砂入り人工芝コートって、ほぼ日本だけだから
ある方が「海外旅行へ行ってテニスショップでシューズを買おうとしたんだけどね、ボクのホームコートは砂入り人工芝だから、そのタイプを探したら、まるで見つからなかったよ……」とボヤいてました。
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「そりゃそーだよ、海外にはほとんど砂入り人工芝コートなんてないもん!」
「えぇっ、マジぃ? コートサーフェスなんて、世界じゅうどこでも同じようなもんだと思ってた」
そうなんです……とくに砂入り人工芝コートってのは、日本独自のものと言っていいくらい、海外にはありません。日本の全テニスコートの半分以上じゃないかってくらい、どこへいっても砂入り人工芝コートばかりですけど、まさに日本独特のサーフェス環境と言っていいでしょう。
テニスというスポーツは、いろんな地面の上でプレイされます。テニスのグランドスラムで言えば、全豪オープンと全米オープンは『ハードコート』。全仏オープンは『クレーコート』で、ウィンブルドンが『天然芝コート』。でもそれは、現代のメジャー大会でのことで、昔のデビスカップなどは、じつにさまざまなサーフェスで行なわれました。
デビスカップというのは、対戦国どちらかの国で行ない、サーフェスの選択権は「ホーム側」にありました。日本では田園コロシアムのクレーコート、室内体育館の板張りでツルッツルなコート、アフリカでは牛の糞を固めたコート……など、自分の国に有利と考える(慣れている)サーフェスを用意するのが通例だったのです。
■ 欧米のショップには、「オールコート用」ばかり
1980年代後半、日本では「人工芝のすき間に砂を詰め込んだ、きわめて水はけのよいサーフェス」が生まれます。それが【オムニコート】。それ以前の日本ではクレーコートが大半で、コート整備に手間がかかり、メンテナンスを怠ると、バウンド環境が安定せず、イレギュラーばかりだったのが、【オムニコート】は、打球のバウンドがほとんどイレギュラーせず、整備もほとんど必要ない感じ。そしてなによりも、雨が上がった後でも短時間で使用できる「水はけの良さ」が重宝がられて面数が飛躍的に増え、とくに公共施設(いわゆるパブリックコート)のほとんどが砂入り人工芝コートになります。
ちなみに、いまや一般名詞化している【オムニコート】という呼び名は、あくまで登録商標、つまり「商品名」であり、このタイプのサーフェスは「砂入り人工芝コート」と呼ばれるのが正しいのです。
ですから、アメリカにもヨーロッパにも、砂入り人工芝コートはほとんどありませんから、「砂入り人工芝用シューズ」も売られていません。日本でこのサーフェスが登場した当初は、クレー用シューズが「流用的に」使われていましたが、「滑りながら止まるクレー」と、「突起を食い込ませて止まる砂入り人工芝」とでは、グリップ特性が違います。
1985年に開催されたユニバーシアード神戸大会、テニス競技のコートサーフェスに初めて砂入り人工芝コートが選ばれ、それに呼応してアシックスが参加者たちに提供したのが、世界初の「砂入り人工芝コート専用シューズ【KOBE】」でした。クレーコート用のソールパターンは「ヘリンボーン(杉綾模様)」が主流ですが、【KOBE】のソールはイボイボで満たされています。
これが、その後の砂入り人工芝用シューズの基本パターンとなります。ただ、当時はまだクレーコートも多かったため、「砂入り人工芝用」では売れません。そこで、元々「流用型」だった「クレー用」側を主体とした抱き合わせで「クレー/砂入り人工芝用」が、やたら多くなります。逆に、砂入り人工芝専用タイプは、アシックス【オムニテレイン】で引き継がれ、きわめて多くの愛用者を魅了してきましたが、アシックスもグローバル化によって、ついに【オムニテレイン】は消え去ったのでした。
■ 「オムニ/クレー用」は、「両対応」レベルじゃない
ですから、今では「砂入り人工芝専用」と謳われているモデルがあるのは、【バボラ】だけになりました。【JET TERE2】【SFX EVO】という2モデルに【SAND GRASS】ソールがあり、これが全面スタッド(突起柱)構成です。
バボラ「JET TERE2」の砂入り人工芝用(写真中央)とオールコート用(写真右)。ソールパターンが違うことがよくわかる
また【プリンス】のレディスモデル【VENUSMASH CG】と【TOUR PRO Z VII CG】は、「CG=クレー/グラス(人工芝)」の兼用表示でありながら、ソール全面が細かなスタッドで構成されているため、実質「砂入り人工芝専用」と受け取っていいでしょう。さらに同社【TOUR PRO LITE IX CG】【WIDE LITE ADVANCE CG】も、ほぼスタッド構成であるため、準専用と言っていいでしょうね。
問題は、その他の「オムニ(砂入り人工芝)/クレー」用と謳われているシューズです。
ただ全体的に見て、ほとんどがスタッド型を意識したデザインで「砂入り人工芝用志向」が高い設定でしょう。やはり、クレーコートで使用されることが少ないため、どうしてもそうなります。
逆に、プリンス【VENUSMASH AC】と【TOUR PRO Z VII AC】などは、「オールコート用」設定ですが、ヘリンボーンパターンを主体とするため、筆者は「クレーコート向き」を宣言します。「クレーではバッチリ/ハードはかなり止まるで」という感じ。
そして近年、海外ブランドの「オールコート用」モデルは、ほぼヘリンボーン主体ですので、クレーコート専用シューズをほしいときには、それらも選択肢に入れるといいでしょう。海外のトッププロたちは、ウィンブルドンなどの天然芝コート以外は、ほぼ「オールコート用」を使います。それは、「プロはソールの摩耗を気にしないため」「海外のクレーコートは柔らかく、溝が少なめでも止まってくれるため」「プロは踏み付ける力が強烈で、クレーでもあまり滑らないため」でしょう。
みなさんがテニスシューズを選ぶときには、自分だけで判断せずに、シューズに詳しそうなショップスタッフをつかまえて、専門家によるアドバイスも参考にしましょう。
文=松尾高司
1960年 生まれ。



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