中国企業報はこのほど、日立グループが家電分野で中国からの撤退を進めていると伝えた。上海サーチナが中国人インターネット・ユーザーに同記事についての感想を尋ねたところ「先進技術を出し惜しんだ必然の結果」との回答が全体の約4割で最多だった。


 日立グループは厳しい経営状態が続いている。中核企業の日立製作所の2009年4月1日-9月30日の純損失は1332億円で、前年同期の141億円の黒字から赤字に転落。中国政府は景気刺激と農村部での生活向上を兼ねた政策として、農村部向けに安価な家電商品を優先販売する「家電下郷」政策を実施しているが、日立製品はほとんど売れていない状態という。

 中国ではかつて、日立は日本を代表する家電ブランドのひとつと考えられ、人気と評価が高かった。しかし中国企業報によると、「現在では声は聞こえるが姿は見えない」状態で、知名度は高いのに小売店で扱われている製品を見る機会は、めっきり減ったという。同報は外資系家電メーカー職員の話として「空調・テレビ・冷蔵庫・洗濯機などの分野で、すでに中国市場を撤退した状態」と紹介した。


 同報は、日立製品が中国の家電市場で取り残された原因として「日本家電の名ブランドであり、先端的技術を多く持っている。しかし、中国市場にはせっかくの技術を生かした製品が投入されなかった」と主張。他社製品と“一騎打ち”できる優秀な製品がなく、ブランド名だけにあぐらをかき、低価格路線も採用しなかったという。

 上海サーチナが、「中国から消え行くブランド・日立家電」についてアンケートを実施したところ、「先進技術を出し惜しみ、利益追求だけを図った必然の結果」を選択した人が全体の38.8%で最多(2日午後2時半現在。以下、同じ)で、「日立ブランドはすばらしい。中国からの撤退は残念」を選択した28.8%を上回った。


 「国産ブランドを支持」とした人は全体の約21.2%。それらとは別に、11.2%が「日立のことを知らない。製品を買ったこともない」と答え、消費者の間で日立ブランド離れが信仰していることをうかがわせた。

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◆解説◆
 中国の消費者の間では「日本企業は中国で、最先端の技術を駆使した製品を売りたがらない」との見方が強い。

 かなり誇張されて認識されている面もあるが、日本の機械メーカーに務める中国人(管理職)によると、「先進技術の出し惜しみは事実」という。

 「技術を盗まれる」と考える企業人が多いことが原因で、会議や書類回し・根回しなどに手間取り、販売契約の締結をようやく“決意”した時点で、欧米系企業に先を越されていたというケースも多い。


 逆に欧米系企業は、知的財産権が侵害されるリスクを承知の上で、「当座の利益を出すことが先決」と考える場合が多い。権利侵害があった場合には、法的手段などで対抗するが、仮に“パクられ損”になったとしても、「まず利益を上げ、その利益を研究開発につぎ込み、さらに進んだ技術を開発した方が現実的」などと割り切る発想が強いという。(編集担当:如月隼人)

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