令和8年8月8日、サンフレッチェ広島に帰ってきた背番号8が88分に復帰後初ゴールを叩き込んだ。

 エディオンピースウイング広島にジェフユナイテッド千葉を迎えての2026/27明治安田J1リーグ開幕戦。
試合終盤に紫のユニフォームを着た MF川村拓夢がベンチから出てくると、ホームのサポーターから大きな拍手が巻き起こった。

「もうピッチに入る時はすごく力が入っていました。でもちょっと力みすぎたかなと思います」

 広島出身の川村が2年ぶりに古巣のピッチに立った。2024年夏、愛する地元クラブを旅立ち、オーストリアの強豪ザルツブルクに完全移籍。覚悟を持って欧州の舞台に挑み、チャンピオンズリーグでレアル・マドリードなどとの対戦も経験した。だが、加入直後から度重なるケガに泣かされ、2シーズンでの公式戦出場数は8試合のみ。苦しい2年間を過ごしていたが、この夏に古巣へ電撃復帰を果たした。

「8番は森崎和幸さんが長年つけていた番号ですし、2年前に海外移籍で1度手放してしまったけど、改めて僕はこのクラブでキャリアを全うしたいですし、その覚悟を持って僕からつけさせてくださいとお願いしました」と強い決意で再び広島伝統の8番を背負い、地元でリスタートを切った。

 開幕戦の85分、背番号8はスタジアムに響き渡るチャントとともにピッチに入った。主戦場のボランチではなく1つ前のシャドーで川村らしいダイナミックなプレーを見せると、出場から3分後にスタジアムを沸かせた。2-0で迎えた88分、右センターバックの山﨑大地が果敢に持ち上がって前線に鋭いパスを送ると、相手に当たってペナルティエリア中央の川村のもとにボールがこぼれた。

「前日に(バルトシュ・)ガウル監督と話して『明日は10番のポジションでできるか』って言われました。
そこで僕自身イメージしていたものが本当に得点シーンとマッチしていたので監督に感謝です」

 自分のイメージどおりの動きでこぼれ球を拾うと、冷静に相手GKの動きを見極めて左足でニアに流し込み、復帰後初ゴールとなる追加点を奪った。

「今日は本当にサポーターのみなさんのパワーをすごく感じました」。紫の声援に背中を押されていた川村は得点後、真っすぐにゴール裏に駆け寄って感情を爆発させた。「サポーターのみなさんにチャントを歌ってもらったときに『今日はゴールを決められる』っていう確信が自分の中であったので、ゴールを決めることができてよかったです」。

 復帰ゴールを決めたのは、令和8年8月8日の88分。試合後に知った川村は「えー!そうなんだ」と驚いた様子を見せつつ、奇跡的な“8番の日”について「なんて答えたらいいか難しいですね」と照れた表情を浮かべた。

 そんな背番号8の復帰を誰よりも喜んでいた同期がいた。川村が得点後に自陣へ帰ろうとしたとき、ベンチにいるはずのGK大迫敬介がピッチ内に入って2度の熱いハグでゴールを祝った。これには川村も「いや、本当にびっくりしましたよ」と笑いつつ、夢の海外移籍が目前で実現しなかった大迫を思い、「彼自身、この数週間は難しい時間を過ごしていた中で、本当にチームのためにプレーしてくれていますし、やっぱり彼と一緒にプレーしたいなと思いました」と語った。

 欧州での苦しい時期を経て、地元での快勝に貢献して最高の再出発を果たした。川村は、「このゴールでしんどかった2年間が報われたと思いました。このシーズンを通して最後にタイトルを取ることができたら、個人的にもよかったなと思えるので、最後に笑って終われるようにこれから頑張っていきたいです」と気を引き締める。
その顔つきは晴れやかだった。

「泣かないっすよ。もうこの2年、たくさん枯れるほど泣いたので、もう泣かないです」

 新シーズン幕開けのEピースに入ったのは最多入場者数記録の2万7624人。ゴール裏には、海外へと旅立った2年前と変わらぬ熱量で川村のチャントを歌う紫のサポーターたちがいた。

「個人的にこの2年間はすごく不本意で不甲斐ない結果だったけど、それでもたくさんの方が『おかえり』と言ってくださったので、今日はゴールで返すことができて本当によかったです」

 地元広島でまた新たな一歩を踏み出した川村は強く誓う。

「僕はこのクラブを象徴する選手になりたいです。そのためにはやっぱり結果が求められるので、タイトルを獲って、アジアでも戦って、サンフレッチェ広島というクラブを世界に広げていけるように頑張りたいです」

 川村が再び輝いた令和8年8月8日、広島の8番の歴史がまた動き出した。

取材・文=湊昂大


【ハイライト動画】川村拓夢が復帰弾!サンフレッチェ広島vsジェフユナイテッド千葉

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