7月12日(日)、パシフィコ横浜にて、「投資って、エンタメだ。」をテーマに、「楽天証券 27th FES」が開催されました。筆者は、登壇して話をしたり、ブースでたくさんのお客さまと個別にお話をしたりしました。

本レポートでは、この日のお客さまとの会話で挙がった主なご質問とその回答をまとめます。


個人投資家の皆さまからの「金(ゴールド)」関連のご質問に答え...の画像はこちら >>

投資は「能動的なエンタメ(娯楽)」だ

 投資はエンタメ(娯楽)になり得るのか…7月12日の朝、会場に向かいながら考えていました。投資という、経済、政治、法律、文化、技術、情報、歴史など、さまざまな社会的事象の影響を受ける分野が、習慣や楽しむことの集合体である娯楽になり得るのか、という疑問です。


 筆者は、人間は基本的に「知ることを心地よいと感じる生き物」であると考えています。好奇心を持っているためです。知らなかったことを知ったり、さらに知りたいと思っていたことについて十分な情報を獲得した瞬間に、安心したり興奮したりします。人間の体はそうできているのです。


 だからこそ人間は、知る余地が無限にある状態である「未知」に引かれ、知らないことを能動的に克服しようとするのです。流れてくるものを受けたり浴びたりするだけの受動的な状態と全く異なります。未知を克服しようとする能動的な行為の先に、安心や興奮があるのです。未知こそ、安心・興奮の源泉なのです。


 投資の世界は未知にあふれています。価格動向の先行き、資産額の動向の先行き、攻め方、守り方など、多くの未知が存在します。

こうした未知が多数存在する投資の世界は、「能動的にエンタメ(娯楽)を享受する世界」だと言えるでしょう。やはり「投資って、エンタメ」なのです。


 実際に、楽天証券 27th FESの会場は熱気に包まれていました。講演中に壇上から見た多数の来場者の方々の食い入るような表情や、ブースでお話をさせていただいた方々の、「よく分かりました」とおっしゃった時の笑顔を目の当たりにしました。


 こうしたことから想像すると、イベント全体を通じ、少なくない方(いや、多くの方)が、能動的に個々の未知を克服することに成功し、安心や興奮を獲得されたのではないかと思いました。


 筆者は今回のイベントで、投資が多くの方々の日常に「能動的なエンタメ(娯楽)」として存在していることを再確認しました。そして、情報を発信する側は、情報の受け手の未知を克服する一助になるよう、過去の常識にとらわれず、積極的に情報を発信しなければならないと思いました。


図1:楽天証券 27th FESの一場面(展示されている純金は警備員に見守られている)
個人投資家の皆さまからの「金(ゴールド)」関連のご質問に答えます
出所:筆者提供

どれくらい金(ゴールド)に投資すべき?

 講演の際、進行の方とのやりとりにおいて、金(ゴールド)をどれくらい運用資産に含めるか、という話になりました。ブースでの個別のお客さまとの会話でも同様の話題が出ました。


 筆者は、「金(ゴールド)」ではなく「貴金属」を、全体の1割くらい、含めてみてはどうかと考えています。図2のように、伝統的な投資戦略とされている「株式:債券=60:40」を、「株式:債券:貴金属=60:30:10」とするイメージです。


図2:これまでの投資戦略と、想定されるこれからの投資戦略
個人投資家の皆さまからの「金(ゴールド)」関連のご質問に答えます
出所:筆者作成

 金(ゴールド)を含む貴金属は、保有していても利息も配当も得られません(関連個別株を除く)。インカムゲインがないのです。

このため、貴金属は運用資産全体(ポートフォリオ)のメインにはなり得ません。


 また、貴金属の10に、株式の60ではなく債券の40の一部を充てた背景は、株式が投資のメインであると考えているためです。投資商品の多さ、税制の制度上のメリットの多さ(NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)など)、世の中の注目度合いなどを考慮すれば、メインは債券ではなく株式、となると思います。


 ここで述べている貴金属は、金(ゴールド)とプラチナです。銀(シルバー)も貴金属の一つですが、貴金属の中でも比較的上下の値動きが激しい傾向があります。筆者の感覚としては、「銀(シルバー)は値動きの大きい金(ゴールド)」です。


 このため、金(ゴールド)、そして金(ゴールド)と価格の水準における対比が大きいプラチナを、貴金属の10を構成する銘柄と想定しています。この10の枠を、図3のように、積立をメインとし、状況に応じて随時(スポット)を併用して使います。


図3:貴金属投資のイメージ(投資開始時点)
個人投資家の皆さまからの「金(ゴールド)」関連のご質問に答えます
出所:筆者作成

 積立については、iDeCoで金(ゴールド)の投資信託の積立をしたり、純金積立や投資信託、あるいは楽天証券のかぶツミ®を利用しながら金(ゴールド)とプラチナ関連の投資商品(上場投資信託(ETF)や関連個別株)の積立を行ったりします。


 また、これらと同時進行で、随時(スポット)、関連ETFや個別株、商品先物、商品CFDなどで売買することを想定します。


 2015年ごろ以降、プラチナの価格が金(ゴールド)よりも安い状況が続いているため、価格(単価)が安いことが月々の保有数量を増やすきっかけになり、最終的な資産の額が大きくなり得る「積立」においては、プラチナに分があります。


 このため、投資可能期間が比較的長い、若い世代の方々においては、プラチナを金(ゴールド)よりも多めに積立をする、などの工夫が有効であると考えます。


 また、保有する貴金属関連の金融商品の種類についてのご質問もいただきました。このご質問への回答は、「現在のお客さまのメインの金融商品による」です。


 例えば、米国や日本の株価指数に連動することを目指す投資信託(ETF)をメインの金融商品にされているお客さまであれば、保有する貴金属関連の金融商品は投資信託(ETF)が望ましいと考えられます。


 もしまだ、投資信託もETFも保有されていなければ、まずは現物である純金積立で積立を開始されるのも、良いかもしれません。純金積立の場合、保有数量が一定の量を超えた場合、金(ゴールド)やプラチナの現物を受け取ることもできます(別途、手数料がかかります)。


金(ゴールド)とプラチナの違いとは?

 筆者が出演した講演のタイトルは「株・投信・債券・REIT・金プラ…これで迷子にならない!はじめての「投資MAP」」でした。楽天証券経済研究所に籍を置く専門家たちが、それぞれの専門分野を説明したり、進行の方を含めてディスカッションをしたりしました。


 筆者は「金プラ」の説明の際、金(ゴールド)とプラチナの価格水準について、説明しました。図4のとおり、金(ゴールド)とプラチナの価格水準を比較すると、圧倒的に金(ゴールド)が高く、プラチナが安いことが分かります。


図4:金(ゴールド)とプラチナ価格の推移 単位:ドル/トロイオンス
個人投資家の皆さまからの「金(ゴールド)」関連のご質問に答えます
出所:世界銀行のデータより筆者作成

 足元の金(ゴールド)価格の水準はプラチナ価格の約2倍です。言い換えれば、プラチナ価格の水準は金(ゴールド)価格のおよそ半分です。


 ブースでは複数の方から、プラチナの方が金(ゴールド)よりも高いと思っていた、なぜプラチナの方が安くなったのか、とご質問をいただきました。確かに、2010年代の半ばまではほとんどの期間で、プラチナの方が高い状態が続いていました。


 プラチナ価格が安くなった背景には、プラチナ価格が下落する理由が生じたことと、金(ゴールド)価格が上昇する理由が生じたことが、同時進行したことが挙げられます。


 プラチナ価格が下落した主な理由に、ドイツの自動車大手「フォルクスワーゲン」社が、違法な装置を使って不正に排ガス浄化装置のテストを潜り抜けていたことが発覚し、同社の主力であるディーゼルエンジンを搭載している車への不信感が強まり、同車の排ガス浄化装置に多く使われるプラチナの需要が激減するとの見方が広がったことが挙げられます。


 金(ゴールド)価格が上昇した主な理由に、2010年から中央銀行による買いが目立ち始めたことが挙げられます。その背景には、同年ごろから目立ち始めた、世界の民主主義の後退、分断深化、資源武器利用の横行、通貨不確実性の増大、長期視点のインフレなどの「非伝統的な有事」が台頭し始めたことが挙げられます。


 こうしたことを背景に、このおよそ10年間で、金(ゴールド)価格はプラチナ価格のおよそ2倍になりました。


 とはいえ、プラチナ価格を下落させた主な要因である自動車排ガス浄化装置向け需要は、近年、新興国や北米を中心に増加しており、今では2015年とほぼ同水準に回復しています。プラチナ価格が長期視点で低迷する大きな理由がなくなりつつあると言えます。


 自動車排ガス浄化装置向け需要が回復傾向にあること、さらには、貴金属のリーダー的な存在である金(ゴールド)の価格が「非伝統的な有事」の継続、それによる中央銀行の買いによって長期上昇トレンドが継続する可能性があることを考えれば、プラチナ価格は将来的に、2025年よりも長い時間軸で上昇トレンドを演じる可能性があります。


 先述のとおり、2015年ごろ以降、プラチナの価格が金(ゴールド)よりも安い状況が続いているため、価格(単価)が安いことが月々の保有数量を増やすきっかけになり、最終的な資産の額が大きくなり得る「積立」においては、プラチナに分があります。


 図5のとおり、シミュレーションをしてみると、プラチナ価格が金(ゴールド)価格を「一度も上回らなくても」、最終的な資産額が金(ゴールド)を上回る場合があります。


図5:金(ゴールド)とプラチナの積立シミュレーション
個人投資家の皆さまからの「金(ゴールド)」関連のご質問に答えます
出所:筆者作成

 積立において、価格が安いこと(毎月購入できる数量が増えやすいこと)がいかに、最終的な資産の額を大きくする要因になり得るかが分かります。このことについて、興味深いことをおっしゃった方がおられました。

金(ゴールド)価格が毎月のように急騰していた時、購入した数量が毎月のように目減りしていた、とのことでした。


 プラチナは、価格が金(ゴールド)よりも圧倒的に安く、それでいて長期視点で価格反発が起き得る銘柄です。「高くて買えない」という状態にもなりにくい、という特性もあります。


 積立であれば、プラチナ、なのだと筆者は考えています。純金積立、投資信託、ETF(かぶツミ®を利用)などでプラチナの積立をすることができます。


円安は金(ゴールド)投資に影響するの?

 ブースでは、さまざまなご質問をいただきました。ドル建てと円建てという、通貨建ての違いに関するご質問もありました。投資信託で言えば、為替ヘッジありと為替ヘッジなし、です。


 図6は、国内地金商の金(ゴールド)店頭小売価格のイメージ図です。国内地金商の店頭小売価格は、本体価格に消費税を加えた額です。本体価格は、世界の中心であるドル建ての金(ゴールド)価格とドル円相場で計算された円建て換算価格に諸経費を加えた価格です。


図6:国内地金商の金(ゴールド)店頭小売価格の構成
個人投資家の皆さまからの「金(ゴールド)」関連のご質問に答えます
出所:各種情報源より筆者作成

 つまり、国内店頭小売価格は、国内の金(ゴールド)の需給バランスよりも、世界の中心のドル建て金(ゴールド)価格やドル円相場の動向によって動いているといえます。基本的には、国内店頭小売価格は世界の中心であるドル建て金(ゴールド)価格に追随します。


 ただし、ドル円相場が急変した場合、国内店頭小売価格は、ドル建て金(ゴールド)価格と異なる方向に動くこともあります。図7は、ウクライナ戦争が勃発した2022年2月を100として指数化した、ドル建て・円建て金(ゴールド)とドル円相場の推移です。


図7:ドル建て・円建て金(ゴールド)とドル円の推移(2022年2月を100として指数化)
個人投資家の皆さまからの「金(ゴールド)」関連のご質問に答えます
出所:各種情報源より筆者作成

 世界の中心であるドル建て(ゴールド)価格は、下落しました。同戦争が勃発したことを受け、主に西側諸国が戦争を勃発させたロシアからエネルギーを買わないようにしたことで、インフレ(物価高)がなお進行することを食い止めるため、急激な金利引き上げ(利上げ)を実施し、ドル高が進んだためです。


 ドル建て金(ゴールド)市場の短中期的なテーマの一つに「代替通貨(ドルの代わり)」があります。この時に発生した急激なドル高は、ドル建て金(ゴールド)市場に強い下落圧力をかけました。


 これにより、同じ短中期的な別のテーマである「伝統的な有事(戦争などが勃発した時に発生する資金の逃避先需要)」による上昇圧力が相殺され、その結果、ドル建て金(ゴールド)価格は下落しました(有事でも金(ゴールド)価格は下落した)。


 ですが、円建て金(ゴールド)は大きく上昇しました。ドル高の反対側にある円安が進行したためです。輸入価格が割高になる、他の通貨建ての同じ商品に対する割安感が生じるなどの理由で、円安は円建ての商品全般に上昇圧力をかけます。


 当時、大きく上昇した円建て金(ゴールド)価格の動向が、有事の金(ゴールド)と認識されていた節がありました。しかし実際には、円安によって上昇していたのです。それくらい、ドル円の変動は金(ゴールド)相場に影響を及ぼし得る、と言えます。


今後、金(ゴールド)相場はどうなるの?

 講演でもブースでも、金(ゴールド)相場の今後の展開について、聞かれました。筆者は、短期的にはそろそろ反発、長期的には上昇トレンド継続、と回答しました。


 金(ゴールド)価格を動かすテーマは複数あり、短中期、中長期、超長期の三つの時間軸に分類できます。図8は、ドル建て金(ゴールド)価格の変動イメージです。ウクライナ戦争の際にドル建て金(ゴールド)の価格を下落させたテーマが、(3)の「代替通貨(ドルの代わり)」です。


図8:ドル建て金(ゴールド)価格の変動イメージ
個人投資家の皆さまからの「金(ゴールド)」関連のご質問に答えます
出所:筆者作成

 今年1月から3月に歴史的な高値を付けたあと、価格が反落した背景に、ウクライナ戦争の際と同様、(3)の「代替通貨」をきっかけとした下落圧力が挙げられます。


 また、主要国の株価指数が軒並み高値を更新したことを受けた(2)の「代替資産(株の代わり)」をきっかけとした下落圧力や、中東情勢の緊張緩和を受けた(1)の「伝統的な有事」の鎮静化をきっかけとした下落圧力も、下落に拍車をかけたと言えます。


 ですが、ドル建て金(ゴールド)価格は、1トロイオンス当たり4,000ドル前後で下げ渋っています。この節目とも言える水準を大きく下回らない状況が続いています。この水準を短期視点の買い場と考えている市場参加者が存在していることがうかがえます。


 短期視点で反発すると考える背景には、中東情勢が悪化する方向に向き始めたこと、米国の中間選挙を前にトランプ大統領が昨年のように「予防的利下げ」を要求する可能性があること、原油相場が5月をピークに下落し今後、米国のインフレ関連指標が弱含む可能性があることなどが、挙げられます。


図9:S&P500種指数、金(ゴールド)の価格推移
個人投資家の皆さまからの「金(ゴールド)」関連のご質問に答えます
出所:ブルームバーグのデータを基に筆者作成

 長期視点では、中長期の「中央銀行」の金(ゴールド)買いと、その買いのきっかけである超長期の「非伝統的な有事」が継続すると考えられます。これにより、2010年ごろから続いている「株高・金(ゴールド)高」が今後も続くと、筆者は考えています。


 光がまぶしければまぶしいほど(世の中の期待が大きくなればなるほど)株価指数は上昇しやすくなり、(光と同時に存在する)影が濃くなれば濃くなるほど(世の中の懸念が大きくなればなるほど)金(ゴールド)価格は上昇しやすくなると、考えます。


 本レポートでは、7月12日に行われた大規模イベントでの講演やブースでのお話を通じていただいた主なご質問とその回答をまとめました。講演の際に一緒に登壇した皆さま、そしてブースでお話をさせていただいた皆さま、誠にありがとうございました。


 書ききれなかったことを含め、今回のイベントで得たアイデアを今後、レポートや動画でまとめていきたいと考えております。


[参考]貴金属関連の具体的な投資商品例

純金積立

純金積立・スポット購入


投資信託

三菱UFJ 純金ファンド
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
楽天・ゴールド・ファンド(為替ヘッジなし/あり)
楽天・プラチナ・ファンド(為替ヘッジなし)


中期:関連ETF

SPDRゴールド・シェア(1326)
NF金価格連動型上場投資信託(1328)
純金上場信託(金の果実)(1540)
NN金先物ダブルブルETN(2036)
NN金先物ベアETN(2037)
GXゴールド(425A)
SPDR ゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)
ヴァンエック・金鉱株ETF(GDX)


短期:商品先物

国内商品先物
海外商品先物


短期:CFD

金(ゴールド)、プラチナ、銀、パラジウム


(吉田 哲)

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