「事件は会議室で起きてるんじゃない! タカとユージが起こしてるんだ!」
今週発売された『あぶない刑事 全事件簿DVDマガジン』を読んで、見て、わたしゃ確信しましたよ。この2人が揃ってしまったことがもはや事件なんだと。


「踊る」復活で世間がにぎわう中、「いやいや“刑事”と言えば俺たちだろう!?」とばかりに、ダンディ鷹山とセクシー大下もまた帰ってまいりました。刑事ドラマの新機軸を打ち出した「あぶない刑事」が舞台をTVから映画に移して大暴れしたのが1987年。今年は「あぶない刑事」劇場公開25周年ということで、9月21日には劇場版6タイトル(「あぶない刑事」「またまた あぶない刑事」「もっとも あぶない刑事」「あぶない刑事 リターンズ」「あぶない刑事 フォーエバー」「まだまだ あぶない刑事」) +TVスペシャル1タイトルが一挙ブルーレイ化されるのです!

さらに、同じく25周年記念として、1986年放送のTVシリーズ第一期全51話を順次収めたDVDマガジンも今週から発売されています。隔週火曜日発売で全25巻。創刊号と次回9月11日発売のVol.2には、舘ひろし、柴田恭兵、そして脚本家と監督によるスペシャル座談会が企画されていて、これだけで見所満載です。例えば……

・「あぶない刑事」のタイトルは「刑事ワイルド&ルーズ」になるハズだった!
・舘ひろしが「あぶない刑事」のタイトルに当初難色を示し、「危険な刑事」にして欲しいと言ってきた
など、タイトル周りだけでもWiki先生をにらめっこしても出てこない情報がザクザクと。

その他、仲村トオルがフューチャーされた第2話「救出」の脚本を書いたのが、映画『ビー・バップ・ハイスクール』の脚本も手がけ、仲村トオルの魅力を知り尽くしていた那須真知子さんであった、なんてドラマファン必見の情報や、各話でタカとユージが吸った煙草と撃った弾丸の数、そしてイラスト付き「薫ファッションチェック」があったり「港署見取り図」があったりと、あぶデカファンが押さえておきたいマニアックな情報もしっかりまとめられています。
さらにDVD(第1話「暴走」、第2話「救出」)を見れば、館ひろし・柴田恭兵・仲村トオル・浅野温子の若さに驚き、木の実ナナの変化のなさにまた驚き、今は無きダンキンドーナツが描かれていたり、スタッフクレジットにはネガ編集・ポジ編集といった時代を感じさせる肩書きが出てくるなど、一気にこの25年をタイムスリップできる楽しさ満載。これが各巻に2話ずつ収録(2巻のみ3話収録)されてるなんてなんて贅沢! キザな台詞にイカしたジョーク、スタイリッシュなセンスの数々……「あぶない刑事」の魅力に時代の変化なんて関係ないねっ!

こうして改めて「あぶない刑事」を振り返ると、「踊る大捜査線」との奇妙な相関性にも気づかされます。
かたや80年代の後半からスタートし、バブルに向かう世間の風潮をなぞって、リアリティは二の次でオシャレとセンスの良さで新しさを描いた「あぶない刑事」。かたや90年代後半からスタートし、平成不況真っ只中の暗い世相の中で、リアリティの追求を目指すことで刑事ドラマの新機軸を目指した「踊る大捜査線」。ともに“刑事ドラマの常識を覆す”をテーマに描かれ始めたのに、実際にはとても両極端なドラマです。
でも、タカとユージが背中合わせに座ってコミュニケーションを取っていたように、青島俊作と恩田すみれも背中合わせに座り、生き様としての“自由”を描いた「あぶない刑事」に対し、組織からの“自由”を目指した「踊る大捜査線」と、なんだか通じる部分も出てきます。中条静夫といかりや長介、厳しくも温かく見守る2人の先達者がいい味を醸し出してくれるのも一緒です。そんな2つの刑事ドラマが時代を超えて同じ時期に話題になるのも、なんだか運命めいたものを感じます。

と思ったら、なんと以前にも一度直接対決をしているんです。それが、1998年秋、「踊る大捜査線 THE MOVIE」「あぶない刑事 フォーエバー」が同時期に劇場公開、というガチンコ勝負!
果たして結果は、興行収入101億円と日本映画歴代興行収入ランキングにおいて現在でも7位を記録するほどのムーブメントを起こした「踊る」に対して、「あぶない刑事」の興行収入は8億8000万円と大惨敗。なのに今年また、15周年にして最終章を迎えた「踊る大捜査線」にぶつける形で25周年企画を次々に打ち出す「あぶない刑事」。
またしても惨敗は目に見えているだろうに……でも、そうやって強大な相手に無謀に立ち向かって行くのが、「あぶない刑事」の、タカとユージのらしさといえば、らしさなんですよね~。

こんな風に2つのドラマを見比べてみると、これが最後! と作った「あぶない刑事 フォーエバー」の後にしれっと「まだまだ あぶない刑事」ができたように、「踊る大捜査線」もまた数年後にひょっこり復活。そして銀髪になったタカとユージが……なんて妄想も、ひょっとしたらあり得るのかも!?
(オグマナオト)