『お腹を凹ませたい? だったら腹筋運動なんかやめちまえ!』は、いきなりガツンとくる。
太っているからこそ腹筋運動をやるべきではない!
腰痛だからこそ腹筋運動をやるべきではない!

じゃあ、どうすればいいのか。

必要なのは何なのか?
腹筋運動ではなく正しい腹筋の使い方だ、と本書は解く。

下腹が出ていて気になる人の場合(体脂肪率が20%を切っているのにお腹だけが出ているような場合)、まず考えられるのは内臓下垂。
内臓を支えるインナーマッスルの機能低下などによって、胃や腸が下がり、おへその下あたりがぽっこりと出てしまう。
こうなると、食事制限してもお腹は凹まない。それどころか度がすぎると、インナーマッスルも筋力低下をおこすので、“手足顔はやせ細っているのに、お腹だけぽっこりと目立つ、キューピーちゃんのような体形になってしまう”。
インナーマッスルの機能低下が原因なのに、腹筋をしてアウターマッスルを鍛えても、お腹は凹まない。


では、インナーマッスルを働かせるのに必要なのは、なにか?
正しい姿勢だ。

お腹を凹ませるだけじゃなく、女性の場合はくびれも気になるだろう。
“くびれに関しては、体脂肪率に関係なく、結構太っているのにキレイにくびれていたり、痩せているのに寸胴に見える場合が”ある。
これは、いったいどういうことだろう。
答えは、骨の問題!
土台である骨格の問題なのである。
くびれは、骨盤周りとウエストの差で決まる。

つまり、土台である骨盤が小さいと、差異も出にくい。
もうひとつは肋骨。
アンダーバストは肋骨に関連している。
肋骨の下部(ウエストに近い部分!)が開いている人は、くびれが出にくい。
手術で肋骨の下部の骨を取る、なんて荒技もあるらしい。
いやいや、さすがにそこまではできない。
って人はどうすればいいか。
“悪姿勢によって肋骨が開いていたり、背骨が曲がっていて自分でくびれを潰してしまっている場合などが”あるので、それを正すことでくびれが出現する人もいる。
(とはいえ、骨格の問題だから難しいと、本書は正直に記述している)
というわけで、ここでも重要なのは正しい姿勢である。

「正しい姿勢」というのは、こういうタイプの本を読むと、よく出てくる。
でも、できないんだもん。
正しい姿勢にしてると、疲れるんだもん。

背筋を伸ばしてって、意識して伸ばしてるうちはいいんだけど、姿勢のことをずっと意識してたら他のことは何もできなくなっちゃう。他のことを意識すると、またもとの姿勢にもどっている。

ぼくが、この本を読んで、一番おどろいたのは、ここからだ。
本書では、いわゆる「いい姿勢」を指導しない。
肩胛骨を寄せて、胸をシャンと張って、あごを引く。
「姿勢を良くしろ!」と言われてとる一般的な姿勢だ。

“このような姿勢をとっているのは身体にとって楽な状態ではなく、ストレスな状態であり、逆に肩や腰が痛くなるばかりか、お腹が出てしまう要因ともなる”!!
「いい姿勢」と「楽な姿勢」は違う
では、どうすれば「楽な姿勢」ができるのか。

立った状態から、軽く膝を曲げる。
すると、膝を伸ばしきった時より足の裏全体に体重が乗る感じがつかみやすい。
そこから膝をゆっくり伸ばしていく。


って、実際にやってみると、足の裏の感覚が薄れていく。
体重が乗っかっていた感じがなくなる。

“これはすでに足と体幹が離れてしまって、ふらついてしまっている状態”。
ダメです。

そこで、もう一度、膝を軽く曲げる。
へそをまっすぐ正面に見せるようにする。
骨盤の底辺である座骨が真下を向くようにする。
足の裏全体に体重が乗っかっている感じをつかみながら、
この骨盤のポジションを維持したまま、膝をひっくり伸ばす。


これでOK。
“足の裏を感じて、骨盤が真っ直ぐであれば、大体その上も全部真っ直ぐ乗っかりやすくなるのです。そして、この状態であれば、脚も疲れないし、腰も疲れません”。

たしかに、楽だ。
少なくとも、胸をシャンと張る姿勢より、リラックスできる。

この姿勢で立つことで、腰痛や肩こり、膝痛も改善されることが多いという。
どこかが弱いから痛むのではなくて、偏って使いすぎているから痛む。
だから、楽な姿勢で立つことで、治る。

『お腹を凹ませたい? だったら腹筋運動なんかやめちまえ!』には、“これをやると、初回でご自身の履いていたパンツがゆるゆるになって、ずり落ちてしまうくらいになり、ベルトを締め直さないといけなくなるという人が多くいます”という呼吸法のやり方も詳しく解説してある。
内臓の位置や骨格の位置を正しいポジションにもどす呼吸法だ。
やってみると、たしかに、たるんと緩んでいたお腹がすっとする感じがある。


本書の目次は以下の通り。

プロローグ 腹筋運動は裏切らないと思っていませんか?

第一章 腹筋運動はダイエットには非効率的!
太っているからこそ腹筋運動をやるべきではない
腰痛だからこそ腹筋運動をやるべきではない
よく言う腹筋がないってどういう意味?
アウターマッスルとインナーマッスルの作用

第二章 お腹が凹む、〈ウエストが?〉くびれるメカニズム
メタボ改善に腹筋運動は必要ない
お腹がでる原因は内臓脂肪
有酸素運動と食事制限
もうひとつの原因の内臓下垂
くびれは肋骨と背骨と骨盤で決まる
ただ呼吸するだけでパンツがゆるゆるに

第三章 正しく立つだけで全ての問題が解決する
人間が正しく立つのは難しい
腹筋運動をすると姿勢が悪くなる
胸を張って背すじを真っ直ぐの間違い
老化と共に身体はどんどん縦につぶれて横に広がる
正しく立ってみよう!
お腹が凹むだけでなく、脚が細くなる
腰痛も肩こりも膝痛もサヨナラ
正しく立つことがアンチエイジングになる


森拓郎『お腹を凹ませたい? だったら腹筋運動なんかやめちまえ!』は、電子書籍。通常の書籍の50ページぐらいのコンパクトさでよみやすい。お腹が出てきて気になってる人は、ちょっと読んでみてはどうだろう。(米光一成)