『ちりとてちん』の細かすぎる演出が話題!?
弱気で後ろ向きでヘタレな主人公に、共感の声が続出。(写真提供:NHK大阪放送局)
視聴率こそ前作に比べて落ちるものの、「朝ドラ史上最高の出来!」などの声もあるほど、熱狂的なファンの多い、NHK連続テレビ小説『ちりとてちん』。

朝ドラの主人公は「明るく前向き」が定番だが、このドラマでは、「後ろ向きで、大事な場面ではいつも弱気になる根性なしが主人公」という点も、「等身大の主人公」として共感を得ている。

「朝、昼、BSと毎日3回観ている」という視聴者も多く、同じ内容なのになぜか「3回目がいちばん面白い」なんて声もあるほどだが、それこそが視聴率が伸びない原因との指摘もある。

このドラマ、とにかく情報量が多く、細かすぎる演出が多いため、後になって「アレはこの展開への伏線だったのか!」と気づくことも多く、忙しい時間帯のドラマとしては、「難しい」という見方もあるようなのだ。

これは意図的なもの? 『ちりとてちん』チーフプロデューサーの遠藤理史さんに聞いた。
「皆さんがおっしゃる『伏線』『コネタ』というのは、ゆうてみればドラマの基本。ドラマをつくる人はみんなやっていることで、朝ドラに限っても毎シリーズやっています。こちらとしては、今日初めて観た人にも面白いドラマであるように作ろうと考えていて、その上で、以前から観てくれてる方にはさらに『お土産』があるといいな、と思ってるんです。
それが『伏線』と呼ばれたりするのでは?」

女主人公が伝統を受け継ぐという点では、おかみになる『どんど晴れ』と、落語家になる今作が「かぶる」という見方も多い。さらに、『ちりとてちん』のなかでは、どうしたら主人公が落語家になれるか家族が話し合うシーンで「雨の中で座り込みとかして」「テレビの見すぎ!」「それは明るくて前向きな主人公がやるから良いわけで」などと、『どんど晴れ』への皮肉とも思えるセリフが登場するが……。
「よく『どんど晴れ』と比較されるんですが、『ちりとてちん』をつくり始めたときに、『どんど晴れ』はまだ始まっていませんから(笑)。『どんど〜』も伝統を受け継ぐ話と聞いたとき、かぶったと思い、ネタを差し替えようかとも思ったんですが、やろうとしていることはかぶってもいなさそうだったので、そのままいくことにしたんですよ。(どんど晴れで)南部鉄器のところで主人公が座り込みをするのを観たときは『しまった……』と思いましたが」

それにしても、「弱気で後ろ向きな主人公」は従来の朝ドラへのアンチテーゼでは?
「朝ドラに限らず、ドラマの主人公はたいてい前向きで明るいですよね。そういう意味で、“これまでにない主人公をつくりたい”という気持ちはあります。
でも、そのへタレな主人公を見て嫌な気持ちにならないか、そこは危ないところだと思っていて、ナレーションでへタレな主人公を茶化すのも、観ている側が嫌な気持ちにならないためなんです」

ちなみに、この『ちりとてちん』は、よ〜く観ると、前々作『芋たこなんきん』に出てきた本が部屋にあったり、飲み屋の看板がうつったりする。そんな細かい演出も一部で話題だが、
「それはスタッフの遊び心ですね。大阪局制作の朝ドラは毎年美術スタッフがほぼ同じメンバーなので、自分たちの作った小道具に愛着があって、さりげなくセットに置いたりしているようです」
遠藤さんの言う「どこでもやってること」は、それでもやっぱり細かすぎ!! 『ちりとてちん』の今後の展開から目が離せません。
(田幸和歌子)