柿の種といえばビールやお酒のおつまみの定番で醤油味、「柿の種が好き」と女子が言うと、「オヤジっぽい」と思われてしまいそうなイメージは遠い過去の話である。

キャラメルラテにカレー、濃厚チーズ味と斬新な味付けで若い女性や男性の心をつかみ、デパート等で人気の「柿の種専門店」がある。
創業111年、大阪の老舗の米菓店「とよす株式会社」が世に送り出した柿の種専門店「かきたねキッチン」だ。

柿の種フレーバーは「濃厚なコクの贅沢チーズ」や「甘醤油のあと辛」などのおつまみ系からキャラメルラテなどのスイーツ系商品や、期間限定商品を含め約10種類。

関西人は同社の有名なCMを見て育ち、「あられはやっぱり…」といえば、「とよす♪」と軽快に口ずさめる人も多いのではないだろうか。もともと「柿の種」自体は、関西より関東の方が支持が厚いというが、その「とよす♪」が日本初の柿の種専門店を2011年にオープン。人気は大阪を皮切りに名古屋、関東など全国へと広がり今や、10店舗と拡大している。

同社広報部・豊洲牧子さんによると、大阪梅田エリアの開発に伴い、大阪市内の百貨店が一斉に改装・増床を具体化し始めたのが2009年頃ごろ。
メディアでは「大阪百貨店戦争」と呼ばれていたが、既存のメーカーにも新しい提案が求められた。

「当時、あられ・おかきの専門店である当社の高級米菓は、シニアの客層が中心。フォーマルギフトだけではないあられの提案ができないかと思案した結果、日本で一番支持されている『あられ』である『柿の種』を魅力的なデイリー商品にしてはどうかという案が出ました。そして、『あられや』としてのプライドをかけて柿の種を作ろうと思い至りました」

「かきたねキッチン」の柿の種は、ひと粒の大きさが、通常の柿の種の3倍程度(約40ミリ)ある。「若い女性のお客様でネイルをした指先でもつまみやすいこと、一粒だけ口に入れてもフレーバーの味がしっかり楽しめるようにしました」。実際に、女性から「こんなのが欲しかった」「見た目が可愛い」「食べやすい」と評判だ。


老舗あられやのメンツをかけたこだわりを探ってみよう。カリッとした食感を出すお米の配合と、フレーバーの味がうまくからまるよう計算された表面の大きさ。製造には餅米の浸漬からさまざまな工程を経て、出来上がりまで1週間ほどかける。そして、焼き上げ工程では職人が小さな釜の前でつきっきりで焼き色を調整、確認しながら焼き上げる。

味付けは、例えば「贅沢チーズ」はナチュラル・チーズ(ゴーダ)を60%以上、「山椒とたまり醤油合わせ」では京都の七味家本舗製を使用。「わさびと醤油合わせ」は安曇野産わさびを使用するなど原料にもこだわりをみせる。


人気のフレーバーや季節限定フレーバーなど、好きな味を1容器に最大3種類まで選べる「マイかきたね」はディスペンサーからフレッシュな柿の種を詰めることができ、1カップ263円とお手頃価格なのが嬉しい。豊洲さんに人気ベスト3を聞いて、早速食べてみた。濃厚なコクの「贅沢チーズ」は口の中でチーズの風味が立ち上りワインにも合いそう。

帆立風味の「海鮮風塩だれ」は塩コショウがピリッときいて後をひくうまさ。京・清水七味家本舗製「山椒とたまり醤油合わせ」は、山椒の辛味がきいて後味さわやか。ナッツを足したり好きなフレーバーを一点買いするなど自分好みの柿の種を作ることができる。


月に一度のペースでお目見えする季節・期間限定商品は、売切れることが多く、地域限定商品は、新規出店の期間限定(約1~2ヶ月程)で提供されることがあるので見逃せない。博多明太子使用の「めんたいスパゲティ仕立て」や、大阪は阪神百貨店名物の「いか焼きソース味」などがそうだが、催事などでディップにつけて食べる「フライドかきたね」など、斬新な柿の種に魅せられるファンも多い。「いつ来ていただいても、新鮮な驚きとともにお客さまに楽しんでもらいたい」という思いが、新商品開発に力を入れる理由だ。


「柿の種は地域・世代に関わらず親しまれており、誰もが知っているからこそ新しい味や組合せの冒険ができます。あらゆる国や地方の料理を美味しくアレンジして取り入れる日本のキッチンのように、『柿の種』に様々な料理のエッセンスを取り入れ、『常に新しい』柿の種を販売していきます」(豊洲さん)。老舗の伝統を守りつつ、新しいことにも先駆けて挑戦する進取の精神。
大阪の老舗あられやの心意気、堪能してください。
(山下敦子)