9月4日に福岡県北九州市で幕を開けたバレーボール男子アジア選手権。2028年ロサンゼルス五輪の切符をかけて、アジアの強豪国・地域が福岡に集った。
ただ、日本からすれば、イランや中国などネーションズリーグに参加しているチーム以外は、対戦経験が乏しいのも事実。大会の抽選会が行なわれる前の時点では、選手たちの大半が「対戦した覚えがない」と口にする相手国と、本番で対峙することも十分に想定されていた。
今年最大の大勝負を約2週間後に控えた8月18日、報道陣向けに開かれた取材の場で、リベロの山本智大(大阪ブルテオン)は不敵ともとれる笑みを浮かべた。「相手によっては、セッターがどこに上げてくるか、スパイカーがどこに打ってくるか、それにサーブがどこに飛んでくるかわからないですから、そういう難しさはあるかもしれません。がんばりますよ!」
果たして組み合わせが決まり、予選ラウンド初戦の相手はオマーンとなった。9月4日の試合を前にして、世界ランキングは64位(日本は6位)。未知なる相手といえた。
そして、いざ試合が始まると、山本が口にしていたような「難しさ」に直面する場面もあった。
「リズムやテンポ、それにスパイクもどこに打ってくるかわからない部分が、かなり多かったです。僕自身、オマーンと対戦するのは初めてでした。データどおりの動きもあれば、データ外の、たとえば腕が振られていない方向に思いきりボールが飛んでくるケースもありました。そこは難しかったです」
とはいえ、そこは「絶対的守護神」山本智大だ。
「振り返れば、もっともっと返せるボールもありました。そこは詰めていきたいところです。初戦ということで、ここから徐々に個人としても、チームとしても調子を上げていきたいです」
【パリ五輪予選での苦い体験】
難しさがあったとすれば、相手の戦闘力が読めないことに加えて、この大会がオリンピック予選を兼ねていることも背景にある。
「どこが相手になっても難しいな、という雰囲気は感じているので、そういうムードに流されずに、自分たちのやることに集中したい」とは山本の言葉だ。オリンピック予選となれば、ほかの国際大会とは異なる緊張感や重圧が会場を包む。この日のオマーン戦も、そうだった。
「1、2セット目の展開(25-18、25-13)から、第3セットの入り方は非常に難しい部分がありました。前回のパリ五輪予選でも同様の展開で、3セット目を奪われてエジプトに負けたり、フィンランドにフルセットまで持ち込まれた部分がありましたから。そこはもう一回、引き締める必要があると考えています」
山本がそう話したように、3年前のパリ五輪予選も決してラクな戦いではなかった。大会初戦のフィンランド戦は3-2(25-17、25-15、25-27、19-25、15-12)で辛くも勝利し、続くエジプト戦は2-3(25-14、25-10、23-25、23-25、13-15)と逆転負けを喫したことで一転、窮地に立たされた。
結果的にその状況から五輪の切符をつかみとったわけだが、その苦い体験があるからこそ、今回のアジア選手権でも必要となる心構えや行動を山本は強調する。
「(オマーン戦の)第3セットは、それまでできていることが少しずつできていなかったと感じました。攻撃に関しては相手のブロックに引っかかったり、また相手にラッキーなディフェンスから決められる展開が続きました。そこはもう少し、自分たちからブロックディフェンスを徹底することなどが必要でした。
セットを落としたことは反省ですが、まずはしっかりと勝っていくことが何よりも大事です。どの国に対しても戦える自信はあるので、準備を怠ることなく、プレーしていきたいと思います」
【小川智大とのスタメン争い】
どの大会でも、どの試合でも、どの相手でも──。自分たちの、そして自分のプレーをすることは、山本のなかで揺るがぬ信念として宿っている。それは、チーム内競争に対しても同じ。
リベロの小川智大(ボグダンカ・LUK・ルブリン/ポーランド)とは今大会もそろって登録メンバー入りを果たしているわけだが、どちらを起用するかは、ロラン・ティリ監督にとっても悩ましい選択だという。ここ数年は常にふたりで守護神の座を競い合っており、今年のネーションズリーグでは1試合ごとに互いが起用された。その状況について、山本はこのように語る。
「これまでだとほぼすべての試合に自分が出ていたわけですが、今年は1試合に出て、次の試合は休む、という具合なので、そこは難しい部分です。ただ、競い合っているからこそ、コート上でいいパフォーマンスを発揮できているのも確かですから。
本音を言えば、もっともっと試合に出たい気持ちはありますし、それは彼(小川)もおそらく同じでしょう。本当に世界トップレベルの争いができていると感じますし、これだけ力のあるリベロがふたりとも試合に出ているチームは、世界的にもほかにありません。
このレベルで競えていること自体は、とてもうれしいです。あと何年、彼との争いが続くかわからないですけれど......そこを考えすぎることなく、自分のプレーをコート上で繰り出したいと思っています」
オマーン戦で白星発進を飾り、予選ラウンド第2戦は9月6日に世界ランキング44位のバーレーンと対戦する。力関係が計りにくい相手であり、かつ、リベロに関しても山本と小川、どちらが起用されるかはわからない。それでも、これだけは決まっている。
「自分たちがやるべきことは変わらない」
日本が誇る守護神は自信をのぞかせながら、不敵にほほえんだ。
坂口功将●取材・文 text by Kosuke Sakaguchi



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