海外に長期滞在していると、和食が食べたくなる。日本人ならば誰でもそういうホームシック的な気分になることはあると思うが、特に食べたくなるものといえば、しゃぶしゃぶだ。
もちろん、納豆や味噌汁や寿司も食べたくなるが、海外生活で疲労しきった体はスタミナも同時に求めているのか、肉類の和食を強く欲したくなる。ということで、タイのしゃぶしゃぶ屋に行くことにした。そして、そこで驚くべき光景を見ることになった……。

タイには“しゃぶしゃぶ”とうたっているレストランが数多く存在する。しかし、本当の和風しゃぶしゃぶは、日系レストランの「モーモーパラダイス」か、日本人経営の居酒屋しかない。つまりタイのしゃぶしゃぶ屋は、ほとんどがタイ式(つまりタイスキ)ばかりで、タイ人向けにアレンジされている。
タイ式のしゃぶしゃぶはタイ特有の食材がメインで、タレは甘辛いものを使用しているのが特徴だ。

今回、取材で行ってみた「神戸」という名のしゃぶしゃぶ屋は、和式とタイ式の中間地点にあるようなスタイルで、和風の酢醤油やゴマダレもあり、食材には日本人が見慣れた野菜が豊富に用意されていた。しかも、食べ放題で200バーツ(約600円)と、タイの他店よりお得である。しかし、何かか違う! 何かおかしい……。全食材がプラスチックケースに入れられており、完全密封されているのだ。

肉、野菜、春雨……、すべてが完全密封。
一人前ずつ、すべてケースに入れられて管理されているではないか。日本の焼肉食べ放題の店でも肉を入れたトレーにフタをしている店はあるが、ひとつひとつ完全密封はしていない。どうしてこんなことをしているのか? 店員に話を伺ったところ、「お客さんが安心して食べられるように、清潔であるように心がけているのです」とのこと。ちょっと汚れたくらいなら「マイペンライ!」(大丈夫!)というタイにおいて、ここまで清潔さに気を使っている店は初めてだ。

「日本にはここまで潔癖な店は少ない」と話すと、「お腹壊しますよ(笑)」と注意されてしまった。肝心の味だが、豚肉がゼリーのようにプルプルしていて不思議な食感だったことを除けば、満足のいく味だった。
しゃぶしゃぶ「神戸」は、バンコクの中心部・サイアムスクウェアにあるマーブンクロウショッピングセンター内にある。観光ついでに、和とタイの融合したしゃぶしゃぶを堪能してみてはいかがだろうか?
(空条海苔助)