韓国で昆虫レストラン第1号店がオープンし、話題になっている。レストランの名前は「パピヨンのキッチン」。

年配の映画ファンなら、スティーブ・マックイーンの主演の名作『パピヨン』の主人公が、ゴキブリを捕まえて食するシーンが真っ先に浮かぶであろう絶妙なネーミングセンスだが、その奇抜さもあって、大盛況のようだ。

 メニューは、パン、パスタ、アフターヌーンティーセットなど、普通のレストランとさほど変わらない品ぞろえだが、もちろん、食材には昆虫が使われている。バッタ、コオロギ、セミの幼虫など、韓国で食用が許可されている昆虫7種類だ。

 気になる料理の見た目は、意外にも普通の料理と変わらない。昆虫を粉末・液体化して調理するため、例えばイナゴを食べたときのような昆虫独特のサクサクとした歯ごたえはまったくないそうだ。

 利用客によると「思ったよりも香ばしくて、おいしかった」など、かなり好評だ。
ネットでも「さすがに抵抗感はあるけど、見た目が普通なら一度は試してみたい」「ついに昆虫か。確かに栄養はあるかもな。味が気になる」と、興味津々な反応だ。

 実は、これまで韓国に昆虫食がまったくなかったわけではない。日本人でも知る人ぞ知る、“ポンデギ”という食べ物があるのだ。これは、カイコのサナギをゆでたり蒸したりしたもので、遊園地などでも普通に売っている。
韓国人なら誰もが一度は口にしたことがある、昔ながらの定番おやつでもある。

 韓国では今、ポンデギを超える昆虫食の実用化を目指して、研究開発が活発に行われている。すでに昆虫プリン、昆虫クッキー、昆虫羊かんなどの食品を製造している中小企業もあり、大手食品メーカーも昆虫食事業に本格的に取りかかるという。

 今夏には昆虫料理フェスティバルも開催予定で、昆虫食に対する国民の抵抗心を取り除く狙いのようだ。日本でも公開された、ポン・ジュノ監督の映画『スノーピアサー』で“ゴキブリようかん”が登場したことがあったが、まさにそれが現実になったわけだ。

 迫り来る食糧危機から人類を救うには昆虫食しかないといわれる中、韓国の専門家たちも「もうじき韓国でも、昆虫食が大衆化されるはず」と口をそろえている。
しかし、韓国の飽きっぽい国民性を考えると、昆虫料理は物珍しさばかりが先行し、一時的なブームで終わりそうな感も否めない。昆虫キムチが登場するまでになったら、話は別だが……。
(文=李ハナ)