●西遊記(Xiyouji)

 明代にほぼ現在の形にまとめられた伝奇小説。「三国志演義」、「水滸伝」、「金瓶梅」とならび、「中国の四大奇書」とされる。
中国では露骨な性描写などで禁書になった「金瓶梅」の代わりに「紅楼夢」を入れ、「四大名著」とされることが多い。

■玄奘三蔵の記録をヒントに、自由に創作

 仏教経典を求めて天竺(インド)を訪れた唐代の高僧、玄奘三蔵が著した「大唐西域記」などをヒントに、自由に作られた物語。玄奘三蔵の出発は629年。帰国は645年。明代の呉承恩が「西遊記」としてまとめたとされる。ただし「呉承恩作」については異説も多い。

 西遊記は、元代から劇の演目になり、のちに京劇も重要なレパートリーとして取り入れた。現代でもテレビドラマ、アニメなどでも、多くの作品が作られている。中国人がイメージする孫悟空の姿は、伝統劇で用いられた扮装の影響が大きい。

■道教の神にもなった孫行者=孫悟空

 中国では、西遊記の玄奘三蔵を「唐僧」と呼ぶのが一般的。孫悟空は「孫行者」。孫悟空は道教の神として、信仰の対象にもなっている。
猪八戒は天界の将軍だったが、酒に酔い月に住む仙女の嫦娥に言い寄った罪で、下界に落とされた。人間に生まれるはずだったが、誤って豚の胎内にやどった。

 沙悟浄は天界の役人。天帝の宝の器を割った罪で、流沙河で人を食べる妖仙となった。川に住んでいたため、日本では「河童(かっぱ)」のイメージが定着した。

■徳川将軍も学習と楽しみ兼ねて読んだ

 日本では、安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した天台宗の僧、天海が収拾して日光の輪王寺が保管している輪王寺天海蔵に明版「西遊記」が納められている。このことから、徳川将軍が西遊記を読んでいたことが分かる。

 輪王寺の明版「西遊記」には挿絵もあり、将軍が幼少の頃から必修であった漢文を楽しく学ぶため、補助教材のように使われた。その他では、趣味として読んだ漢学者も相当数いると考えられるが、一般庶民にはほとんど知られていなかった。

 中国の庶民は、曲芸(日本の浪曲、講釈に相当)や伝統劇で西遊記に接するのが一般的で、書かれた文字の形で親しむことが少なく、書物としての「三国志」は日本に伝わることが少なかったことが、背景にあると考えられる。

 明治期以降は、日本と中国の人的な往来が増えたこともあり、日本の文学者、読書家などが西遊記を知るようになった。日本文学に与えた影響も大きく、1940年代には中島敦が「悟浄出世」、「悟浄嘆異」など、内省的な作品を発表。
その後も、多くの作品が発表された。

 ただし、抄訳や部分的な訳、児童向け簡略版しかない状態が長く続き、初の完訳本が登場したのは平凡社版の「古典文学全集」による(1971年)。また岩波文庫は、西遊記研究の権威だった小野忍氏の訳で1977年から刊行を開始。しかし、同氏死去のため3巻で中断。1986年に中野美代子氏の訳により再スタートし、1998年に完結した。

■漫画・アニメ・ドラマなど莫大な関連作品

 日本では、漫画、アニメ、テレビドラマなどの西遊記を題材にした娯楽的な作品も極めて多い。ドラマでは、1978年から放映された堺正章(孫悟空)、夏目雅子(三蔵法師)、西田敏行(猪八戒、続編では左とん平)、岸部シロー(沙悟浄)が出演した作品が人気を博した。同作品では女優が演ずる三蔵法師も注目され、宮沢りえ、牧瀬里穂、深津恵理などがテレビドラマや映画で三蔵法師を演じた。

 西遊記に関しては、「長い旅路の末、故郷を救う装置を獲得するという想定(宇宙戦艦ヤマト)」、「三つのしもべのキャラクター(バビル二世)」など、作者やスタッフが、関連を証言。また、作家の筒井康隆が「少年時代に映画の『エノケンの孫悟空』の圧倒的な影響を受けた」と記すなど、直接には見えない形での日本の作品への影響もある。(編集担当:如月隼人)

【関連記事・情報】
「西遊記ランド作り、ディズニーに対抗せよ」-中国議員(2009/03/11)
玄奘三蔵:インドへの旅の前、広西に立ち寄り防災PR(2009/02/21)
福州市に水滸伝の「妻を取られた非力男」が出現(2008/03/26)
三国志「張飛」にも不況直撃!? 重慶の街で串焼き売る(2009/02/13)
性愛小説「金瓶梅」公園、「客は来ず批判続出」の散々(2007/05/08)
編集部おすすめ