北朝鮮のミサイル発射が、かつてとは違う様相を見せている。

韓国軍によると、北朝鮮は20日、平壌付近から日本海に向けて短距離弾道ミサイル約10発を発射した。

約300キロを飛行したという。北朝鮮は6日と12日にも弾道ミサイルを発射しており、今月だけで少なくとも12発程度を撃った計算になる。20日の発射は米韓合同軍事演習「乙支フリーダムシールド(UFS)」の期間中だった。

北朝鮮によるミサイル発射自体は珍しくない。しかし、金正日政権時代と比べると、その「撃ち方」は大きく変わった。

かつて弾道ミサイルは貴重な戦略兵器であり、新型兵器の性能を確認する「試射」の意味合いが強かった。金正恩政権では2010年代後半から発射回数が急増し、近年は複数の移動式発射台から多数を短時間に撃つ訓練も繰り返している。今年3月にも米韓演習中に10発以上を発射した。

つまり北朝鮮は、ミサイルを「開発する国」から「大量に運用する国」へ変わりつつある。

今回の連続発射には、もちろんUFSへの牽制という意味がある。トランプ米大統領が演習縮小を指示した後も、北朝鮮は米国の「敵視政策」は変わっていないとの立場を崩していない。約10発の一斉発射には、多少の譲歩では軍事路線を変更しないとの意思表示も読み取れる。

ただ、それだけでは説明できない。

北朝鮮は6日、12日、20日の発射について国営メディアで異例の沈黙を続けている。12日のミサイルは約700キロ飛行し、通常とは異なる軌道だったとされ、米戦争研究所(ISW)は新たなミサイル技術を試している可能性を指摘している。

さらに見逃せないのがウクライナ戦争だ。北朝鮮製弾道ミサイルはロシア軍によって実戦使用され、北朝鮮のミサイル部隊そのものがロシア西部に展開したとの情報もウクライナ側から出ている。

実戦で得られたデータを兵器改良に反映し、北朝鮮で試験し、再び実戦に送り込む――そんな循環が成立している可能性すらある。最近の発射についても、ロシアへの軍事輸出と関係する改良試験ではないかとの専門家の分析がある。

そして20日の約10発は、個々のミサイルの性能試験というより、部隊が多数のミサイルを短時間に運用する訓練だった可能性がある。

金正恩総書記が目指しているのは、数発の「虎の子」で敵を威嚇する軍隊ではないのだろう。必要なら数十発、さらにその先には核弾頭を搭載したミサイルまで大量投入できる軍隊である。

北朝鮮のミサイル問題は、もはや「次は何を試射するのか」だけを見ていては実態を捉えられない。「どれだけ大量に撃てるのか」。

金正恩時代の北朝鮮は、危険な意味での「ミサイル乱射」時代に入りつつある。

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