ジャクソンホール会議を控えて様子見が続く中、エヌビディアが市場予想を上回る好決算を発表しましたが、株価の初期反応は限定的で関連銘柄でも選別が進んでいます。AI需要が確認された一方、コスト増加や供給制約といった懸念も浮き彫りとなりました。

今回の決算内容と市場の反応から、今後のAI相場と投資戦略のポイントを考察します。


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ほぼ「満額回答」のエヌビディア決算:AI相場復活の死角は?(土信田雅之)
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2大イベントを控え、様子見の米国株市場

 今週の米国株市場ですが、図1を見ても分かるように、26日(水)終了時点で方向感に欠ける展開となっています。


<図1>米主要株価指数のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年8月26日時点)
ほぼ「満額回答」のエヌビディア決算:AI相場復活の死角は?(土信田雅之)
出所:MARKETSPEED IIおよびBloombergデータを基に作成

 日々の商い(売買高)も低調であるため、株価の先高観が高まっているというよりは、様子見ムードの方が強い印象ですが、こうした様子見姿勢は米国で重要なイベントが控えていることが影響しています。


 そのイベントの一つが、「ジャクソンホール会議(米カンザスシティ連邦準備銀行主催の経済シンポジウム)」です。そこで行われるウォーシュ米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演内容が今後の米金融政策の姿勢を探るヒントになる可能性があるため注目されています。講演は日本時間28日(金)の23時に予定されています。


 また、二つ目の重要イベントが、26日(水)の米国株市場の取引終了後(日本時間では27日(木)の朝)に発表された米半導体大手のエヌビディア(NVDA)決算です。


 売上高や1株当たり利益(EPS)がともに市場予想を大きく上回り、前年同期比の成長率が4四半期連続で加速したほか、業績見通しも強気が維持されるなど、ほぼ「満額回答」の力強い内容となりました。


エヌビディア決算に対する株式市場の初期反応は無難だが微妙

 そのため、目先はこのエヌビディア決算を織り込むことになりますが、決算を受けた株式市場はひとまず好感する初期反応となっています。


 米国株市場の26日(水)の時間外取引(アフターマーケット)でのエヌビディア株価は日中取引の終値(209.66ドル)から約20ドル高い226.25ドルまで上昇する場面があったほか、27日(木)の日本株市場でもキオクシアホールディングス(285A)やフジクラ(5803)、イビデン(4062)、村田製作所(6981)、ソフトバンクグループ(9984)といった、AI・半導体関連銘柄が上昇しました。


 さらに、27日(木)の米国株市場の時間外取引(プレマーケット)でも226.78ドルの高値をつけています。


<図2>エヌビディア(5分足)の動き(2026年8月26日と時間外取引)
ほぼ「満額回答」のエヌビディア決算:AI相場復活の死角は?(土信田雅之)
出所:MARKETSPEED II

 図2はエヌビディアの時間外取引の値動きを5分足チャートで示したものですが、結果的に決算を受けたエヌビディアの株価は上昇しているものの、米国のアフターマーケット開始直後の株価は下落が先行していたほか、プレマーケットの時間帯でもあまり上値を伸ばせていません。


 また、27日(木)の日本株市場でも、先ほども見てきたような銘柄が上昇した一方で、アドバンテスト(6857)や太陽誘電(6976)、レーザーテック(6920)、ディスコ(6146)など、下落しているAI・半導体関連銘柄も多く、銘柄を選別する動きが続いています。


 この日の日経平均株価も取引開始直後にエヌビディアの好決算を受けて700円近く上昇していたのが、日本銀行の氷見野良三副総裁の発言やジャクソンホール会議待ちの状況など、金融政策への思惑によって上げ幅が縮小してマイナスに転じて取引を終えています。


 そのため、株式市場の初期反応だけを見ると、今回のエヌビディア決算が相場全体の流れを好転させて、積極的に上値をトライする起爆剤となるのかは微妙なところかもしれません。


<図3>エヌビディア(日足)の動き(2026年8月27日の取引開始直後)
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出所:MARKETSPEED II

 もっとも、27日(木)の取引開始直後の日足チャートを見ると、5月14日と8月17日の高値どうしを結んだ「上値ライン」を試すところに株価が位置しており、ここを上抜けて5月14日の高値をトライする動きとなれば、他の関連銘柄にも波及し、AI相場が息を吹き返すような動きになる可能性は残されています。


エヌビディア決算から見えるAI相場復活の死角とは?

 そこで気になるのは、「今回のエヌビディアの好決算は、AI相場が勢いを取り戻すほどのインパクトに欠けていたのか?」ということです。


<表>エヌビディア決算のハイライト 項目 2026年
5-7月期 前年同期比 市場予想
(コンセンサス) 売上高 962.2億ドル 106%増 920億ドル前後 調整後EPS 2.22ドル 120%増 2.09ドル 粗利益率 75.00% 2.5%pt
(前年72.5%) 約75.0% データセンター部門
売上高 890.2億ドル 117%増 約858億ドル 営業利益 640.0億ドル 124%増 ー 出所:Bloombergデータおよび各種報道などを基に作成

 表は、今回(2026年5-7月期)のエヌビディア決算のハイライトです。


 売上高やEPS、データセンター部門の売上高、営業利益の項目で前年同期から倍増しています。確かに、市場予想(コンセンサス)と比べても十分に期待を上回っているため、インパクトはそれなりにあったと思われます。


 そして、次の四半期(8-10月期)の売上高見通しも1,080億ドルと前年同期比で89%増が見込まれており、こちらも市場予想(1,048億ドル)を上回っています。ちなみに、この見通しには中国向けの売上を盛り込んでおらず、今後の上振れ余地も残されています。


 このように、旺盛なAI投資需要を背景とした業績の伸びが今後も続くことになりますが、アフターマーケット開始直後の株価の反応が微妙だったのは、市場の期待値が高過ぎたため、いったんの材料出尽くし感で売りが優勢になったことが考えられます。


 また、その後の株価が上昇へ転じたのは、同じ時間帯で行われていたアナリスト向けの説明会で、エヌビディアの最高財務責任者(CFO)が、「2028年1月期の売上高が前年比で70%増えると暫定的に予想している」と発言したことがきっかけです。


 結果的に、株価にとってプラスに寄与したこの発言ですが、実は「供給制約がなければ100%増も可能」という補足説明があります。つまり、メモリ価格の上昇や各種コストの負担増といった供給制約が業績を圧迫することを考慮した上で70%増という数字を示したことになり、エヌビディアはAI投資にかかるコスト増をリスクとして捉えていることを表明したともいえます。


 別のレポートでも言及しましたが、足元の市場のAI投資に対する視点は、「巨額の投資に見合うリターンが出る速度で、物理的なリソース不足や価格高騰などを克服してインフラを稼働させられるか?」に向かっています。


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 今後、エヌビディアが意識している投資コストの増加や、中国勢の台頭などによる「AIのコモディティ化」がもたらす価格競争による収益の悪化懸念などの材料が出てくると、AI・半導体関連銘柄がこれまで以上に敏感に反応して、売られやすくなる展開も想定しておく必要がありそうです。反対に、これらの不安が後退するのであれば、AI相場は再度の高値トライもあり得そうです。


 また、日米の金利(債券利回り)の高止まりによる株価の抑制、不透明な中東情勢、11月の米中間選挙に向けた思惑が高まっていくことなど、相場を取り巻く環境は株価が上値をトライしにくくなってきており、一部のAI・半導体関連銘柄の上昇が相場全体をカバーするのは難しく、分散投資でバランスをとることがカギになっていきそうです。


 来週から9月相場入りしますが、アノマリー(経験則)では、1年でパフォーマンスが良くないタイミングであり、警戒モードを少しだけ高めておくタイミングなのかもしれません。


(土信田 雅之)

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