どこからどうみても萌えアニメなのに、人間社会の難しすぎる問題にザクザク切り込んでくる、ゆるふわ風刺SFアニメ。外側ふんわり中身はハード。

今回の話題は「マイノリティ」と「逆差別」
歩けない人魚のために予算を割くのは逆差別なんでしょうか「セントールの悩み」2話
『セントールの悩み』公式HPより

雑誌とマイノリティ


人馬型人類の姫乃は、親の知人の紹介で、ファッション雑誌のモデルをやることに。
姫乃が抜擢された理由の1つは、人馬型が少ないからだ。
この世界のファッション雑誌は、あらゆる進化形態の人類をまんべんなく扱うのが通例になっている。

で、この雑誌には蛇の形態をした人類南極人も、モデルとして掲載されている。
現実の人間の頭部をした他のマジョリティに対して、南極人は頭部が蛇で、見るからに異質だ。
「ていうか蛇人の読者っているの?」
「少しはいるらしいよ。あと蛇人は蔑称だから南極人ね」
「まあ、こういう雑誌はどの形態も平等に扱わないといけないからね」
なお、原作によると南極人読者数は14人だそうだ。


現実社会の雑誌や映画やゲームなどで、黒人・白人・黄色人等々をバランス良く取り扱うべし、という話題に限りなく近い話。
『セントールの悩み』世界は、「平等」が何より尊いとされており、法整備も厳しい。
原作では、戦隊ヒーローは代表種族から一人ずつ選出されており、試行錯誤が見られる。

南極人はこの世界においては完全に少数派。未だに「蛇人」と言う子が多いように、偏見がかなり強い。
原作では、南極人が人を食う種族、として描かれた古い映画の話も出て来る。
ようは「土人」的な扱いなのかな?

この後実際に南極人の子が学校に編入してくるはずなので、そこからが本番だろう。
なお原作15巻では、カエルの頭をした両棲類人が登場。哺乳類人と各地で激しい殺し合いをすることになる。

逆差別の逆ってどこからだ?


歩けない人魚のために予算を割くのは逆差別なんでしょうか「セントールの悩み」2話
『セントールの悩み』公式HPより。多様な種族のファッションを均等に扱う雑誌、というのは面白い

人魚型の学校に向かった姫乃たちが、水に浸かった土地の教室で交流をするのがBパート。
少数ながら陸上に住む人魚型もいる。地面は歩けないから、誰かに抱っこされて運んでもらう必要がある。

そこで開発されたのが、人魚用歩行補助機械。人馬型のような4足歩行機械に身体を突っ込むスタイル(尻尾と書かず、ヒップと表記しているのが細かい)。
600万越えと高い。でも多額の補助が出るらしい。
いいじゃん!と思いきやテレビではこう言う。

「平等補正予算の多くを人魚型にだけつかうのは、逆差別ではないかとの声もありますが」
「完全平等の達成のためにはやむを得ません。
その努力こそが、日本の進歩、ひいては世界の幸福につながるのです」


「逆差別」を明確に定義することは、かなり難しい。
人種や性や部落などの差別をなくそうとして優遇するアファーマティブアクション。これが行き過ぎることによって、優遇されていた人種・マジョリティ側が不公平な扱いを受けること。らしい。

どっちの視点から見て「優遇・冷遇」と捉えるかで、意見がぶつかりがちだ。
アメリカでは以前インド系アメリカ人が、黒人に変装して医学部に合格したという話もあった。


さて人魚型アシストマシーン、どこが問題かというと「平等補正予算」を均等に使っていない、という部分らしい。金額が数字で出るので、不公平感がわいてしまう。
これに対する意見が「その努力こそが、日本の進歩」というのは、さすがに抽象的すぎじゃないですかね。

作中では陸に住む高校生の人魚型女子の様子が描かれている。
彼女の苦労と、周囲の人のサポートを具体的に見れば、どういうバリアフリー環境を作ればいいのか、考えやすい。人魚型用の車椅子とか、色々作れそう。


逆の逆に。水の中に住む人馬型のために、何か補助金や施設は考えられているのだろうか。えーと、浮き輪とか?
地域ごとのマジョリティに対しての、暮らしづらくしているマイノリティについて、一個ずつ考えていくしかない。
ところでこの世界は「性差」はどうなんでしょうね。差別報道への法的措置ってあるのかな。
話題が仕込まれすぎていて、「それってどうなの?」の堀りがいがあるアニメです。

(たまごまご)