『VIVANT』シーズン2と『Tシャツが乾くまで』(ともにTBS系)が、TVerお気に入り登録数345万と140万という驚異的な数字を叩き出し、夏の2大ヒットドラマになっている。前者は壮大な国家規模の物語で、後者は夫婦の私的な事情を巡る物語と、それぞれ全く別ベクトルだ。
なぜここまで方向性を異にする2作が同時に人々の熱狂を生んでいるのか。

【関連写真】日曜劇場『VIVANT』シーズン1の場面カット
 
この2作が強い理由は、ジャンルは正反対なのにどちらも次週が見たくなる仕掛けが非常に強力だからだ。

『VIVANT』は国家規模の事件を追うドラマで、前作が大きな話題になっただけに、シーズン2では最初から何を仕掛けてくるのかという期待値もあった。

主人公は自衛隊の非公認部隊「別班」の工作員・乃木憂助(堺雅人)。前作でテロ組織「テント」の創設者で父のノゴーン・ベキ(役所広司)との戦いを終えたが、再び別班に緊急招集される。しかし、5人の別班員が謎の部隊により拉致される事件が発生。

乃木が国を跨いで事件を追跡すると、前作からの盟友とも言うべき公安の野崎守(阿部寛)が、5人の別班員の情報を中国の裏組織「シンシー」に売っていたと判明する。野崎に裏切られたと思われたが、それは潜入捜査だった。乃木が野崎の本当の目的や、彼とシンシーとの関係性を追う中で、物語の中核をなす5年前の出来事が紐解かれることになる。

あえて物語や組織、人間関係を複雑にし、多くの伏線を散りばめているため、視聴者は自分が観たこと、理解したことへの答え合わせをするようにSNSに飛びつくことになる。視聴者の「考察する行為」までコンテンツにしているとも言えるだろう。

一方、『Tシャツが乾くまで』は人間の秘密を追う物語で、スケールは『VIVANT』と比べ極めて小さく個人的だ。
瀬尾咲子(蒼井優)と夫の瀬尾充(松山ケンイチ)、園田樹生(中島歩)と妻の園田あずさ(夏帆)という2組の夫婦の愛と秘密、喪失と再生を描く心理ドラマとなっている。

それぞれ幸せに暮らしていたはずが、充とあずさが旅先と思われる場所で事故に遭い、充は行方不明になり、あずさは帰らぬ人となる。似たような境遇で残された咲子と樹生は協力し充の行方を探すが、樹生は充とあずさは不倫関係にあったと断じていた。

失踪した充だが、毎話少しずつ咲子に連絡があるなど生存は確認出できた。ただ、どこで何をしているかが最大の謎だった。1年経って充は戻り、咲子と樹生に対し、失踪癖がある自分にあずさがついてきただけで、不倫ではないと明かす。だが、そこには不倫以上に深い心の結びつきがあった。ショックを受ける咲子と樹生だが、彼ら自身もほんのりイイ感じになっていたのは事実で、そこを「どの口が」とも思えるが充に問い詰められる。

『VIVANT』と比べればこじんまりとした話だ。だが、視聴者の視点は主に蒼井演じる咲子または中島演じる樹生に落とされているため、2人に感情移入し、とんでもない大事件に巻き込まれている感覚になる。充とあずさの当時の行動も、帰ってきた充の身勝手さも、どんな凶器より鋭利に感じられるし、それでも真実を知りたいと思ってしまう。

「この人は本当は何を考えているのか?」「この夫婦は本当に幸せだったのか?」と、視聴者が登場人物の心を推理する構造になっている。


この2作品は同じ方向を向いていない。『VIVANT』はスケールの大きな事件の謎を扱い、次に何が起きるかに焦点が当たる。『Tシャツが乾くまで』は身近な人間の繊細な心の謎を扱い、過去からの心情の変遷を追うという違いがある。

だが、どちらもSNSで語りたくなる作品で、「阿部寛は本当に裏切ったのか?」「松山ケンイチは本当に死んだのか?」など、放送後に様々な意見が飛び交う。ネット時代のドラマとして吸引力が非常に高い。

それを支えているのは、「この役者を見たい」と思わせる豪華キャストだ。『VIVANT』は堺の2つの別人格を操る様が職人芸の域で、阿部、二宮和也、松坂桃李と主演級がズラリ。『Tシャツが乾くまで』も、蒼井、松山、夏帆、中島、高橋文哉と、心の機微や揺らぎを緻密に表現する演技巧者が揃っている。

全く別ベクトルながら、どちらも本格演技派の真骨頂が見られる上に、受け身で見るだけでは終わらず、誰かに話したくなるドラマだ。この夏の2大ヒット作が熱狂的に支持される最大の要因は、SNSでの発信を含めた能動的な視聴体験を提供出来ているということだろう。

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