメージ画像はamazonよりsaku saku Ver.1.0 [DVD]