【神奈川中央交通】不動産関連M&Aを活発化 バス・タクシーで重ねた買収と再編に続く新たな展開

神奈川県を中心にバスやタクシーなどを展開する神奈川中央交通<9081>が、不動産関連領域のM&Aを活発化させている。

長期ビジョンで事業ポートフォリオの再構築を掲げ、現在の中期経営計画では不動産関連領域を重点課題の一つに位置付けた。

同社は創業期にバス事業の合併や事業譲受を重ね、タクシー事業でも企業取得とグループ再編を進めてきた実績を持つ。

足元の買収実績と中期経営計画の方針を踏まえると、今後も不動産関連領域で新たな案件が続く可能性がある。

不動産関連領域を重点課題に

神奈川中央交通は、2025年3月期から2027年3月期までの中期経営計画を、2031年3月期を最終年度とする長期ビジョンの第1ステージに位置付けている。

中期経営計画では「持続可能なモビリティサービスの実現」「不動産関連領域の強化」「『ゆたかなくらし』への貢献」の三つを重点課題に掲げた。

不動産関連領域では、グループ各社が保有する資産の管理を一元化し、高度利用と効率化を進めるほか、建築費の高騰など不動産市況の変化に応じて開発計画を見直し、不動産事業の持続的な成長につなげる。

さらに仲介事業の強化や分譲事業の推進に加え、ビル管理事業ではM&Aも検討する。

こうした方針の下、2025年に設備管理、清掃、警備などを手がける東光を子会社化したほか、2026年には不動産関連会社3社を子会社化した。

東光は、会計上「その他の事業」に含まれるが、2026年4月に公表した「神奈中グループ中期経営計画(2024年度~2026年度)の進捗について」では、東光の取得を不動産関連領域のM&Aとして挙げている。

その後に子会社化した水島商事、林間商事、エムエス企画の3社は、不動産の分譲、仲介、管理、建築・リフォームなどを手がける。

東光と不動産関連会社3社では事業内容が異なるものの、いずれも中期経営計画で掲げた不動産関連領域の強化に沿ったM&Aとなる。

バス事業のM&Aで路線網を拡大

神奈川中央交通が2021年に発行した「神奈川中央交通100年史」によると、同社は1921年に横浜市で設立された相武自動車を前身とする。

相武自動車は、弘明寺(横浜市)から鎌倉までの路線など数系統で事業を始め、翌年にかけて個人経営のバス路線などを承継した。

その後、関東大震災で多くの路線が運休したため、新路線の開設や出張所の増設、本店移転などで事業の立て直しを試みたが、経営は好転しなかった。

1938年には、バス会社の買収や合併で事業を拡大していた東京横浜電鉄の傘下に入った。

翌1939年には、中央相武自動車を合併し、東海道乗合自動車に社名を変更した。

1941年には関東乗合自動車と江ノ島電気鉄道から路線を譲り受け、1942年には秦野自動車と合併。

さらに1944年には伊勢原自動車と藤沢自動車を合併した。

こうした合併や事業譲受によって、路線は神奈川県だけでなく、東京都や山梨県にまで広がった。

タクシー会社の取得後に事業を集約

一方、タクシー事業は、外部企業の取得とグループ内再編を重ねて現在の体制に至った。

1950年5月に、戦時中の国策で県央部のハイヤー・タクシー事業者を統合して設立された相模中央交通を合併した。

100年史は、この合併が神奈川中央交通による乗用事業(ハイヤー・タクシー事業)再開の足掛かりになったとしている。

翌1951年には、辻堂タクシーを傘下に収め、辻堂タクシーの社名を湘南交通に変更。

1953年には小田急沿線を地盤とする湘北交通を設立し、神奈川中央交通、湘南交通、湘北交通の3社体制で乗用事業の基盤確立を目指した。

2009年には神奈中タクシーホールディングスを設立し、相模中央交通と神奈中ハイヤーを傘下に置く持ち株会社体制へ移行。

2018年には神奈中ハイヤーが神奈中サガミタクシーを吸収合併し、2019年には二宮神奈中ハイヤーと神奈中ハイヤー横浜を吸収合併した。

同年には神奈中タクシーホールディングスが相模中央交通、神奈中ハイヤー、伊勢原交通を吸収合併し、神奈中タクシーへ社名を変更した。

現在、タクシー事業は、乗合バス、貸切バスとともに旅客自動車事業を構成し、路線バスでは対応しにくい個別の移動需要を担っている。

神奈川中央交通は、IRサイトの「事業等のリスク」で、人材不足をグループの重要な経営リスクとして挙げる。

同社グループは、旅客自動車事業をはじめ労働集約型の事業が多く、必要な人員を確保できない状態が続けば、乗合バス事業では路線の維持が難しくなり、タクシー事業では車両の稼働率が低下する可能性があるとしている。

人材不足はグループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があり、足元ではすでに業績に悪影響が出ているという。

旅客自動車事業の運転士については、多様な広告媒体を活用して採用活動を強化するとともに、乗務に必要な運転免許の取得支援制度を設け、新卒者を含む免許未取得者まで採用対象を広げるなどの対応を行っている。

人材確保の成否が、今後のバス路線の維持やタクシー車両の稼働を左右しそうだ。

【神奈川中央交通】不動産関連M&Aを活発化 バス・タクシーで重ねた買収と再編に続く新たな展開
神奈川中央交通の沿革と主なM&A・事業再編

旅客自動車が売上高の45.5%

神奈川中央交通の2026年3月期の売上高は1267億7300万円(前年度比7.3%増)、営業利益は67億7600万円(同8.3%減)だった。

売上高は、旅客自動車事業(乗合バス、貸切バス、タクシー)が577億1400万円、不動産事業(分譲、仲介、買取再販、賃貸)が67億3300万円、自動車販売事業(自動車の販売・整備)が402億7600万円、その他の事業(レジャー、流通、ビル管理など)が220億4900万円となった。

売上高に占める割合は、旅客自動車事業が45.5%で最も大きい。

自動車販売事業は31.8%、その他の事業は17.4%で、不動産事業は5.3%にとどまる。

【神奈川中央交通】不動産関連M&Aを活発化 バス・タクシーで重ねた買収と再編に続く新たな展開
神奈川中央交通の売上高構成比

一方、セグメント利益は旅客自動車事業が22億3200万円、自動車販売事業が16億8700万円、その他の事業が16億200万円で、不動産事業は15億8800万円だった。

不動産事業の売上高構成比は5.3%にとどまるものの、利益面では自動車販売事業やその他の事業と同水準にあり、不動産関連領域の拡大が連結利益の押し上げにつながる余地がある。

足元の買収実績と中期経営計画の方針から、不動産関連領域で新たなM&Aが続く可能性があり、事業ポートフォリオの再構築を後押ししそうだ。

文:M&A Online記者 松本亮一

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