「カップ焼そば」の地域差、なぜあるの?
このように、お湯を捨てずに添付の粉末スープに利用するのが、「やきそば弁当」。これだけのことなのに、けっこう嬉しい。
先日、長野のスーパーで「やきそば弁当」を見つけ、「とうとう全国展開になったか」と、ちょっとうれしくなった。
「やきそば弁当」とは、説明不要かもしれないが、カップ焼そばに粉末スープが添えられている商品のことで、普通は流しに捨てるだけの焼そばのお湯を、捨てずにスープに利用する、北海道限定のカップ焼そばのこと。


だが、製造元の東洋水産株式会社に問い合わせると、
「いま、たまたまスーパーやコンビニで『地域フェア』をやっているだけで、北海道限定は変わっていません」というではないか。
さらに、同じ東洋水産(株)のカップ焼そばでも、東北には「焼そばバゴォ〜ン」が、関東などには「昔ながらのソース焼そば」があるなど、地域差があるという。

カップうどんやそばなどは、ダシの好みが東と西で分かれたりするので、東西で違った商品展開をしている理由は、わかる。
でも、カップ焼そばでなぜ? やっぱり味の好みが微妙に違うのか。
「いや、それよりも地域ごとの営業力、ブランド力の差が大きいですね。たとえば、『バゴォ〜ン』は、1979年3月に発売し、最初は全国展開してたんですが、徐々に営業の強い地域、弱い地域の差が出てきて、結果的に残ったのが東北、長野や新潟ということなんです」
で、定着しなかった地域には、代わりとなる商品、つまり、関東でいうと「昔ながらのソース焼そば」などが開発されたというわけだとか。

「関東では大人気の『ペヤング ソースやきそば』が、西では発売していないとか、地域差はいろいろあるんですよ」

ところで、北海道の「やきそば弁当」は、75年に発売されたが、実はそういうジャンルがあるわけではなく、これは東洋水産(株)の商標登録とか。
名前の由来は、スープを入れているため、厚みのある大きなカップの形状から、「弁当箱に似ている」とついたのだとか。ドカベンみたいだ。
それにしても、単に湯を捨てずに作るスープとはいえ、付いてる地域があることを思うと、つい「北海道、ズルイ!」と思ったりするが、
「一時的に、他の焼そばにスープを付けようという企画もあったんですが、短期で消えてしまったんですよ」とのこと。

ちなみに、この5年ほどで、やはり北海道限定として「やきそば弁当 塩」「やきそば弁当 しょうゆ」「焼うどん弁当」も出てきている。北海道だけ、カップ焼そばシリーズが妙に充実しているのである。
やっぱりズルイ! でも、
「北海道では特に人気があるので、いろいろ商品展開できるんですよ」
ということだった。

「やきそば弁当」の塩味としょうゆ味のサンプルを送ってもらって食べてみたところ(写真下)、塩味は、ジャガイモが入っているという心憎い演出で、しょうゆ味は、主張は強くないのに、まろやな甘みと香ばしさが面白い。
特にしょうゆは定番化しても良さそうなんだけど……。

様々な事情を抱えて生まれた、カップ焼そばの地域差。旅行の土産などにも、使えるかもしれません。
(田幸和歌子)