しなの鉄道を走る115系電車で、湘南色、横須賀色など「懐かしの車体カラー」が復活しています。どのような背景で実現したのでしょうか。

国鉄時代に製造された115系

 しなの鉄道(長野県上田市)が、「懐かしの車体カラー」を次々と復活させています。

 同社の路線を走っている車両は、国鉄時代に製造され、JR東日本から譲渡された115系電車です。この115系は1900両以上が造られ、1960年代から関東甲信越、静岡、山陽エリアなどで広く使われました。

 今回、しなの鉄道で復活した「懐かしの車体カラー」は「初代長野色」(2017年4月~)、「湘南色」(5月~)、「横須賀色」(7月~)の3種類(3編成)です。

湘南色、横須賀色…しなの鉄道で「懐かしの塗色」が続々復活 そ...の画像はこちら >>

横須賀色の115系電車は、JR東日本では2015年に引退している(画像:JR東日本八王子支社、しなの鉄道)。

 初代長野色はアイボリーホワイトを基調とし、緑と赤の帯を配したデザインです。

1989(平成元)年4月、JR東日本の長野地区に登場。その後、1998(平成10)年の長野オリンピック開催にあわせて水色を基調とした「2代目長野色」に変更され、「初代」の配色は姿を消していました。

 湘南色は緑とオレンジの2色に塗り分けたデザインです。1950(昭和25)年に国鉄(当時)の東海道本線を走る「湘南電車」80系から採用されています。横須賀色は青色とクリーム色からなる塗り分けで、1950年に横須賀線を走る電車に採用されたのが初めです。

「懐かしの車体カラー」の復活は、今年の7月から9月にかけて開催されている観光キャンペーン「信州デスティネーションキャンペーン(信州DC)」と、しなの鉄道開業20周年にあわせた企画といいます。

 新しいデザインの車両を登場させる方法もあったはずですが、今回登場したのは旧塗装でした。企画実現にはどのような経緯と背景があったのでしょうか。しなの鉄道に聞きました。

「懐かしの車体カラー」いつまで運行?

――「懐かしの車体カラー」の企画はどのような経緯で出てきたのでしょうか?

 社内で企画案のアンケートを取った際に、塗色を変更しようというものが出てきました。いまとなっては具体的に誰からだったのか分かりませんが……。新しいデザインの話はなく、当初から“懐かしさを生かす”という発想だったと思います。

 その後企画を進めていくなかで、JR東日本さんから車体カラーについて快諾がいただけました。弊社やJR東日本さんが関係する「信州DC」がタイミング良く開催されたことが大きかったのだと思います。

――地元利用客の反響はいかがでしょうか?

「懐かしい」という声を聞きます。「懐かしの車体カラー」の運行を始める際は、3編成とも出発式を開催しましたが、そこに地元の方々も来ていただけました。事前に募集した「こども駅長」にテープカットや出発合図を行っていただきましたが、この親御さんが懐かしがっていたのが印象的でした。

湘南色、横須賀色…しなの鉄道で「懐かしの塗色」が続々復活 その背景は

初代長野色登場当時の走行風景(画像:JR東日本、しなの鉄道)。

――鉄道ファンの方の反応はいかがですか?

 反応はありました。特に、弊社はTwitterやFacebookを運営しておりますが、「懐かしの車体カラー」の企画を発表した際は、リツイートや「いいね!」の数が、弊社のふだんの規模としては桁が違うほど多くなりました。

――「懐かしの車体カラー」編成は、いつまで運行される予定でしょうか?

 少なくとも3編成とも2019年3月までは現在の塗色のまま運行する予定です。それ以降、大規模な車両検査のときに塗色が変更になる可能性はございます。

 しなの鉄道を「115系の聖地」にしていきたいと思っております。これを機に、ぜひ長野にお越しください。

※ ※ ※

 長野新幹線(北陸新幹線)・高崎~長野間の開業にともない誕生したしなの鉄道は、2017年10月1日(日)に開業20周年を迎えます。当日は小諸駅(長野県小諸市)周辺で、記念イベントが開催される予定です。

【写真】湘南色に塗装された115系

湘南色、横須賀色…しなの鉄道で「懐かしの塗色」が続々復活 その背景は

しなの鉄道で2017年5月から運行している湘南色編成のイメージ(画像:しなの鉄道)。