2026年5月21日、満を持して発売となったマツダの新型CX-5。同社の中核モデルとして「新世代エモーショナル・デイリーコンフォート」を掲げた3代目のデザインの狙いはどこにあるのか? 今回はそのエクステリアについて、デザインをまとめた椿氏に話を聞いてみました。


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■初代の機能性と2代目の美しさを融合する

ーーでは最初に。新型の開発に当たり、2代目である先代のデザインをどのように総括したのかを教えてください

「先代は初代に対し全高を10mm下げ、Aピラー下端を30mm後退させることで、いわゆるFR的なプロポーションを狙いました。キャビンもコンパクトになり、人間で言えば頭身を上げたような美しさを実現し、ご好評をいただきました。一方、初代で積めた荷物が入らなくなったり、進化したソウルレッドクリスタルの美しさも相まって、ガシガシ使うシーンがイメージしずらくなったという意見もいただいたんですね(デザイン本部 CX-5チーフデザイナー 椿貴紀さん(以下同)」

ーーそこで掲げたのが新型のデザインコンセプト「ウェアラブル ギア」ということですか?

「はい。新型はいわば『The CX-5』として、これまで築いてきたスタイリッシュなSUVというイメージは継承しながら、あたかも身にまとうように気楽に乗って、使って行動範囲を広げて欲しいという思いがありました」

ーーでは、その新型は魂動デザインとして最新の表現と言えますか?

「先代は魂動デザインのフェーズ2の先駆けとして『引き算の美学』を反映させ、エレガントさや上質さを狙った。一方で、マツダとしては昨年のジャパンモビリティショーで発表したビジョンクロスクーペやクロスコンパクトをフェーズ3と位置づけています。新型はその少し前、例えばアイコニックSPやEZ-60と同時期の『フェーズ2の後期』と言えるでしょうか」

ーーパッケージとしては先代を相似形的に拡大したと資料にありますが、これはデザイン部からの提案ですか?

「はい、私が決めました。先代の美しさをそのままに室内空間を拡大したいと。新型は先代比で全長115mm、全高で30mm、ホイールベースも115mm拡大していて、これまで築いてきた『CX-5』とはまったく違うクルマに見えてしまいそうだったんですね。それでもCX-5に見せるにはどうしたらいいのか、3Dデータを使って徹底的に検証したんです。その結果として今回の相似形にだとり着きました」

■「引き算の美学」はやめたのかと言われた

ーー各パートについて。まず、フロントグリル周辺の表情は先に話が出たアイコニックやマツダ6eに共通した造形ですが、これは意図的ですか?

「はい、アイコニックSPで提示した『フローティングシグネチャー』の一環ですね。
ブラックの空間にシグネチャーウィングが浮いているイメージです。ただ、黒に囲まれてしまうと従来のクロムメッキでは少し弱く見えたので、今回は金属調の塗装に変えました。じつはサイドウインドー部も、外からでも室内空間の広さを感じていただけるよう、モールをメッキではなく黒色に変えています」

ーー新型はボンネットの先端を50mm高くしましたが、これはボディの拡大に合わせたものですか?

「そうですね。新型のボディ前半部は先代とほぼ同じですが、リヤのボリュームがかなり大きくなっている。そのままではバランスが取れないので、先代のウエッジ感を抑えてさらに水平基調を強め、同時にボンネットを上げたんですね。じつは、フロントドア下のプレスラインもこのバランス取りに寄与しているんですよ。もちろん、ライバルに負けない強い顔をにしたかったという理由もありましたね(笑)」

ーー前後フェンダーなど、サイド面もシンプルな面が特徴ですが、新たに引かれたショルダーラインにはどのような効果がありますか?

「CX-5のクラスでは『中は広く、外はコンパクトに』が必須で、サイズに対するお客様の感度も高い。その限られた寸法のなかでSUVらしい立体感を出すためにシャープな『折れ』を入れました。先代は前後フェンダーで別々のラインでしたが、新型はボディを囲むような1本のラインとしています。明快なラインを設けたことで『引き算の美学はやめたのか?』という声もありますが(笑)、集約された1本によって造形が整理され、ボディ全体を引き締める効果もあると思っています」

ーーリヤパネルでは「キャラクターラインを廃した」ことが特徴ですが、同時にリヤウインドー下にピークを持ってきた造形も先代と異なります

「とりわけアメリカ市場ではタイヤの踏ん張り感が求められますが、新型はコーナーのキャラクターラインを廃することでホイールアーチまでを大きな面で構成し、これがワイド感やスタンスのよさを向上させています。また、リフトゲード部を大きくえぐり、MAZDAのバラ文字の上のシャープなエッジからの流れがホイールアーチまで続いています。これもまた強い踏ん張り感につながるんですね。
リヤはいろいろな要素がぶつかって喧嘩しがちですが、今回はかなり整理できたと思います」

ーーでは最後に。新型は最新の魂動デザインの表現であると同時に、マツダの最量販車という重要なモデルです。これを両立させるには何が必要でしたか?

「初代から2代目へ乗り継いでいただいたお客様も多く世界中で愛されているモデルですので、やはりプレッシャーは大きかったですね。当然いろいろと悩みましたが、結局プロダクトデザインはバランスが重要であると。人がしっかり乗れて、しかもアートのように美しいという基本に立ち返りました。想像以上に難しい仕事でしたが、最終的には高い次元でまとめることができたと思っています」

ーーその点でも魂動デザインはブレなかったということですね。本日はありがとうございました」

〈文=すぎもとたかよし〉
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