【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#109


『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』(1968年11月22日発売)⑨


  ◇  ◇  ◇


■『ピッギーズ』


 今回はLP盤のB面、つまり「2枚組の1枚目の裏面」に並んでいる3曲。まずはジョージの曲だ。

タイトルは「PIG」の複数形=「豚ども」である。


『ホワイト・アルバム』にジョージの曲は4曲。LPでいうA・B・C・D面、それぞれに1曲ずつとバランスがいい。ちなみに、すでに紹介済みの『ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス』はA面収録。


 人間を豚になぞらえた皮肉っぽい歌詞は、さすが『タックスマン』(66年)を書いたジョージらしい。子豚が労働者、親豚が資本家という感じ。歌詞の最後「豚がベーコンを食べる」という強烈な「共食い」の描写はジョンのアイデアという。【オリジナル記事で試聴する


 サウンド的には、キラキラしたハープシコード(チェンバロ)の音が曲の顔になっている。バロックでよく使われる楽器で、この曲も全体的にバロック調なのだが、中間部(試聴リンク再生時間「0:47~」)で、ハープシコードがロックっぽいフレーズを弾くところが、妙にかっこいいではないか。あ、これぞ--「バ・ロック」だ。


■『ロッキー・ラックーン』


 数少ないジョージの曲と、限りなく少ないリンゴの曲にはさまれているのは、ポールが左手でチョコチョコっと書いたような曲である。あ、ポールは左利きだから右手か。


 カウボーイ映画のパロディーのような曲。主人公ロッキーが恋人を奪った男を撃とうとするが、逆に撃たれてしまうという、どこかニューシネマっぽい内容。


 聴きどころは、こういう何げない曲を何げなく歌うときのポールのボーカルが素晴らしいということぐらいか。


 ちなみに、ビートルズがハーモニカを使った最後の曲らしい(ただし、ハーモニカ付きで先に録音されていた『オール・トゥゲザー・ナウ』は翌69年の発表)。


■『ドント・パス・ミー・バイ』


 ビートルズ時代にたった2曲しかない「作詞・作曲:リチャード・スターキー(リンゴの本名)」のうちの1曲だ。


 そのせいか、びっくりするぐらい単純な曲。キーは、いちばん弾きやすい「C」で、さらにコードも主要3和音「C」「F」「G」しか出てこない。今日初めて楽器を触る人でも弾けるのではないか。


 すでに何度か書いている通り、このアルバムのレコーディング中にリンゴが蒸発するのだが、これは蒸発前の曲。


「ドント・パス・ミー・バイ=僕を見捨てないで」という歌詞は、その後の展開を予言しているようにも聴こえる。


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。

主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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