技術力と体幹の強さをあわせ持ち、アタッカーとして存在感を示す一方で、サイドバックとしても有用なユーティリティ性を示す林。レジェンド本山雅志を思わせる「24」を背負った林は、鹿島というビッグクラブでどのようなビジョンを描き、何を感じているのか。本誌で連載を持ち、鹿島OBでもある名良橋晃氏を聞き手とし、初のJ1フルシーズンに挑む大器に独占インタビューを行った。
開幕戦で得た手応え どんなポジションでもやっていく
百年構想リーグから鹿島の一員となった林。成長に期待がかかっている Photo/Getty Images
名良橋(以下:名) 「Jリーグが開幕しましたが、その前に百年構想リーグからプロとしてアントラーズでプレイすることになりました。僕も現地に行ったんですが、神戸戦でゴールも決めていましたね。ハーフシーズンやった手応えとしてはどうでしたか?」
林 「そうですね。自分にとってはJリーグを経験していない中での百年構想リーグで、メンタル的な波もなく、一試合一試合取り組めたかなと思っています」
名 「個人的には十分にやれている感じが見えたと思ったんですけど、課題などは見えましたか?」
林 「途中出場が多かったですが、その中で点を取る、アシストをするっていうチャンスがなかったわけではなかったので。そこを取り切れなかったというのは課 題かなと思っていますね」
名 「それで、新しく8月スタートという形でJリーグが始まったわけです。開幕戦の横浜F・マリノス戦は痺れるような展開で、前半すぐにゲームが動いたわけですけど、どんな気持ちでベンチから見ていましたか?」
林 「やっぱり失点したら、ちょっと嫌な雰囲気になるというようなことはあると思うんです。全然まだ大丈夫というか、取り返せるなという気持ちはありました。自分が入ったらどうプレイするかというのを考えながら見ていましたし、動いていました」
名 「後半の67分から投入されたとき、オニさん(鬼木達監督)からどんな指示がありました?」
林 「まあ、もう本当に負けている状況だったので、点を取りにいくところ、仕掛けるところ、ゴール前に入っていくという部分は言われました」
名 「追いかける展開のなかで、終盤に攻撃的にシフトしたじゃないですか。
林 「そうですね。流れだったり、試合の状況をみてプレイ選択をしないといけないですが、その中でも自分の強みを忘れずに、どのポジションでも出せているというのは、途中出場でも認めてもらっているところかなと思います」
名 「自分にしかできない役割というものは感じていますか?」
林 「うーん……。でもどのポジションに入ってもそのポジションでやらないといけないこともやった上で、それに縛られずに自分の良さを出せるのが強みかなとは思いますね」
名 「強みというのは、具体的にどんなところだと?」
林 「やっぱりサイドバックに入ったとしても攻撃的にできますし、上下運動もできますし、かつ守備でも強度を出せると思っているので。逆に前に入ったらよりチャンスメイクできたり、自分のところで時間作れたり、というところですね」
名 「正直、勝負のポジションというか、どこでやりたいというのはあり
ますか?」
林 「やっぱり前でプレイしたいという気持ちはありますね。左のサイドハーフだったり、シャドーのポジションに自分が入ることもあるので。自分は攻守にわたってタフさだったり、強度を出せる選手だと思っているので、そういう戦うところだったり、ハードワークというところを忘れずに、その中で自分のアイデアや技術を発揮してゴールに繋げていきたいなと考えています」
ロールモデルは柴崎岳 「24番」に恥じぬ選手へ
かつてレアル・マドリードから2点を奪ってみせた柴崎。そのプレイが林少年の瞳に焼きついていた Photo/Getty Images
名 「百年構想リーグから半年、オニさんの指導を受けるようになって、自分の中で変わったと思う部分などはありますか?」
林 「やっぱり安パイなプレイというか、無理だったらバックパスとか外へのパスみたいなプレイも以前は多かったんです。少しの隙だったり、相手の寄せを見て、前を向くなら前を向くとか、内側にパスをつけるとか。ゴールに直結するようなところは鬼木さんの指導で増えたかなと思います」
名 「オニさんて、どんな監督ですか? 言える範 囲でいいですよ(笑)」
林 「本当に熱量が高くて、一人一人にアドバイスをくれますし、平等に見てくれている感じがあります。『本当に良い選手が出る』という競争が生まれやすい状況も作ってくれていますし、選手だけじゃなくて、監督もスタッフも一緒に戦っている感覚があるなと思います」
名 「本当に要求が高いチームだし、日常の練習もすごく厳しいですよね。林選手は、2 4番をつけているじゃないですか」
林 「はい」
名 「レジェンドの本山雅志さんがつけていた番号で、中田浩二さんからの期待の表れでもあると思うんですけど、これに関してはどう思っていますか?」
林 「 背番号発表があった時には聞かされていなかったんですけど、後々そういう番号だったというのを聞いて、理由も聞いて。やっぱりそこは比べられますし、超えていかないといけないなと思っているので、意識はしています」
名 「まだ林選手は2 2歳ですよね。歴代のアントラーズの中で、インパクトが残っているチームや選手はいますか?」
林 「やっぱり岳くん(柴崎岳)ですね」
名 「どんなところが?」
林 「ちっちゃい頃に、クラブW杯のレアル・マドリード戦を見ていたので」
名 「はいはいはいはい」
林 「そこが一番衝撃的だったので。
名 「同じチームでやるというのは、どんな気持ち? 最初は緊張したりしましたか?」
林 「最初の方はだいぶ緊張もしましたね。今はもういろんな話もしてくれますし、アドバイスもしてくれますし。それこそ今回(開幕戦)、岳くんと一緒に出たんですけど」
名 「そうだ、そうでしたね」
林 「アップ中にも岳くんから試合に出たらこういう動きをしろ、とか結構言ってくれていて、岳くんとだったので、良い流れを作れたかなとは思ています。具体的には、自分が左のハーフで入ったら、もっと斜めのランを増やすとか。ゴール前までは絶対に行けるから、そこでスピードアップするんじゃなくて、もっと落ち着いてステップを増やしていこうとか」
名 「プレイ面で参考になることもあるんじゃないですか?」
林 「本当に視野が広いのがまず1つと、いつ見ていたのか、というのがあります」
名 「開幕戦のあの4点目とか」
林 「そうですね。やっぱり自分の懐にボールを置いてから、ワンステップでどこにでも蹴れるという。参考というか、自分ができることじゃないと思うんですけど、パスが本当に出てくるというのはすごいなと。岳くんからなら出てくるって信じて走れます」
やはり同期には負けられない 目標はG+Aで10ゴール以上
横浜FM戦では左サイドハーフ→左サイドバックとポジションを変えた林。どんなポジションでも強度を出せるのが強み Photo/Getty Images
名 「誰か、緊張しないで話せる先輩っていますか?」
林 「そうですね、早川(友基)さんは大学の先輩なので。大学で進路に迷っていたときに、鹿島に早川さんがいたというのも大きかったです。やっぱりW杯を経験している選手ともなると、尊敬できるところは本当に多いですし。
名 「年下の選手は? リスペクトしてこな い 後 輩 とか います か?(笑)」
林 「多いですね(笑)。(徳田)誉とか(大川)佑梧。もう先輩だと思われてないですね」
名 「うまくプライベートでもやれている感じですか?」
林 「そうですね。寮も一緒なんで」
名「Jリーグの中で一番負けたくない選手っています?」
林 「特にいないんですけど、1年目の選手という中では一番活躍したいという思いはありますね。誰に対してというよりも、自分が一番インパクトを残したいという思いがあります」
名 「藤枝の真鍋(隼虎)選手も明治大の同期ですよね。J 2で点も取ってるじゃないですか」
林 「はい。あとはJ 3の鹿児島に、高校で同期だった中山桂吾というのがいるんですけど、彼も開幕戦で点を取ったりしていて。カテゴリーは違うとしても、やっぱり結果を残す選手がいると負けられないですね」
名 「林選手は明治大出身で、他のチームからもいろいろと誘いはあったと思うんですよ。その中でね、アントラーズを選んでくれたというのは、おじさん本当にものすごく嬉しいんですけど(笑)。
林 「練習参加をした時に、ピッチ内外でのオンオフがはっきりしているところだったり。今まで自分がいたチームの練習強度も高かったので、そういう強度の高い練習だったり、求め合うところというか、自分が一番成長できる場所なのかなと。もともとJリーグでは鹿島が好きだったというのも1つあるんですけど」
名 「明治大も相当に激しい練習強度のチームじゃないですか。よりアントラーズの方が激しく感じました?」
林 「違う強度という感じでしたね。より頭を使って、気が抜けないというか。そういう緊張感のある練習というのが、一番成長できると思った点ですね」
名 「おじさんとしては、アントラーズでこの先もずっとプレイしてほしいという思いはあるんですが、当然林選手としてもこの先、世界を意識することはあると思うんです。そのためにもっともっとこう… …、“怖い”選手になってほしいなと思うんですよ。世界との距離というのは、感じているところはありますか?」
林 「そうですね。世界に出たいという思い、自分がどれだけ通用するのかというのを試してみたいという思いもあります。でも、まだまだだっていうのも自分の中にはありまして、よく言われるシュートの課題だとか。アジリティとか身体能力のところでも負けない強度を出して、その中で自分の技術を発揮できるようにしていきたいと思っています。本当にまだまだ足りないと思うので。
名 「まあでも本当に、林選手にはこれからも活躍してほしいなと思っています。当然チームとしては全部のタイトルを獲るっていうのが目標だと思うんですけど、林選手の今季の個人目標はありますか?」
林 「個人ではゴール、アシスト合わせて1 0以上というのを今季の目標にしています。開幕戦を見ても、あれだけ応援してもらえるっていうのは当たり前のことじゃないんだと分かっていますし、その分期待に応えてもっと強くなりたいと思いますね」
インタビュー/名良橋晃 構成/前田亮
※電子マガジンtheWORLD323号、8月20日配信の記事より転載

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