対照的な性格やその人気ぶりもあって、60年代当時から比較され続けてきたビートルズローリング・ストーンズ。最近になって、ポール・マッカートニーミック・ジャガーがそれぞれの視点で「ライバル」への見解を明かしている。


1. ポール・マッカートニーの見解

火曜日(4月14日)の朝、ポール・マッカートニーはラジオ番組「ザ・ハワード・スターン・ショー」に電話出演して、ビリー・アイリッシュへの愛着から現在の隔離生活、かつてのビートルズとローリング・ストーンズのライバル関係まで、幅広い話題でトークを行った。スターンがビートルズの方が良いバンドだったと言うと、マッカトニーはそれを否定しなかった。

「ほら、君はどうしたって私にそういわせるだろう。彼らのルーツはブルースだ。だから彼らが作る楽曲にはブルースが必ず関連する。一方、私たちは彼らよりも若干多くの影響を受けていた。
(中略)たくさんの違いがあるし、私はストーンズが大好きだよ。でも君の意見には賛成だ。ビートルズの方が良かったよ」とポール。

すると、スターンは1967年後半にストーンズがアルバム『サタニック・マジェスティーズ』で彼らの『サージェント・ペパーズ』を目指したことを指摘した。それに対して「ビートルズがしたことをストーンズが後追いすることに私たちも気づき始めていた。ビートルズはアメリカに渡って大きな成功を収めた。
するとストーンズもアメリカに渡った。ビートルズが『サージェント・ペパーズ』を作ると、ストーンズもサイケデリックなアルバムを作った。そんなことがたくさんあったんだ。あの頃、私たちは仲が良かったし、今でも仲は悪くない。互いに尊敬し合っているしね。(中略)ストーンズはファンタスティックなバンドだよ。
彼らがツアーを行なうと毎回観に行くね。彼は素晴らしい。最高のバンドだよ」と、ポールは応えた。



新型コロナウイルスによって音楽業界のほとんどが閉鎖された現在、マッカートニーには宣伝すべきものはほとんどないが、この電話出演では近日公開予定のドキュメタンリー映画『The Beatles: Get Back』にも言及した。ピーター・ジャクソンが監督したこの映像作品は、1969年のアルバム『レット・イット・ビー』制作中に撮影された未公開の記録映像から紡ぎ出している。この映像のオーディオは何年も前にリークしているが、1970年公開のドキュメンタリー作品『レット・イット・ビー』で使用されなかった大量の記録映像はこれまで一度も公開されていない。


「(ジャクソンは)54時間分の記録映像を手に入れた。これは最高の作品だよ、ハワード、私が保証する。あのときのことが、私とジョンとの関係性が、私とジョージとの関係性が、とにかくすべて明らかになっていて、どんな状況だったのか理解できるはずだ」とポールが説明した。

伝説の『レット・イット・ビー』セッションの緊張感はつとに有名で、ドキュメンタリー映画『レット・イット・ビー』にもそれが十分に現れていた。しかしポールは、ジャクソン監督の新たなドキュメンタリーを見てショックを受けたと言う。そして「私自身、自分とジョンはライバル同士で、互いに相手を好ましく思っていなかったという考えを信じていた。
でもこの作品を観て、『なんてことだ、あれは嘘じゃないか』と思ったね。私もジョンも一緒に楽しんでいた。映像から私たち二人が互いをリスペクトしているのが見て取れるし、二人は協力して音楽を作っているんだ。あの姿が明らかになったのは嬉しいことだね」と述べた。

ポールがジャクソンと初めて対面したのは、2017年後半にワールドツアーの一環でニュージーランドに行ったときだった。「彼に会って『どんな具合だい?』と聞いた。
だってバンド解散へのプレリュード的な作品になると思っていたから。彼は『自分も最初はそう思っていたけど、映像を見るにつけ、これは最高だと思うようになっている。君たちは友だちに見えるし、二人とも心の底から楽しんでいるようだよ』と言ったんだ」と、ポールが当時を思い出した。

ドキュメンタリー映画『The Beatles: Get Back』は9月4日に劇場公開される予定になっているが、新型コロナウイルスの影響で公開日が先延ばしされる可能性も捨てきれない。「現時点では今後の予定は誰にもわからないよ。でもこの作品は必ず公開される。ディズニーはリリースする気だからね」と、ポールが教えてくれた。

2. ミック・ジャガーの反論

ミック・ジャガーとキース・リチャーズは先週Apple Musicのゼイン・ロウの番組に出演して、ローリング・ストーンズのニューシングル「Living in a Ghost Tone」の宣伝をしたのだが、この時、彼らはポール・マッカートニーの最近の発言「ストーンズよりもビートルズの方が良かった」に反論する機会も得たのであった。



ポールは最近、「(ストーンズの)ルーツがブルースだ。だから彼らが作る楽曲にはブルースが必ず関連する。一方、私たちは彼らよりも若干多くの影響を受けていた。たくさんの違いがあるし、私はストーンズが大好きだよ。でも君の意見には賛成だ。ビートルズの方が良かったよ」と、ハワード・スターンを相手に語った

この60年近く前の友好的なライバル関係の話が出ると、ミックは声を出して笑って、「これって笑っちゃうね。彼は本当に優しい男だ。俺たちの間に競争なんて一切なかったのは明らかさ」と言った。

しかし、ミックは自分が思う両バンドの大きな違いについては詳しく語った。「ストーンズはどの年代も、どの国でも、巨大なコンサート・バンドだ。ビートルズはアリーナ・ツアーを一度もやっていないし、彼らがマディソン・スクエア・ガーデンで公演したときのサウンドシステムは(今と比べたら)まともじゃなかった。彼らは本物のツアービジネスが生まれる前に解散したんだよ」とジャガー。

そして続けた。「俺たちは70年代にはスタジアム公演をやっていたし、今でも続けている。この2つのバンドの一番の違いはこれだよ。片方のバンドはものすごい幸運を持っていて今でもスタジアムでプレイしているが、もう一つのバンドはもう存在しない」と。『サタニック・マジェスティーズ』がストーンズの『サージェント・ペパーズ』だったとするマッカトニーの発言についてはコメントしていない。

ストーンズは”ノー・フィルター”ツアーの2度目の北米ツアーをこの夏に開催する予定だったが、新型コロナウイルスのパンデミックで無期限延期を決めた。しかし、最近行われたイベント「One World: Together At Home」に出演して「無情の世界」を演奏し、2012年以来約8年ぶりのニューシングル「Living in a Ghost Town」をリリースしている。