中国青年報はこのほど、中国人がしばしば、公共の場で短絡的な怒りにまかせて暴力沙汰を起こしている現状を受け、「中国人よ、お前はなぜすぐ怒るのか」との疑問を探求する論説を発表した。同論説は、中国新聞社など他の中国メディアも転載した。



 同論説は、地下鉄車内、バス、さらに航空機などでも多発している「席争い」などを原因とする乱闘事件を問題視。それ以外にも、公共の場所で些細な理由で暴力事件が発生していることを指摘し、「中国人よ、お前ななぜすぐ怒るのか」と、改めて考えてみる必要があると主張した。

 一般庶民だけでなく、「修身齊家治国平天下(自分のおこないを正しくし、次に家庭をととのえ、次に国を治めて次に天下を平らかにする)」との伝統思想が定着しているはずの“知識分子”ですら、すぐに怒るようになったと指摘。

 対日抗議デモに参加した大学教授が、反対意見を述べる高齢の男性を殴打した件を取り上げ、「驚くばかり」との考えを示した上で、「忍耐深く、相手の意見を聞くことはしないのか。異なる考え方に対する寛容さはないのか。(学者でありながら)異なる思想をぶつけ合うことに楽しみは感じないのか。
それとも、論理的に相手を説得するより、張り手を食らわせる方が簡単だと考えているのか」などと批判した。

 人々に、怒りにまかせて暴力で問題を解決しようという傾向がみられることについては、法やルール、社会の制度が遅れており、人々が「自分の正当な権利を守ろう」と考えれば、法やルールに頼るより、怒りを示し、暴力などで解決する方が近道と考える傾向があると指摘した。

 さらに、いずれにせよ「地下鉄内で暴力、観光スポットで激突、航空機で乱闘、高齢者が大学教授に叩かれる」という社会が成熟しているとはとても言えないと主張。

 清華大学で政治学を専門とする劉瑜准教授の、「制度というものは重要」、「しかし制度の運用には“コスト”がかかる。民度の向上は、制度運用のコストを引き下げるために有効だ」との指摘を紹介。きちんとした制度があっても民度が伴わなければ、制度をきちんと運用することは難しくなるいとの見方を示した。


 論説は、シンガポールで遊覧船への乗船時に中国人ジャーナリストが目にした光景を紹介。8割程度が中国人観光客だったが、接岸した船にわれ先に乗りこもうと殺到したという。その場に居合わせた(中国人以外の)外国人は「全員が乗るまで船は待っているだろうに」、「全員座れるだけの席だってあるだろう」と、あきれはてたという。

 論説は「その通りだ。われわれはいったい、何を失うことを恐れているのか。われわれはどうして、すぐに怒りだすのか」と疑問を示した上で、「われわれが平和的になり、何かを失うと不必要に恐れなくなり、怒りを示すことがなくなった時、われわれの時代は自分でも気づかぬうちに、小さな前進をなしとげたと言えるのではないか」と締めくくった。
(編集担当:如月隼人)