マツダは今年、高性能版「ロードスター」となる「マツダ・スピリット・レーシング12R」を発売しました。どのようなクルマで、どんな走り味なのか、「ロードスター」を過去30年にわたって愛車としてきた筆者がレポートします。
2L エンジンを搭載したスペシャルな限定車
マツダは1月に「マツダ・スピリット・レーシング・ロードスター12R」(200台限定)と、「マツダ・スピリット・レーシング・ロードスター」(2200台限定)を発売しました。どちらも、従来の1.5L エンジン搭載の幌車である「ロードスター」に、よりパワフルな2L エンジンを搭載した限定車です。
価格は「マツダ・スピリット・レーシング・ロードスター12R」が761.2万円、「マツダ・スピリット・レーシング・ロードスター」が526.57万円。標準モデルよりも大幅に値段が上がっていますが、それでも「マツダ・スピリット・レーシング・ロードスター12R」は抽選販売となり、たくさんの応募が来たそうです。
そんな「マツダ・スピリット・レーシング・ロードスター12R」の広報車を借り出して、ワインディングを走ってみました。取材車には、特別付属品(51万1500円)に加え、7点もの専用アクセサリー(105万3822円)が装着され、まさにフルスペックというものでした。総額は866万5822円です。ノーマルの幌の「ロードスター」が295.9万円~374万円であることを鑑みれば、相当高額なモデルとなります。
低く構えた隙のないチューニングカー
借り出した「マツダ・スピリット・レーシング・ロードスター12R」を見て最初に思ったのは、「車高が低い」ということです。専用のフロント/リア/サイドの3つのアンダースカートにリアスポイラーといったエアロと、専用のサスペンション/ビルシュタイン製ダンパー、スポーツアライメントキットが車高を下げているのでしょう。
また、ホイール&タイヤには、ブラックに切削リムをあしらった専用鍛造アルミホイールとヨコハマのスポーツタイヤ「アドバン・ネオバ AD09」を装着。ブレーキはブレンボのキャリパーにローター&パッドのブレーキセットを組み合わせたものとなります。さらに、ボンネットとトランク、フロントとサイド、そしてミラーに貼られたデカールが迫力を生み出します。
ルックスは、エアロから足回りまで、しっかりと手の入ったチューニングカーであるとわかるもの。
アルカンターラをたっぷりと使った高品位な室内
“仕上がりの良い”という印象は室内を見ても同じものでした。ステアリングとシフトノブ/パーキングブレーキだけでなく、ダッシュボードとセンターコンソール、ドア内張までが赤いステッチを指し色に使ったアルカンターラ素材に覆われています。レカロのフルバケットシートも同じテイストです。
よくよく見ると、エアコンのダイヤルやドアノブまでもがマット調になっており、細かく色味を揃えていることがわかります。スポーティーかつ、高品位なインテリアと言えるでしょう。
ちなみにレカロのフルバケットシートは、しっかりとクッションがあるため、それほどカチカチなわけではありません。チューニングカーとして最低限度の快適性は確保されていました。
街中では力強いトルクと
ドッシリとしたハンドルの手応え
エンジンを始動させてみれば、スポーツマフラーによる太く低い排気音が耳に届きます。ノーマルよりは大きく、それでいて騒がしくない、絶妙に音量を抑えたサウンドです。エンジンルームの音を室内に導く、インダクションサウンドエンハンサーがよい仕事をしているのでしょう。
ゆっくりと走り出せば、そこから排気量アップの恩恵を感じることができます。ごく低回転から、明らかに力強いのです。街中を走っていると、1.5Lの通常モデルよりも、低回転のトルクが強く、少々シフトチェンジをサボっていてもスムーズに走れてしまいます。
また、ステアリングの手応えは、ノーマルよりも、ねっとりと重いものになっています。グリップ力の高いタイヤが、その変化の理由でしょう。スプリングレートが高められた足回りということで、路面の凹凸は拾いますが、よく動くダンパーが角をまるめて、不快感を抑えてくれます。ゆったりと走っている限り、ロールはほんのわずかなものしかありませんでした。
パワフルなエンジンと自在なハンドリングを楽しむ
続いてクルマをワインディングに持ち込みます。アクセルを踏み込めば、低抵抗ピストン/ピストンリング/吸気ポート形状変更と、研磨/カム形状変更/4-1形状エキゾーストマニホールドでチューニングされた「マツダ・スピリット・レーシング・ロードスター12R」の本領が発揮されます。
パワーはノーマル車の1.5Lの最高出力100kW(136PS)/最大トルク152Nmから、最高出力147kW(200PS)/最大トルク215Nmまでアップしています。パワフルというだけでなく、高回転域での伸び感までしっかりと感じられました。痛快なエンジンフィーリングです。
そしてその一方で、ブレンボのブレーキは高い制動力とコントロール性の良さを両立。ハイグリップのタイヤと、専用チューンのサスペンションは、しっかりと路面に追従しており、クルマが跳ねる不安感は一切ありません。
レスポンスよくパワフルなエンジンと、1050kgの軽量な車体、そして路面をしっかりつかんで離さない足回りが揃えば、ワインディングはまさに自由自在。人馬一体の走りを満喫することができました。
ただし、足回りのセッティングは、ワインディングでは限界にまだまだ遠いと言った具合で、サーキットでも十分通用するポテンシャルを秘めています。もしも、自分がオーナーになって「サーキット走行はしない。街中オンリーで乗る」となった場合は、サスペンションを交換することでしょう。
メーカーが用意したチューニングカーを、より自分に合わせて、細部を再チューニングする。これもチューニングカーの楽しみのひとつですから。
ノーマルの2倍以上の価格と、その価値を考える
今回、街中から高速道路、そしてワインディングと、「マツダ・スピリット・レーシング・ロードスター12R」を走らせてみて確信したのは、「このクルマはチューニングカーの理想のひとつ」であるということ。そしてノーマルをベースに、「よりスポーティに」と磨き上げていった形のひとつだということです。
ここで重要なのは、自動車メーカーというクルマのプロが仕上げたという部分です。その結果、できあがったクルマは、非常に仕上がりが良く、バランスも良くなっていました。歪なところや、我慢を強いるところが、ほとんどありません。個人やショップで同じことをしても、これほど高品位に仕上げることは、相当に難しいでしょう。
そういう意味で言えば、車体に追加の特別付属品と専用アクセサリーを合計した866万5822円という価格は、それほど高いものではないと感じます。
まさにメーカーチューンという内容には脱帽するしかありません。
ちなみに、ひとつだけ残念だったのは、このクルマにACC(アダプティブ・クルーズコントロール)が備わっていないこと。高速道路を長距離走ることの多い人は覚悟しましょう。
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