聯合新聞網など台湾メディアはこのところ、中国大陸の飲食界で話題になっている「窮鬼套餐(貧乏人セット)」を紹介し、大いにもてはやされている理由と今後を分析する記事を発表している。

「貧乏人セット」は中国大陸部でマクドナルドやケンタッキーフライドチキンなどのファストフードが打ち出した「格安セット」に対する通称で、若い世代を中心に利用者が多いとされる。

また、中国資本系のファストフードチェーンも、「貧乏人セット」を次々に登場させるようになった。それまでの通常価格ならば数十元(50元=約1000円)が必要だったが、「貧乏人セット」を利用すれば十数元(15元=約320円円)で済むとの紹介もある。

マクドナルドなど米国系のファストフードチェーンが中国大陸部に進出したのは1980年代後半だった。料金は従来型の庶民的な飲食店よりもかなり割高で、「比較的高級な飲食店」という存在だった。それでも多くの人が足を運んだのは、それまで知らなかった食べ物や、目新しい店内や接客法に接することに喜びを感じたからだった。

しかし現在では、そのような店も日常的な存在になり、さらに価格面でも人々を引きつける必要が出てきたと考えられる。

中国では新型コロナウイルス感染症の流行の影響で、消費については「節約ムード」が濃厚になった。聯合新聞網は、「消費能力が低落したのなら、ニーズや習慣の変化に合わせて、飲食店側も経営モデルを転換せねばならない」と論じた。

「貧乏人セット」については、大陸側メディアも注目し、これまでに分析記事が発表され続けてきた。指摘の一つに、中国大陸ではファストフードチェーンが「戦国時代」の状況という意見がある。ファストフードチェーンは改革開放前には存在しなかった業態なので、当初はマクドナルドとケンタッキーフライドチキンの「二人勝ち」の状態だった。しかし現在では、中国資本系のファストフードチェーンも多く出現し、「中国式の食べ物」を提供するチェーンも増えた。

中国人はやはり中国の食べ物に愛着があり、内装などが素敵な店舗をチェーン展開する業態も珍しくなくなり、マクドナルドやケンタッキーフライドチキンの地位も安泰ではなくなり、若い層をさらに取り込むために「貧乏人セット」を打ち出すようになったとの指摘だ。

中国の飲食界を席巻する「貧乏人セット」に台湾メディアも注目

また、「貧乏人セット」は「本当の貧乏人」を対象にしたものではないとの意見もある。本当に困窮しているならば、ファストフードチェーンを利用することもままならないからだ。

聯合新聞網は、経営コンサルタントである林岳氏が大陸メディアの瀟湘晨報の取材に対して、「貧乏人セット」は薄利多売により多くの客を取り込むことを目的にしているとの見方を示したと紹介した。林氏はさらに「低価格戦略は短期的なもので、目的はブランドへの愛着をけん引し、他の高利益商品を売り込むこと」との見方を示した。

また盤古シンクタンクの江瀚研究員は、「ブランドが消費者の新たなニーズを満たすために革新を続けられなければ、低価格プランの魅力は次第に弱まる可能性がある」と分析し、「ますます多くのブランドが同様の低価格プランを打ち出すようになれば、ブランドは低価格を維持しながら、製品の品質とサービスレベルを高め、消費者の忠誠度を勝ち取る必要がある」との見方を示した。

(翻訳・編集/如月隼人)