2013年の堺雅人、2014年には西島俊之や向井理らが結婚し、落胆しているのが文化系女子だ。西島が結婚した際には、人気ドラマ『きょうは会社休みます。

』(日本テレビ系)にあやかって、「西島さんが結婚したので、会社やすみます」とツイートする人が現れるなど、傷心した人々が続出したのだ。

 そんな文化系女子の「最後の砦」とも言われているのが、ミュージシャンで俳星野源。コラムニスト・能町みね子が主催する「好きな男ランキング」で2012年1位、その翌年も2位と好位置をキープするなど、熱い支持を得ているのだ。

 しかし、星野は目を見張るような美形でもなければ、「an・an」(マガジンハウス)でヌードを披露するような色気あふれる男性でもない。ファンの間では「笑うと目がなくなるところがかわいい」「歌声がたまらない」という声もあるが、ファン以外にはその魅力は伝わりにくいところ。だた、『星野源雑談集1』(マガジンハウス)には随所に、ファンを虜にする彼の小悪魔的な魅力があふれているのだ。


 たとえば、星野ファンは周知の事実である下ネタ発言の数々。本書ではお笑い芸人のケンドーコバヤシとの対談で『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「AVサミット」回にプロデューサーに直接出演を直訴したことや、葬式などの「不謹慎な場でムラムラする」と意外な性癖を明かすなど、下ネタは絶好調! しかし、温和そうな雰囲気をまとっているからか、草食系男子に間違えられることもあるそう。以前は、「『殺す!』って怒ってたんです(笑)」というが、「最近は『そうですねー、好きなセックスの体位は立ちバックです』みたいにニコニコしながら訂正できるようになりました」と見事なドSっぷりを披露している。

 また、ミュージシャンのあこがれの場である『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に初出演したときのことを独自の視点で振り返っている。「関わっている人たちはみんなプロで、画面からは伝わらないかもしれないけど、セットチェンジの最中とか現場は戦争なんですよね。でもその間、トーク席では普通に話していて。
ライブよりもライブ感があるんです」と説明し、その緊張感を「もの凄く楽しかったんです」と喜んでいる。「出演者の皆さんもそこに出てるんだっていうプライドと高揚感がたぎってて、見たらまゆゆさんがずっと歌の暗唱をしてて、背中から炎が見えたというか」と、他のアーティストから刺激を受けているようだ。「草食系男子の代表」と言われがちな星野だが、こうした肉食男子のような強気な一面を見せている。こうしたギャップが人気の秘訣なのかもしれない。

 さらに彼の茶目っ気が表れているのが、ラッパーで、いまはラジオパーソナリティとしても人気を集めているライムスター・宇多丸との対談でのエピソード。それまで散々宇多丸にラジオパーソナリティの面白さを聞いていたのだが、対談の最後で「実は何度か『タマフル』(※編註『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』のこと)でメールを読んでもらったことがあるんですよ」とカミングアウト。
投稿のためにメールアドレスを取得し偽名を使う徹底ぶりで、番組で流すジングル曲を募集される際にも応募。宇多丸が「どのやつですか?」と聞くと、まさかの「優勝したやつです(笑)」と告白し、これには宇多丸も「ええええええええええ!」と絶句するのみ。

 そもそも曲を投稿したのも、ラジオ番組担当ディレクターにすれ違った際に、番組出演を営業したところ、ジングル曲の募集に応募してはと冷たくあしらわれたのがきっかけ。星野はレコーディングの際に気分転換として曲を作ったと語っているが、上記のように実は勝気な一面を持っているので、もしかしたらディレクターの鼻を明かすために投稿したのではと邪推したくなる。投稿の経緯といい、対談の最後にカミングアウトして宇多丸を翻弄したことといい、星野の小悪魔っぷりが如実に表れてる。

 一見、草食系男子のように見えて下ネタも性欲についてもあけっぴろげに語り、優しそうに見えて、Sっぽい男らしい一面も見せている。
こういった星野の多面性が、文化系女子をはじめとする、多くの人を魅了してやまないのだろう。
(江崎理生)