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2026年8月9日(日)、“Yuki Kajiura LIVE vol.#22 ~precious pieces~”ツアーが千秋楽を迎えた。コンポーザー梶浦由記が自身の作品を演目とするライブ、“Yuki Kajiura LIVE”(以下、“YKLIVE”)を行い始めて18年。

vol.#22となる今回のツアーは、ボーカルにKAORI、YURIKO KAIDA、Joelle、LINO LEIA、EMIKO(鈴木瑛美子)、ゲストボーカルとしてYUUKA(南里侑香)が参加。梶浦の信頼篤いミュージシャンで構成された「FRONT BAND MEMBERS」(以下、FBM)(ギター:是永巧一、ドラム:佐藤強一、ベース:髙橋“Jr.”知治、バイオリン:今野 均、フルート:赤木りえ、パーカッション:中島オバヲ、マニピュレーター:大平佳男)と共に、7月4日(土)のフェスティバルホール(大阪)を始まりの地に、昭和女子大学人見記念講堂(東京)を経て、大宮ソニックシティ(埼玉)の最終公演に辿り着いた。8月23日にはオーチャードホールで追加公演として“Yuki Kajiura LIVE vol.#22 ~precious pieces~ーチャード special”も行われたが、近年、“YKLIVE”は「多幸感」がキーワードとして挙げられるライブとなってきた。女性ボーカリストたちによる競演をはじめ、ここでしか得られない音楽をもたらす“YKLIVE”のツアー最終日を振り返る。

TEXT BY 清水耕司

久々のYUUKAを擁してのアカペラ曲スタート

ステージ上にシルエットが集うと公演の始まりを知った客席からは拍手が。その客席に届けられるYUUKAの歌声、そして支え、かしづくコーラス。合わさった六声によって、梶浦曰く“初々しい恋の曲”、「silent moon」が会場に響きわたっていく。YUUKAを囲む形でJoelle、YURIKO KAIDA、KAORI、EMIKO、LINO LEIAが並ぶ。ステージ上には歌姫のみ。長く“YKLIVE”を共にしてきたFBMのバンドメンバーはおろか梶浦さえも存在しないアカペラ曲でのスタート。18年を経た“YKLIVE”が示した新たな幕開けであり、訪れたファンたちに感動を与えるものだった。

歌い終わった6人は拍手を浴びる中で礼をし、上手と下手、二手に分かれて舞台袖に消えていく。入れ代わるように「Crush」の冒頭部分、overtureと共にステージに現れた演奏者たちが持ち場についていく。

紫色のライトが照らす中でカウントを刻むハイハット。小気味の良いカッティングを鳴らし続けるギター。ステージ中央でピアノの前に座る梶浦を取り囲むように、Jr.、佐藤、オバヲ、今野、是永のFBMが左から順に位置している。彼らの頭くらいの高さの位置には一段高いステージがあり、その中央にはフルートを手にした赤木りえの姿が。大きなボタンをあしらった上着にゆったりとしたズボンを履き、頭には赤いベレー帽をかぶり、エドゥアール・マネの「笛を吹く少年」と見まごう装い。美しい旋律も相まって絵画や画集の世界にいざなうような非現実感をまとっていた。曲のラスト、赤いライトがステージを覆うと赤木は去り、Joelle、YURIKO KAIDA、KAORI、LINO LEIAによる「Pandora hearts expanded」が始まる。『PandoraHearts』から選ばれた2曲は共に力強くリズムを刻み、音楽の波が客席を進攻していく。やがて訪れた四声でのフィニッシュ。ここでLINO LEIAが去り、ピンクのライトの中、ピアノソロが流れるとセンターに立ったKAORIが「everytime you kissed me」の口火を切った。左に立つYURIKO KAIDAと慣れ親しんだデュエットを重ねたのち、今度はJoelleと組むKAORI。Joelleのソロを間に挟みながら、KAORIはYURIKO KAIDAやJoelleの歌声と絡みながら情感たっぷりに歌声を響かせる。
代わる代わる訪れる、個性豊かな歌声の競演は“YKLIVE”でしか摂取できない時間。聴き惚れているとやがて背後から現れたピアノがラストを締めた。
鍵盤から指を下ろした梶浦は客席に顔を向け、「ようこそいらっしゃいました」の第一声。そして、“YKLIVE”が久しぶりの方、すでに今回のツアーに足を運んだ方、あるいは初参加という方、その誰もが「最後まで心行くまで、本当に好きなように音楽を楽しんでほしい」という気持ちを表明した。続いて、梶浦由記のソロプロジェクトであるFictionJunctionや参加する歌い手について言及したあと、話題はTVアニメ『魔法騎士レイアース』のことに。2026年10月より放送開始する同作品で梶浦は、尾澤拓実や寺田志保と3名体制で劇伴を担当しているが、そのなかで「レ↑イアース」の発音が「レイア↑ース」だと知ったと話す。横で立つKAORIはリアル世代だったらしく、楽しそうに梶浦の発音をチェック、「レイアース」のお手本を聞かせる姿は楽しそうだった。こういった和気あいあいとした時間に、“YKLIVE”の気の置けない一座としての一面を感じる。次曲はその『魔法騎士レイアース』から。まずは、PVなどで公開されてはいるものの放映前ということで特別に許可をもらった「レイアースのテーマ」。ドラムのフロアタムやパーカッションのタムがリズムをとる中、輝く歌声と清らかな弦の旋律が高揚感を与え、フィニッシュへは雄大さを伴って至り、アニメへの期待を高める時間ともなった。続いて、2025年に配信されたアプリゲーム『魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra』の主題歌、(9月2日リリースの「彼方」のc/wとして収録)の「lighthouse」。
YURIKO KAIDAとKAORIがフルートと共に先鞭をつけたのち、メインボーカルであるLINO LEIAが歌い始めた。LEIAとYURIKO KAIDAの清冽なボーカル、KAORIやEMIKOのコーラス。2番に入るとLINO LEIAはKAORIと組みつ離れつ、さらにEMIKOも加わり、『まど☆マギ』を体現するようなドラマチックな楽曲を4人で歌い上げていく。
ドラムスティックのカウントから梶浦のピアノが入り、ステップを踏むようなそのメロディに今野がバイオリンを重ね、佐藤はハイハットの音色を散らしていた。そして上段のステージ中央に現れたYUUKA。歌うは、TVアニメ『.hack//Roots』のオープニング主題歌「Silly-Go-Round」。下ステージに並ぶJoelle、YURIKO KAIDA、KAORIも声を合わせ、手振りを交えながら歌う4人の姿に会場も追随。大きく観客が盛り上がったあと、YURIKO KAIDAとKAORIのコーラスから「約束」が始まる。高揚感溢れるギターのリフ、バスドラとハイハットが刻むAメロ、バンドらしいサウンドからYUUKAの歌声が浮かび上がってくる。やがてYUUKAは上手側の階段を下り、センターに歩み寄ってピアノと重なる位置に立った。YURIKO KAIDAとKAORIのコーラスが飛び交い、青い光に照らされたステージでYUUKAが熱唱するとライトも情熱の光に変わっていた。

演奏後、梶浦がYUUKAを会場に紹介する。

その後、この日の「お題」が「あなたが思う名言」「座右の銘」であると発表。“YKLIVE”では出演者の人となりを知ってもらうため、日替わりで梶浦がトークテーマ=「お題」を用意、各出演者から回答を聞き出していく。回答者の1人目となったYUUKAの答えは、普段から自身がよく使う「大丈夫、大丈夫」の言葉。「誰かに言ってもらえるのも」嬉しいが、「緊張したり不安になったりしてる時」は自分に言い聞かせる気持ちで使っているという話に。その答えが気に入った梶浦は「私も使おうかな」「大丈夫、明日には曲が書ける」と継いでいた。次に梶浦が告げた曲名「ピアノ」。YUUKAと梶浦の2人で生み出す空間を堪能できる面もあれば、プレイヤーとしての梶浦が色濃く感じられる曲でもある。たった2人が作り出す珠玉の音楽に観客は酔いしれ、聴き終えると大きな拍手を贈った。が、2人が一体となった空間はまだ終わらず。初めてFictionJunction YUUKAとして世に出た楽曲「暁の車」を続ける。ピアノソロからYUUKAのソロへ繋げられ、23年という年月を円熟の期間に変えながら表現力を増した2人のデュエットに魅了される。2番からはバンドやKAORIに下支えされ、観客が運命の大きなうねりさえも感じるなか、切ない鈴の音色が散るラストへ。
右半身が濃い影となるように赤いライトがYUUKAを照らしていた。

次のMCで梶浦は歌姫たちに「お題」を提出。KAORIはリハーサル中に自分を鼓舞した「優秀Junction」、YURIKO KAIDAは3年続けた手話の話を引用しながら「継続は力なり」、Joelleは平静さを失わないために「動じない」「なーんてね」を挙げていく。それぞれの答えを聞き、梶浦はYUUKAが答えた「大丈夫」にも通じる気がするという感想を。続いて、FBMからの答えを梶浦が代読していく。髙橋が挙げたのは、ザ・ビートルズのアルバム『Abbey Road』に収録された「The End」の一節「and in the end the love you take is equal to the love you make」。梶浦は紹介しながら、「この曲は無性に感動するんだよ」と興奮した様子を見せ、ピアノ付きで口ずさむなど、ビートルズ好き、ポール・マッカートニー好きの一面を見せる。その後、佐藤は「大勢に影響なし」、中島は横山やすしの言葉という「譲り合う心がなくてどつきあい」、今野は「人間万事塞翁が馬」、そして是永は「どんな難題も意外な解決策があるはず」を挙げた。赤木りえの、江戸川乱歩の「うつし世はゆめ よるの夢こそまこと」を読み上げた梶浦は共感を示し、自身が好きな小説『ホテル・ニューハンプシャー』内に登場する「Life is a fairy tale」のセリフを引用してもいた。マンガ『ONE OUTS』から「可能性が低いとはつまりゼロじゃない」という台詞を選んだ大平のあと、最後に梶浦自身は、ローマ教皇のヨハネ・パウロ二世による「The future starts today, not tomorrow」を「最近ずっと大事にしている言葉」として挙げた。今現在、仕事場のトイレにはその言葉がプリントされたポスターが貼られており、「未来は今日始まるんだから今日仕事しよう」と、怠け心に対する戒めにしているほどだとか。

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後半戦は7曲連続から演者への梶浦の熱い想いまで

その後、話題は映画『魔法少女まどか☆マギカ ワルプルギスの廻天』について。すでにPVで一部を聴くこともできる主題歌「彼方」、そして同作の劇伴から1曲を披露してくれるという。

「彼方」は楽曲の根幹を成す“さようなら さようなら”のEMIKOの歌い出しをソロでスタートさせたのち、歌姫が次々と声を合わせていく。サビではLINO LEIAが高らかに歌声を響かせ、さらにその厚みが増していく、それは梶浦音楽の特徴でもあり、同時に妖美な多面性をもつ『まど☆マギ』の世界観をなぞっているようでもあった。やがてEMIKOが主メロで合流し、壮大な五声へと育つと、少女たちが光り射す方へ歩みゆく様を賛美する光景が浮かび上がるようでもあった。

アラビアンな雰囲気からの劇判曲「M-6」は、冒頭からYURIKO KAIDAがハイトーンで『まど☆マギ』らしい不穏さを表現。ライティングもそれに合わせて赤から紫へと変化する。ステージ上で1人スポットを当てられた今野が緩やかな時間をもたらすも、すぐさまライトは目まぐるしく色を変え、人は赤く、セットは青く照らし出す。楽曲と相まって会場には焦燥感が満ちていくと演奏の熱量は一層上昇を見せ、是永のギターソロ、YURIKO KAIDAの高音コーラスが観客の脳裏に場面を映し出していった。
さらには“YKLIVE”の代表的なインストゥルメンタル曲である『まど☆マギ』のTVシリーズの劇伴曲「Numquam vincar」を披露。vol.#15や#16といったSoundtrack Specialではアコーディオンを伴って戦闘のもの悲しさを増していたが、今回は原曲の激しいバンドバージョンを基調に高音コーラスが清廉さを醸し出していた。激しくフロアタムが鳴らされ、バイオリンが駆け出すとギターが加わり、演奏が会場を大きく盛り上げると、さらに続く「black rose」が熱狂を加速させる。ステージ中央上段に立ったEMIKOがエスニックなメロディを歌い始めると拍手の中でバイオリンのイントロが連なる。歌姫達はEMIKOの歌声に次々と自身の声を寄せていく。歌詞のないヴォカリーズ部分でも野性味溢れる歌唱で聴く者の心を刺激するEMIKO。途中、上手側の階段を下りてくると各歌姫と手を繋いではターンしながら歌うなど、EMIKOと歌とパフォーマンスの両面で躍動していた。ラスサビ、「最後まで楽しんで!」を5人で響かせたあともEMIKOはフェイクで会場を沸かせ、楽曲を締める。

間髪入れずにKAORIがスタートさせたのは「from the edge」。LiSAをフィーチャリングした人気曲をEMIKOと力強くデュエット。そのエネルギッシュな歌唱は今後の“YKLIVE”でも大きな魅力になるだろうと思わせる。2番でEMIKOが“優しさとなれ合いたくはない”と歌えば、ユーティリティシンガーのKAORIが高音で激しく寄り添い、EMIKOも猛々しく低音を突き進む。間に置かれた静寂のバイオリンを挟み、ラストスパートをかけると観客は、YURIKO KAIDAとJoelleが視線を交わしながらコーラスするのを眼福としながら最後の熱唱を受け取った。だがハイハットが高らかに鳴り、サウンドエフェクトが流れてくるとすぐさま歓声とクラップ。「stone cold」ならば条件反射的に体が反応を見せる。KAORIがリードするなかでLINO LEIAとEMIKOは跳ね、歌姫たちはポジションを変えながらのサビを歌い上げていく。負けじと観客も手振りで追随。間奏でKAORIはそんな観客たちの熱狂に喜びの反応を見せていた。曲が最終局面を迎えるとKAORIは、2度「stone cold!」と熱唱する箇所で会場に向かって「ご一緒に!」と叫ぶ。2つ目の「stone cold!」で4人のコーラスに乗る会場の声。クラップを合わせる観客たちを前に、楽曲は高音のコーラスと楽器陣によるフィニッシュを迎えた。
7曲連続演奏のラストは「nowhere」。バスドラがリズムを刻んでイントロを繰り出すと会場は聴き慣れたギターソロと「ヤンマーニ」に熱狂を隠せないクラップ。ステージから送り出された定番曲を後押ししていく。今夜、歌の始まりを担うのは当然YUUKA。高段のステージに再登場するとリリースから20年以上の蓄積を熱を帯びた歌で表現する。バイオリンソロを携えながらの2番でYUUKAは下のステージに下り、センターに合流。ヤンマーニをステップに間奏に入ったところで客席が、ギターソロに合わせて大きく声を挙げる。するとYUUKAも「もっともっとーっ!」「まだまだいくよーっ!」と煽りながら、ヤンマーニやKAIDAのコーラスを背負ってラストのサビを駆け抜けていく。
最後は「せーの!」とYUUKAのジャンプで楽曲がフィニッシュすると会場は割れんばかりの拍手が響く。梶浦から「ありがとうございます」との言葉が出たあと、「nowhere」について、アニメ『MADLAX』のオープニング主題歌用に制作したものの楽曲を気に入った真下耕一監督が戦闘曲に変更。オープニング主題歌の「瞳の欠片」は代わりに改めて書き上げられた楽曲だったというエピソードを紹介した。今度はライブ最後の曲となるアニメ『ツバサ・クロニクル』の挿入歌「ユメノツバサ」について。レコーディング時、「ルーズソックス履いて、高校の制服を着て」現れたKAORIをすごく覚えているという話をするとKAORIも照れくさそうな表情に。楽曲に関してはこちらも予定変更があり、英語版をレコーディング後、アニメ制作サイドからの要望で日本語版を制作、主人公であるサクラ役の牧野由依が歌唱することになり、その後、FictionJunctionとしてKAORIがセルフカバー、という過程を紹介した。そのうえで、「サビが何度かありますし、すぐに覚えられる気がしますので口ずさんでいいですよ」「間違えたら、『今俺はハモってるんだ』という気持ちでいれば大丈夫。世の中には色んなハモがありますから」と会場に呼びかけた。
ドラムとギターと共に歌い出すKAORIの伸びやかな歌声。ロックバラードとしても逸品であるアニメ「ユメノツバサ」が、BメロのEMIKO参入で艶を増し、また異なる様相を映し出していく。サビに至れば5人の歌姫の声に合わせて会場は優しく手拍子を乗せ、KAORIも左、中央、右と聞き惚れる観客を確認するように指を差していく。曲の最後の“La La La”でも会場は声を合わせ、歌姫とプレイヤーと観客がさらに一体感を増していく。積み重ねてきた歴史を歌い終え、KAORIがどこかしら安堵の表情を見せるなか、梶浦からは「本当にありがとうございました」の言葉が発せられ、ステージ上の音楽家たちはステージを去っていった。
その後、大宮ソニックシティ 大ホールをアンコールの拍手が埋め尽くす。やがて「Prologue」が流れ始め、賛美歌を思わせる美声の中でそれぞれのメンバーがステージに戻ってきた。アルバム『PARADE』では「ことのほかやわらかい」の導入部的役目も担っていた楽曲だが、今回はアンコールのイントロダクションとして“YKLIVE”の「テーマソング的」ポジションの「Parade」に繋げる役割。Joelleが麗しい歌声で「Parade」を緩やかに進めていくと、この時間が永遠に続くと信じたくなる。6色のライトが色鮮やかにステージを染め上げる中、異なる歌詞による2ラインが会場に流れていく。だが、“一人で歌”われていた高低の旋律が重なって1列となり、歌声のパレードと化していく。終わりが近づく頃にライトは消え、喜びに満ちていた空間から色が失われるも、“祝祭の歌声 空に届け”に差し掛かるところでまた色を取り戻し、ことほぎの空間が生まれ出でていた。

演奏後、アンコールに対する礼を述べつつ、梶浦は続く「引き出しで発光している」について教えてくれる。「メロディの断片、歌詞のかけら」は4、5年前からあったものの男性ボーカルが歌うイメージだったため、完成せずに放置していたが、改めて曲を書き進めるうちに「KAORIさんに歌ってもらいなさい、と神様」から告げられ、その方向のままに歌詞も完成させたという。歌詞は、梶浦にしては珍しく「女々しい」内容となっており、基本的に創作。梶浦自身は「絶対うしろ髪を引かれない人」で、思い出は大切にするものの、「ずっと抱えていると心がいっぱいになっちゃうので引き出しに全部しまって」おくタイプ。人生の最晩年を迎える頃になったら「1つずつ並べて、私の人生なかなかのもんだったな」と振り返る予定だとか。もちろん「まだ早い」とも付け加えたあと、演奏が始まった。つま弾かれるギターのメロディがメロウなポップロック。当て書きされただけあって、昨年デジタル配信されて、初披露は前回の『vol,#21~60 Songs~』という新曲を高い完成度で酔わせてくれるKAORI。幅広く豊かな表現力で力強く歌い上げていく。
最後のMCでは、「彼方」の先行配信やCDリリース、先日行われた『〈ワルプルギスの廻天〉』の舞台挨拶、『魔法騎士レイアース』の放映開始、“YKLIVE”のアジアツアーなどの情報を改めて告知。さらには新情報として、来年8月から9月にかけて大宮ソニックシティ、日本特殊陶業市民会館、初となる東大阪市文化創造館、昭和女子大学人見記念講堂で開催される“YKLIVE vol.#23”の開催決定を発表。会場に集まった人たちを大いに喜ばせたが、梶浦も「そんなお知らせができたことが嬉しい」「千秋楽が終わるのはちょっと寂しいんですけどちょっと寂しくない」「これでMC終わりでいいなと思うくらい」と話す。また、例年、梶浦の誕生日である8月6日頃と“YKLIVE”が重なっていたが来年は少しずれるため、今まで「やったことがない」誕生日イベントについて「何かできたらいいな」という話も出たので期待したい。

フィナーレが迫るなか、いつものように梶浦は、観客は大勢いるうちの1人ではなく、「たった1人のあなた」であると説く。かつて「ワクワクしながらコンサートに通った、その時の私が蘇ってくる」と自身を投影しながら、「音は誰かが受け取ってくれて初めて音楽になるんだと思っています」「どの曲もお一人お一人受け取ってくださったものが全部違うはずなんです」と感謝を述べていく。「分け合おうと思っても分け合えないからこそ音楽は素晴らしく」「演奏した1曲1曲が(聴く人の中で)全部違う音楽と」なり、会場を訪れた2,500人分の曲と化しているという話も。そして「これからもあなたの心の中に届く曲を作れたら」「その曲を引っ提げて来年またライブをやって、もしあなたが座ってくださって、音楽っていいなって一瞬一秒でも思ってくださったら生まれてきて良かったなって思います」と続けた。

梶浦の言葉に癒されながらも「楽しいツアー」のラストに寂しさを感じざるを得ないなか、ラストソングとして会場に届けられたのはFictionJunction YUUKA名義で世に放たれた「angel gate」。会場全体で分かち合う、”私が今ここにいることを喜びだと思いたい“という歌詞。メインボーカルのYUUKAを取り巻く他の歌姫たち。コーラスや別メロディなど歌声が次々と重なり、合わさり、また離れていく。そうして1つの楽曲が織り成され、やがて辿り着いた終着点に立つのはYUUKA。スポットを浴びながらフィニッシュを歌い上げ、梶浦がピアノでリードしつつFBMと楽曲を収めた。会場から万感の拍手が浴びせられる中、出演者全員がステージ前方で手をつないで並ぶと、梶浦はマイクを通さずに「(観客である)あなたが加わってくれたから私たちのパレードが完成し、今日の千秋楽、幸せなライブになりました。一緒に音楽を作ってくださった、そこに座ることを選んでくださったあなたに。本当にありがとうございました!」の言葉と礼を会場に送り、ライブは終わった。
20年近い継続の中にあり、EMIKOのレギュラーメンバーとしての初参加、「彼方」や「引き出しで発光している」といったレパートリー増加など“YKLIVE”も少しずつ変化を見せていく。だが、最も大きな変容はライブ参戦者における幸福度の増加に他ならない。梶浦自身もライブを「幸せな時間」と称し続けているが、楽曲の性質や曲調、盛り上がる云々といった次元を超え、梶浦サウンドやコーラスワークを主体とする良質な音楽を生で味わうことは幸せをもたらすと気づかせ、根付かせる場であり、時間であった。“vol.#22 ~precious pieces~”としては10月31日の台北を皮切りに、香港、ソウル、シンガポールを巡るアジアツアーも控えているが、発表もあったように来年開催の“vol.#23”も決まっている。まだまだこの幸せなパレードは続くということが喜び以外の何物でもない。

Yuki Kajiura LIVE vol.#22 ~precious pieces~
2026.8.9@大宮ソニックシティ 大ホール

〈セットリスト〉
M01. silent moon~overture
M02. Crush
M03. Pandora hearts expanded
M04. everytime you kissed me
M05. レイアースのテーマ
M06. lighthouse
M07. Silly-Go-Round
M08. 約束
M09. ピアノ
M10. 暁の車
M11. 彼方
M12. M.06
M13. Numquam vincar~overture
M14. black rose
M15. from the edge
M16. stone cold
M17. nowhere
M18. ユメノツバサ~Prologue
M19. Parade
M20. 引き出しで発光している
M21. angel gate

●リリース情報
「彼方」
9月2日発売
【初回生産限定盤/アニメ盤(CD)】

品番:VVCL-2985
価格:¥3,000(税込)
LP サイズアニメ描き下ろし特殊ジャケット

【通常盤(CD)】

品番:VVCL-2988
価格:¥1,600(税込)

01. 彼方
(『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 〈ワルプルギスの廻天〉』主題歌)
作詞・作曲・編曲:梶浦由記
Vocal:EMIKO、LINO LEIA、YURIKO KAIDA
02. lighthouse
(ゲーム『魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra』主題歌)
作詞・作曲・編曲:梶浦由記
feat. LINO LEIA、Vocal:KAORI、YURIKO KAIDA、EMIKO

●イベント情報
Yuki Kajiura LIVE vol.#22 ~precious pieces~ SPECIAL SETLIST in Asia
2026年10月31日 台北
2026年11月15日 香港
2026年11月22日 ソウル
2026年11月27日 シンガポール

●作品情報
『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』
公開中

【スタッフ】
原作:Magica Quartet
総監督:新房昭之
脚本:虚淵玄(ニトロプラス)
キャラクター原案:蒼樹うめ
監督:宮本幸裕
キャラクターデザイン/総作画監督:谷口淳一郎
総作画監督:山村洋貴
異空間設計:劇団イヌカレー(泥犬)
絵コンテ/ビジュアル・コンセプトデザイン:古川知宏
ビジュアル・コンセプトデザイン:川田和樹
色彩設計:日比野仁
美術:内藤 健、草森秀一
美術設定:大原盛仁
撮影監督:会津孝幸
編集:松原理恵
音楽:梶浦由記
音響監督:鶴岡陽太
アニメーション制作:シャフト
配給:ANIMEC

【キャスト】
鹿目まどか:悠木 碧
暁美ほむら:斎藤千和
美樹さやか:喜多村英梨
佐倉杏子:野中 藍
巴マミ水橋かおり
百江なぎさ:阿澄佳奈
紫丁香:若山詩音
セルマ・テレーゼ:黒沢ともよ
キュゥべえ:加藤英美里

●関連リンク

FictionJunction 公式サイト
https://fictionjunction.com/

梶浦由記 公式X
https://x.com/Fion0806

梶浦由記 スタッフX
https://x.com/YKajiura_staff

劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉 公式サイト
https://www.madoka-magica.com/wr/

劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉 公式X
https://x.com/madoka_magica

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