「震災後72時間は、行政の支援が届かない」

東日本大震災で多く耳にした「支援の遅れ」。それを覚悟しておくべきことだ、という視点で作られたニンテンドーDSのソフトが、2009年に発売されていたのを知っているだろうか?

その名も『地震DS 72時間』(2009年6月発売)。

日本初の本格的な“地震防災教育ソフト”として、平成21年度には消防庁の「消防防災機器の開発等」で優秀賞を受賞している。クイズ形式で地震防災を学べることから、小学校の授業にも導入されてきた。

“72時間”というのは、一般的に地震で生き埋めになった人が生存できる、限界の時間とされる。そしてその間、行政は人命救助を優先するため、物資などの支援が行き渡らない。このソフトは、そんな72時間を自分たちの力で生き抜いてもらうために、開発された。

ただし今回の震災では、支援が始まるまで72時間どころじゃ済まない地域が多かった。
そこで、ソフトを開発した株式会社イオタに、今改めて考える「72時間」の意味合いについて聞いた。

「“72時間”という数字は、行政の支援までに“かなりの時間がかかる”という意味合いで、とらえて頂ければと思います。このソフトをきっかけに、行政の支援だけに頼らない地震への備えを、進めて頂けるとうれしく思います」

ゲーム内で出されるクイズとしては、例えばこんな問題が収録されている。

Q. 避難所での食事は、どのように配給されますか?
A. 人数分を確保するまで配られない

Q. 明朝10時から、近くの学校で救援物資の配布と炊き出しが行われると連絡があり、隣近所にも伝えなければなりません。どのように伝えますか?
A. 紙にメモを書いて渡す(口頭で伝えるだけではダメ)

Q. 相続税の支払いを申告していた家が半壊してしまいました。相続税の支払いはどのようになりますか?
A. 半壊した部分に相当する評価額分免除される
(※震災の状況や法改正によって、例外が生まれる場合もあります)

こうした問題が、時間軸(地震発生前から再建期まで)と場面(家や会社、避難生活など)に分けられ出題される。
さらに、防災の知識を得られる「防災事典」なども収録。“支援が行われるまでの時間”だけじゃない、幅広い防災知識を得られる、マジメな教育ソフトだ。

「あらかじめ、この先に何が起こるのか分かっていれば、いざ地震が起きたときに余裕が生まれます。事前の対策から、復興や生活再建まで、長い期間での防災を考えて頂ければと思います」(株式会社イオタ)

ちなみにクイズでは、正答数が増えるにつれて、登場するキャラクター(男女から選べる)が、地震防災にふさわしい格好へと着衣していく。クリアごとに脱衣するゲームはいっぱいあるけど、着衣するとは、なんて斬新なモチベーション作り。遊び心までマジメとは。


震災から1か月以上が経った今も、大きな余震が続いている。そして日本のどこにいても、いつ大きな地震が起こるか分からない。
地震と向き合っている今だからこそ、地震に真正面から取り組んだ教育ソフトで、知識を得るのもいいんじゃないだろうか。
(イチカワ)