現地取材記者が選ぶ夏の甲子園2026 ベストナイン(後編)
夏の甲子園を現地で取材した5人の記者が選ぶ、今大会のベストナイン。打撃、守備、走塁で大会を沸かせた選手たちのなかから、誰を選ぶのか。
投手/織田翔希(横浜)
捕手/大岩翔斗(健大高崎)
一塁手/小野舜友(横浜)
二塁手/楠本龍生(智辯和歌山)
三塁手/黒川梨大郎(智辯和歌山)
遊撃手/金本相有(天理)
外野手/赤間史弥(花巻東)
外野手/石田雄星(健大高崎)
外野手/井本陽太(智辯和歌山)
指名打者/古城大翔(花巻東)
2025年夏の王者・沖縄尚学を1回戦で破った、2025年選抜王者・横浜。そのエースとして強敵を次々となぎ倒したのが織田翔希だ。甲子園最速となる156キロのストレートと多彩な変化球を武器に、圧巻の投球を見せた。
中1日で先発した準決勝では智辯和歌山打線につかまり、途中降板。それでも、今大会のナンバーワン投手だったと言っていいだろう。
その織田から2安打を放ち、打率.467をマークした花巻東の古城大翔と、横浜の1番打者として打率.429、7打点を記録した小野舜友のポジションはファースト。ふたりの打力を考えれば、どちらかを外すのは難しい。一塁に小野、指名打者に古城を置きたい。
二塁手は、堅守と勝負強い打撃を見せた仙台育英の有本豪琉と、智辯和歌山の5番打者・楠本龍生で迷った。ここは準決勝で織田から本塁打を放った楠本を選出。球際の強さに加え、正確なスローイングもすばらしかった。
遊撃手は横浜の池田聖摩も捨てがたいが、金本相有を選んだ。2本塁打を放った打撃に加え、華麗な守備も高く評価したい。
外野手にも好選手がそろった。花巻東戦で本塁への好返球を見せた横浜の江坂佳史、勝負強い打撃で6打点を挙げた同じく横浜の千島大翼、今大会第1号本塁打を放った仙台育英の田山纏など、候補は多い。
そのなかから、左翼手には投手としても好投し、打率.357、4盗塁を記録した花巻東の赤間史弥。中堅手には打率.435をマークし、決勝戦でホームランを放った石田雄星。そして右翼手には、驚異の打率.611を残した井本陽太を選んだ。
投手/鈴木有(佐野日大)
捕手/河内山潤(高川学園)
一塁手/小野舜友(横浜)
二塁手/永田晴輝(有明)
三塁手/村上聖(霞ケ浦)
遊撃手/金本相有(天理)
外野手/赤間史弥(花巻東)
外野手/千島大翼(横浜)
外野手/田中皐晴(日南学園)
指名打者/古城大翔(花巻東)
投手は佐野日大の鈴木有。横浜・織田翔希が記録した甲子園最速156キロに注目が集まった大会で、「投手は球速だけではない」ことを証明した価値は大きい。球速は140キロに満たない。それでも外角へのコントロールはもちろん、内角をズバッと突く制球力で打者を牛耳った。見逃し三振が多かったのも、際どいコースに投げきれていた証拠だ。
捕手は高川学園の河内山潤。天理戦では一塁走者としてけん制を受けたあと、一塁手からの返球を投手がこぼした一瞬を見逃さずスタートを切り、二塁を陥れた。「ボールから目を切らないのは、チームとして追い求めていること。それを大事に2年半やった結果、ああいうのにつながった」。小さなことを2年半積み重ね、それを甲子園という大舞台で結果につなげたことに拍手を送りたい。
一塁手は横浜の小野舜友。2回戦の日南学園戦で覚醒してからの強打は見事だった。どこに投げても打ちそうな雰囲気があり、アウトになった打球でさえ質が違った。
二塁手は有明の永田晴輝。長崎日大戦では三塁からのゴロ・ゴーで驚異の3秒03を記録した。甲子園でも歴代屈指のタイムだ。さらに東日本国際大昌平戦、健大高崎戦でも盗塁を決め、その足で強烈なインパクトを残した。
三塁手は霞ケ浦のキャプテン・村上聖。166センチ、66キロと小柄ながら、打撃では12打数7安打の大当たり。守備でも横浜戦で三塁側カメラ席に飛び込みながらファウルフライを捕球するガッツを見せた。
遊撃手は天理の金本相有。今大会は準々決勝終了時点で本塁打がわずか6本。そのなかで、ひとり2本を記録した。名門・天理の4番打者だが、決して大振りではない。コンパクトに振っているようで打球が飛ぶ。守備も堅実だった。
左翼手は花巻東の赤間史弥。180センチ、98キロの堂々たる体格から、打席では常にフルスイングを貫く。その一方で、今大会で強烈な印象を残したのが走塁だった。
佐々木洋監督は「1年の時は走塁に興味がなかった」と振り返る。それが新田戦では、タッチアップできないほど浅い外野フライで、返球を受けた二塁手が背中を向けた一瞬を見逃さず、三塁から一気に生還。岡山学芸館戦では2度の三盗を決めるなど、結果的に本盗となった走塁も含めて4盗塁を記録した。投手としても英明戦に先発し、6回無失点で勝利投手となった。
中堅手には、本職が右翼の横浜・千島大翼を選んだ。沖縄尚学戦では末吉良丞から適時三塁打。霞ケ浦戦では追い込まれながら、外角低めのベストボールともいえるスライダーを右翼前へ運び、勝ち越しタイムリーを放った。9番打者とは思えない勝負強さを見せ、準々決勝からは6番へ昇格した。
右翼手は日南学園の田中皐晴。
指名打者は花巻東の古城大翔。180センチ、94キロの恵まれた体格を誇り、1年時から4番を任されてきた。当然、一発を期待される打者だが、春まではやや大振りになる傾向があった。それを夏までに修正し、甲子園では確実性も示した。横浜の織田から放った2安打にも、その成長が表れていた。
投手/平田玲翔(大分商)
捕手/太田涼介(長崎日大)
一塁手/小野舜友(横浜)
二塁手/永田晴輝(有明)
三塁手/黒川梨大郎(智辯和歌山)
遊撃手/池田聖摩(横浜)
外野手/石田雄星(健大高崎)
外野手/長友悠成(智辯和歌山)
外野手/田山纏(仙台育英)
指名打者/伊澤拓真(東海大甲府)
今回は「際(きわ)での強さ」をテーマに選出させてもらった。
投手は甲子園最速の156キロを計測した織田翔希(横浜)ら、印象的な選手が多かった。初めて見た岩井秀耶(社)の実力にも驚いた。
そんななか、勝負師としてのメンタリティーに感服したのが平田玲翔(大分商)だ。劣勢でのリリーフ登板ながら、「楽しい場面をつくってくれた」とピンチをつくった投手に感謝するほどの余裕を見せた。「1球で球場の空気を変える」と語ったとおり、初球の150キロで甲子園球場の空間を支配した。この異能は高いステージでこそ効力を発揮するはず。今秋にはいい球団と縁が結ばれることを祈りたい。
今大会は、能力の高い1番打者が目立った。1打席目から存在感が際立ったのは、太田涼介(長崎日大)と長友悠成(智辯和歌山)。ともに体格的には小柄ながら、ひと振りで球場の重い空気を切り裂くシャープなスイングが印象的。太田は捕手としての献身や、ベースランニングの機敏さも光った。長友は1年後の侍ジャパンU-18代表のリードオフマンを託せる資質の持ち主だろう。
永田晴輝(有明)は、大会のMVPと言っても過言ではない躍動ぶりだった。勝敗を分ける場面でことごとく顔を出し、「オレが決めてやる」という強い意志を感じた。「この場面で打つか!」「ここで走れるの?」と何度も感嘆させられた。
小野舜友(横浜)は、背負う覚悟の重みを感じた。本気で日本一を狙う組織の主将として、1番打者として、文字通り牽引する姿を示した。今年のチームだけでなく、来年以降の後輩たちにも影響を与える戦いぶりだった。
石田雄星(健大高崎)には、ひとりだけ社会人野球選手が混ざっているような、次元の違いを感じた。野球選手としての精神年齢が高い。職人技のドラッグバントなど、攻撃の引き出しが何個もある。広い守備範囲を含め、大学で即戦力になれる外野手だろう。
プレーヤーとしての華で言えば、田山纏(仙台育英)もすばらしかった。開幕戦で本塁打を放ったシーンは、まるで時間が止まったかのように画になった。本人が目指す高卒でのプロ入りに向けて、強烈なアピールになったはず。上の世界でも「田山劇場」を演じてもらいたい。
夏の大会として初導入になった指名打者は、伊澤拓真(東海大甲府)を選びたい。ひと振りで目を惹く、スイングの圧力を持った強打者。昨夏も山梨大会で見ているのだが、当時は印象に残らなかった。相当に努力を重ねたのだろう。今後もバットで野球人生を切り拓いてもらいたい。
守備の重要性を示してくれたのは、池田聖摩(横浜)、黒川梨大郎(智辯和歌山)だった。
池田は三遊間の難しいバウンドを逆シングルで捕球し、強肩を生かしたスローイングで刺すシーンがインパクト絶大だった。課題の打撃でも、グリップ位置を変えたことで停滞を抜け出した。もともと潜在能力は誰もが認める存在だったが、名実ともに「高校ナンバーワン遊撃手」へと成長した感がある。
黒川は、昨夏は遊撃だったが、今夏は三塁で強烈な打球を次々にさばいてみせた。昨夏は1300グラムの極太木製バットを使っていたが、今夏は金属バットを使用。野球選手としてステージを高めるため、発展的な意味合いの金属転向だったそうだ。
今夏はドラフト候補の数は少なかったが、人の心を動かす選手は例年と変わらず多かった。これからも心が沸き立つ選手と出会えることを楽しみにしたい。










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