iPadなどのタブレット端末が登場し、いよいよ電子書籍が本格的にくる! となったとき。期待した未来がありました。
それは、毎週読んでいる雑誌が勝手に端末にセットされること。特に、週刊漫画雑誌が自動的にダウンロードされる未来を望んだのです。残念ながらNewsstandが開始されたときでも漫画雑誌はラインナップに無かったし、おそらく一番最初の漫画雑誌アプリであったジャンプSQ.Dもいつの間にかなくなってしまったし、そういった未来はこないのかなと思っていたら、きました。きたんですよ! しかも、これ以上ない形で!

5月16日から配信開始された「Dモーニング」アプリは講談社の週刊漫画誌「モーニング」の電子書籍アプリです。対応機種はiPhoneやiPadなどのiOS端末になります。

なんと、Dモーニングアプリは毎週木曜日のモーニング誌発売に合わせて、同日に配信されるのです! しかもかかる金額が月額500円のみ。
モーニング誌の定価が330円だから、月に4回出るとして、1320円分が500円になるのです。発売日と同じ日に読めて、なおかつ安いとは何と素晴らしいのでしょうか。

最も、完全な形ではありません。「バガボンド」「BILLY BAT」はこのアプリでは読むことができず、紙の雑誌で読まなければなりません。それから、各ページにあるノンブル(ページ番号)、各広告ページ、アンケートページ、プレゼントコーナー、一番最後の目次および編集後記、巻頭のカラー特集ページを見ることができません。特に今週は個人的に愛してやまないクッキングパパとCOOKPADとのコラボ記事および表紙の荒岩キャラ弁の解説があったので、これも是非アプリでも見たかった!

その代わりなのかどうかはわからないのですが、Dモーニングならではの企画が入っています。
ひとつは紙のモーニングには入っていない作品。「山下和美名作読み切り劇場」では「天才柳沢教授の生活」から傑作選を、一色まこと短編集「ガキの頃から」より「駒子」前後編が載っています。No.24号では「コウノドリ」の第一話(連載の方の「コウノドリ」はこの号では休載です)が掲載されています。

面白いのは、最近連載が始まった「サイレーン」「Dr.愛助の孤独」でしょうか。Dモーニングでは23号から読むことができるのですが、これらの作品は23号時点で2話目だったり3話目だったりします。なので、23号には「サイレーン」は一挙2話掲載、「Dr.愛助の孤独」では一挙3話掲載になっているのです。
Dモーニングから追いかけ始めた人にも安心ですね。

それ以外の部分は雑誌版と同じです。柱のコメントからあおり文句に至るまで、雑誌と同じように読むことができます。

肝心のアプリのできはどうかというと、これがよくできています。1号につき500MBぐらいのデータをダウンロードするのですが、その画面ではダウンロード連載「ねこだらけ」が表示されます。さらには、一度ダウンロードが完了して表示しているときでも、画面の上の方に小さく「超高画質版をダウンロードしています」と表示が時折出るので、最初の待ち時間を減らしてストレスなく読めることを最優先にし、高画質なものは読んでいる最中にバックグラウンドでダウンロードしているのではないかと思われます。
ページの切り替えの速度も申し分ありません。

画面の真ん中をタップして出てくるメニューでは、前号か最新号かの切り替えに加え、明度調整、目次、共有を選ぶことができます。この明度調整がとても便利ですね。普段はちょっと暗めで作業をしていて、読む時はちょっと明るくするといった作業が、いちいち設定画面を出さずに行えます。さらに、右上には「作品情報」ボタンがあり、いつでもあらすじや主な登場人物を確認できたり、そこから「第1話試し読み」(iBookStoreへ飛ばされます)や「単行本を購入する」(講談社コミックプラスへ飛ばされます)ができたりもします。表紙に戻りたいときには左上の「表紙」ボタンで戻りましょう。


メニュー画面で一番目を惹くのは下部中央にある丸いボタンでしょうか。これはページをぺらぺらめくるためのものなのですが、ちょっと操作感が独特です。この丸いボタンが全体の中の現在のページと一見すると勘違いしてしまうのですが、実は違います。丸いボタンがあるバーの中の赤い線が、今の位置なのです。丸いボタンは左右にスライドすることができ、右側へ動かすと前のページ方向へ、左側へ動かすと後ろのページ方向へぱらぱらめくれていきます。ボタンを大きくスライドさせればさせるほど、めくる速度が上がるという仕組みです。


あとは、縦画面と横画面にも対応していて、端末を横に傾けると見開き表示になります。この見開き表示が実に良くて、雑誌のときだとグッと力を入れて開かないと隅々まで見えなかった見開き1枚絵が、継ぎ目も無くきっちりと見えるのですね。これは電子化の大いなるメリットと言えるのではないでしょうか。

この見開き表示が見やすいという1点で、個人的にはiPhoneよりもiPad miniよりもiPadでの見開き表示を推したいところです。iPhoneの縦画面でも見開きでも問題なく読めるのですが、モーニングは柱に書いてある細かいネタまで面白かったりするので、画面が大きいにこしたことはないと思うのです。ピンチ操作でスムーズに拡大縮小ができますが、個人的には読むリズムが崩れてしまうのでなるべくやりたくない作業だったりします。それと、各作品の間はページの見開きの調整のためか、「Dモーニング」と書かれたページが前後に挟まることになるので、縦表示で順番にページをめくっていくと「Dモーニング」ページが2ページ続く(前の作品の最後と、次の作品の最初のページが続くことになる)ので、これまた少し読むリズムが崩れてしまいます。もちろん、そういったことが気にならないという人も多いでしょうが、個人的にはiPadの見開きが一番読みやすいという結論に達したのでした。

ちなみに複数の端末で読む場合は、同じAppleIDを使っていたら1回の課金で全ての端末で読むことができます。新しい端末でも「購入」ボタンを押すといくつかの確認画面の後で、最新号がダウンロードできるようになっています。

週刊漫画誌ではおそらく初めてのこの画期的な試み。今ならとりあえず先週号である23号を無料で読むことができます。23号は映画化記念で「聖☆おにいさん」や、先にあげた新連載の一挙掲載が載っているので大変お得な号と言えます。是非お試し下さい。そしてどんどんダウンロードされ、他の週刊漫画誌でも同じような試みがひろがってくれたらと願ってやみません。
(杉村 啓)