わかっちゃいたけど、とても酷かった(褒め言葉)『キルラキル』4話。
80年代にあったいろいろなギャグアニメの要素を、ギュギュッと凝縮してテンポよく並べたら、意味がわからなくなりましたという回でした。

突っ込みどころしかない回。3話がカタルシス全開なアクション回だったのに対し、今回は本当にムダな(褒め言葉)ことしかやっていません。
いやあ、これもありなんですね、キルラキル。振り幅大きすぎだよ。

●こういうのもありです
今回は最初から最後まで「ギャグ回ですよ」というのを徹底するため、キャラクターデザインもデフォルメされていました。
ところどころで動きも『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』になっているのがニヤっとさせられます。
爆発エフェクトは色つきになっていてコミカル。
トラップのめちゃくちゃさを見る限り、多分今回が『キルラキル』内でも極北中の極北回だと思われます。……いやまだわからない、油断はできない。

そもそも、今までも確かに「その建築物はおかしい」というものが揃っていましたが、今回は拍車をかけておかしい。
「NO遅刻デー」は遅刻しないための風紀委員の抜き打ち検査。無星生徒の振り分け作業です。
朝4時にサイレンが突然鳴って、無星生徒が青春をかけて登校する、一学期に一回の行事。多いよ!
生徒たちの力量を見るための風紀委員のトラップの数々。殺人観覧車、殺人ジェットスター、殺人タイガー……はいドリルもあります。どんだけ殺したいのでしょうか。っていうか死んでます。
回数多い行事なのに、このトラップをマコが見たのは初めてだそうで。
「こんなのがまだ999個も、いつもより多い!」なぬ?!
生徒会ならでは、全てのアイテムにトゲがあるのがいいですね。ボタンにトゲはいらんだろ。

ネットの感想を見ると、等身の違いに戸惑っている人も多いようです。前回の作画が凝っていたので、それも当然だと思います。
わざと等身を下げたのは、「今回はギャグ回ですよ」という明示と同時に、今回のめちゃくちゃな世界設定を笑い飛ばせるためのテクニック。リアル等身であのめちゃくちゃな罠遊園地駆けまわってたらシビアすぎますし。
『トムとジェリー』の文法です。

まあ、ギャグの解説をするのも無粋なので、ぼくの感想をひとこと。
頭悪いなー!
勢いで最後まで押し切った上で、あのラストのカットがいいんだよ。
まだ見てない人は、とりあえず「考えるな・感じるな」と言っておきます。スピード感ありすぎるので、ほっといても脳みそ持ってかれます。
思いっきりムダなことをやる姿勢、好きです。


●実はいろいろ明かされた謎
今回、地味に多くの謎が明かされた回だったりします。

1・鮮血の声は流子にしか聞こえていない
鮮血を洗濯し、アイロンをかけていた満艦飾ママ。ここで鮮血の声は流子以外には聞こえないことが判明します。
今まで一緒にいたマコにすら、聞こえていませんでした。それどころか「流子ちゃん服に名前つけてるの? もう寂しがり屋なんだから!」と言っていることからも、鮮血が動いている様子も見えていないようです。
ということは作中で描かれている鮮血のセリフも、動きも、全部流子視点。
普通の人からみたらただの服だ、ということです。
今まで流子はひとりごとを言っているように見えていたんですね。マコが鮮血じゃなく血だまりだけ見ていたのも納得。
純潔を着ている皐月様も、純潔と会話している可能性が高まりました。流子たちにはそれが見えない。

2・鮮血は着るだけなら誰でも着られる
一番驚いたのが、鮮血が流子以外の人間に着られたことでした。
条件としては以下。
・着用者の血を流し込むことで変形だけはする。
・着ることに恥じらいのない人間だけが着られる(3話の流れより)
「流子専用」として作られたわけではないのです。
「生命戦維」で作られた「神衣」は、生き物に近い存在。なのでエヴァのシンクロのように、着るだけなら拒絶はないようです。
ただし、意思を持った知的生命体なので、着ている相手に逆らうことができます。
流子は「神衣の意志で」力を貸りて、戦うことができます。
しかしそれ以外の人間の場合、「神衣の意志で」力を貸さないという選択肢もある。
着て血を吸うことはスイッチみたいなもの。それを嫌がることができるのが神衣。流子以外の人間の血は吐き出す、というのはちょっと面白い。あくまでも契約自体は流子としています。
個人的に「流子と皐月様専用の、血を認識して動く服、つまり流子と皐月様は姉妹の可能性!」とも考えていたんですが、どうやらそうではなさそう。

3・放校されると家も追い出される
登校が間に合わなさそうで、現実逃避する生徒の姿が描かれるシーンがあります。ギャグなんですが、今回最も残酷なシーンでもあります。
「ここまでで到底間に合わないと諦めた生徒たちが、明日になれば放校されて家も追い出される現実を直視できず、うつろな目をしたまま、うつろに出席をとるの」
放校はまあ、わかります。
でも、子供が学校に間に合わなかったら家族ごと町から追い出されるんですか。これはどういうことだ?
ここで注意したいのは、なぜ生徒たちはみなこの学校に執着をするのかという部分。
明らかに殺しにかかっている学校生活に血眼になり、暮らすのは古く汚いスラム街。流子が他の土地から来たことを考えたら、別の学校に行ったっていいですし、放校されて家を失ったほうがむしろ引っ越せて幸せじゃないか?
でも、彼ら彼女らは「本能字学園に通いたい」んですよね。マコのあっけらかんとした「いけなくなっちゃうよー!」理論だけではちょっと説明がつきません。
それだけ、極制服の能力は魅力的だ、というのが一つ。割とみんな野望を持って通っているんでしょうか。
もう一つはファシズム的な支配下の洗脳。一つ星なんかは間違いなくこっちでしょう。家族が銃撃戦に加わってることからも、皐月様の支配は徹底しているようです。
さらっと流されるシーンですが、このワンカットだけでギャグよりも遥かにクレイジーなこの世界が表現されています。
皐月様の思想、もっと語って欲しい。

4・この学校街の外界
とんでもない方法で街の外に放り出された流子達ですが、スラムの下は海でした。
この本能字学園と街(本能領・鬼龍院家の私有地)は、完全な孤島。
海のあたりには、マコいわく「お金持ち専用の学校直通ロープセレブウェイ」があります。
ん?お金持ち専用? 三ツ星とかじゃないんだ?
問題は「どうやってこの島に来るのか」という部分。少なくとも流子は長い橋を渡って海を越えて来ているわけです。
今回のめちゃくちゃな仕掛けのおかげで、普段一瞬しか見えないこの学校と街の全景がかなり細かく見えます。コマ送りしてチェック推奨。
しかし、第一話からでている、街の外周をまわる通路。こんなムダなもののためにあったとは……。

5・部長だから二つ星とは限らない。
トラップ開発部部長の大暮麻衣子が、前回の皐月様戦後の初の「部長として流子に襲いかかるキャラ」なんですが、彼女、無星でした。
というのも、トラップを開発するためには一般生徒に混じって偵察をする、という責務があるからでもあるんですが、今まで部長=二つ星でしたし、二話のテニス部は負けた後無星に降格しているので、かなり意外。
三話で頂上決戦を見せた後、「皐月様以下の二つ星が、流子にかなうわけないじゃん!」となっていたのを、無星でもここまで追い詰められるよ、というのを見せつける展開。いろいろできるもんです。
あれだけの殺人トラップを越えて、普通に二年甲組の生徒は登校しているあたり、無印生徒も相当なもんなのかもしれません。降格も下克上も、日常茶飯事なのかもしれません。
蒲郡に理論で言いくるめたマコが、彼に認められたシーンは要チェック。蒲郡、しっかりした相手はちゃんと認める男です。

●今日の昭和
今回はパロディてんこ盛りでした。
根掘り葉掘り、分かる範囲でほじくってみます。
全体的に「風雲たけし城」みたいですが、たけし城はあんなに死んだりしません。

・無印生徒の群れ
モブの中にさりげなーくまじっている、『ゲゲゲの鬼太郎』のネコ娘と、『ど根性ガエル』のひろし。さりげなーく『アイドルマスター』の天海春香のリボンも。

すしお 自分の性格的に「キルラキル」の世界に出てくるキャラも全部捨てきれなくて、モブキャラも修正しているんです。本来はメインキャラだけ修正すればいいんでしょうけど…。この世界にいるキャラは全員ちゃんと描いてあげたいんです。
この世界にいるキャラは全員ちゃんと描いてあげたい「キルラキル」キャラクターデザイン・すしおに聞く1(エキサイトレビュー)

もうモブキャラ出てきたら、毎回チェックしてしまうようになりました。

・満艦飾父ちゃんのカーチェイス。
壁を登って走る車、といえばもちろん『ルパン三世カリオストロの城』。
オート三輪、いいですねえ。鮮血がシートベルトしているのがかわいいです。

・トラップ
チーズトラップ……やっぱり『トムとジェリー』でしょうか。ってかなんでチーズ?なんでパイ?
わからんけど考えたら負けな気がする……。

・マコとマシンガン
「カ・イ・カ・ン」といえば『セーラー服と機関銃』。マコが言っているのがいいですね。

・銃撃の中走り抜ける装甲バス
1977年の映画『ガントレット』。警官の銃撃の中を、主人公ショックリーがバスで駆け抜けるシーンがあります。
左右にムチや混紡で殴りつける人の中を歩く拷問のことを「ガントレット」というので、流子達の状態はそのままですね。

・バスが二つ星住宅街を飛び越えるシーン
スローになる映像と音楽は『2001年宇宙の旅』。
なにがずるいって、学校の校門の隙間から差し込む光までパロディになってること。細かいよ!

・ちからパワーが!
麻衣子のいう謎の単語「ちからパワー」。
当たり前だろ!と思うんですが、『新ビックリマン』のブラックゼウスが「力こそパワー!」という台詞を高らかに言っています。

・飛び降りる麻衣子
『北斗の拳』のシンのようにヒラリと。オチもあります。シンにあって麻衣子にないのは、誇りだな。

・アッチョンブリケ
アッチョンブリケ。

・第五話タイトル。
5話のタイトルの『銃爪(ヒキガネ)』は1978年、世良公則&ツイストのシングルです。
さすがに阿久悠から離れたようですがまだわからない……。
出てくるのが極制服とかかわらない新キャラの様子。ののん様も参戦だよ!!
4話から一転して一気にシビアな展開になりそう。見逃せません。

にしても、『グレンラガン』のヒロイン・ヨーコを演じていた井上麻里奈が、今回限り(?)のネタキャラなのはもったいない……だが色んな物を全力で投げ捨てる心意気、いい。
あと、縞パンは正義ですね。


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沢井美空 『ごめんね、いいコじゃいられない。』

(たまごまご)