《『水ダウ』が物議》「吐くまでやらせるのはどうかと…」ラーメン店が疑念、嘔吐物そのまま放送で「モザイクくらいかけろよ」問われる笑いと不快の境界線
《『水ダウ』が物議》「吐くまでやらせるのはどうかと…」ラーメン店が疑念、嘔吐物そのまま放送で「モザイクくらいかけろよ」問われる笑いと不快の境界線

TBS系の人気バラエティー番組『水曜日のダウンタウン』で放送された企画「国道ラーメンマラソン」が、大きな波紋を広げている。出演芸人が嘔吐した際、一部の映像で嘔吐物がモザイクなどの処理なしでそのまま放送されたためである。

ネット上では番組の「攻めの姿勢」を絶賛する声が上がる一方、生理的な嫌悪感や倫理的配慮の欠如を批判する声も相次いでいる。コンプライアンスが厳しく叫ばれる現代のテレビ界において、本放送が投げかけた「笑い」と「不快」の境界線を考える。

衝撃の「モザイクなし」嘔吐と現場の爆笑

9月2日に放送された、TBS系の人気バラエティー番組『水曜日のダウンタウン』(以下、水ダウ)が、放送直後からSNS上で物議を醸している。ネット上では「これぞ水ダウ」「ガチの神回」と絶賛する一方で、「食事時に最悪」「地上波で流していいレベルを超えている」と非難の声も上がった。

物議を醸しているのは、同番組の人気コンテンツ「国道ラーメンマラソン」。

31度の猛暑の中、環状八号線(環八)沿いの全長20kmのコースを2人1組で走る。その際、沿道にあるラーメン店の前を通ると、チームで必ずラーメンを1杯完食しなければいけないという過酷なルールである。

挑戦したのは、みなみかわ&きしたかの・高野正成チーム、モグライダー・ともしげ&や団・中嶋享チームの2組。9時間48分に及ぶ死闘の中で10杯以上のラーメンを食すこととなり、芸人たちは満腹と足の痛みに加え、炎天下での過酷な運動による独特の体調不良に苛まれていった。

問題のシーンは、みなみかわがすでにラーメンを6杯(うち2杯は高野と途中交代)、お店の好意でいただいた蕎麦を1皿完食したあとに起こる。

極限状態の中、開始から5時間経った頃、移動中に「うっ!」と声を上げた瞬間、道路上で突如として嘔吐した。その映像には、テレビ放送で一般的な「モザイク処理」や「自主規制のキラキラマーク」などのエフェクト処理が施されていなかった。地面に広がった嘔吐物には緑の画像処理がなされていたものの、かなりの時間、ありのままの嘔吐物がそのまま地上波の画面に映し出されたのである。

スタジオでVTRを見ていた出演者たちは顔を覆い隠したり、「何の処理もしてへん」「おいキラキラつけろや」と反応。しかし、現場にいたスタッフはカメラを回し続け、ペアの高野は嘔吐しているみなみかわを指して大声で爆笑した。

みなみかわは同企画3年目、3回目の出場にして初めて嘔吐する事態となり、「俺も吐きたくて吐いたんやない、もう出てきたんやもんもう」「吐血やったよほとんど」と釈明。

その後、演者とスタッフ全員で散乱した嘔吐物を片付けるシーンまで放送された。さらにVTR明けのスタジオでは、バイきんぐ・小峠英二が「●●(編集部伏字)は見えた方が面白いですね」とコメントするなど、番組側がこのタブー破りを積極的に面白がる姿勢が強調された。

「モザイクくらいかけろよ」「見たくないなら見るな」

放送直後から、X(旧Twitter)では非難の声が溢れかえった。

《たまたま水ダウのラーメンマラソンで吐いてる所を見てしまって、そこから一生体調不良。モザイクくらいかけろよ》
 《なかなか汚くてすごい。地上波なんだぞ、配信じゃないんだぞ》
 《●●(編集部伏字)を地上波でそのまま映していいわけがない。食事時に最悪の気分になった》

と、生理的な不快感を訴える視聴者が続出する一方で、《水ダウ死ぬほど攻めてたな~》《腹抱えて笑った》といった好意的な声や、不快感を表す視聴者へ向けたような《見たくないなら見るな》という番組擁護派の声も見受けられた。

しかし、放送倫理の観点から見れば、今回の演出は極めて危うい。

日本民間放送連盟(民放連)の放送基準において、民放連『放送基準』第8章「表現上の配慮」には以下のような記述がある。

【放送時間に応じて視聴者の生活状態を考慮し、不快な感じを与えないようにする。

視聴者の反応を見る限り、不快と感じた人が一定数いることは明らかである。

また、BPO(放送倫理・番組向上機構)の公式サイトには、過去に別の番組に視聴者から寄せられた意見として、「バラエティー番組の海外ロケで芸人の嘔吐シーンがあったが、映像処理をしているとはいえ、食事時に如何なものかといった批判があった」と記されている。

今回の水ダウは修正を施していない映像も放送したため、これよりも不快感の度合いは高いのではないだろうか。

実は、水ダウが「嘔吐物」を巡って物議を醸すのは今回が初めてではない。

2024年にも、安田大サーカス・クロちゃんを寝ている間に天井に吊るすドッキリ企画において、酩酊したクロちゃんが宙づり状態で嘔吐。

その嘔吐物を真下の芸人が浴びるという生々しいシーンが放送され、物議を醸した過去がある(その時はエフェクト処理)。

これを問題視された過去がありながらも、再び過激な演出を繰り返した形だ。

お笑いの裏で切り捨てられた「マナーとリスペクト」

何を面白いと感じるかは個人の自由である。しかし、今回の企画にはもう一つ、バラエティー番組として欠けていた視点がある。それは食材と店舗へのリスペクトだ。

環八沿いのラーメン店は、それぞれがこだわりとプライドを持ち、心を込めて一杯のラーメンや食事を提供している。それらを過酷なマラソンを引き立てるための障害物として扱い、限界まで食べさせ、最終的に道路に吐き出す。

この一連のプロセスは、店側やラーメンという料理に対して失礼な行為ではないだろうか。

視聴者からも、

《美味しいラーメンをネタとはいえ、こんなくだらない道具に使ってほしくねぇんだよなぁ》
《美味しいラーメンを苦しそうに食べるのお店に失礼な企画》

という声も見受けられた。今回番組に出てきた18店舗のうちの1店舗に取材を試みると、

――番組はご覧になりましたか?

「はい。見ましたよ」

――どのように思いましたか?

「まあ、あんなもんだと思います」

――ネット上では、みなみかわさんが食べたラーメンを吐いたシーンがモザイク無しで映ったことに対し、真心こめて作られたラーメンやお店に失礼なのではないかとの声があがっています。それについてはどう思いますか?

「ああいう企画なら仕方ないんじゃないですか。吐くまでやらせるのはどうかと思いますが。面白いかどうかは人それぞれなので」

と、番組への理解は示すも、吐くまでやらせることについては疑問を抱いているようだった。

昨今のテレビ番組はコンプライアンスを重視することで、尖った企画や挑戦的な企画が減り、視聴者や演者が面白くないと感じることが増えたかもしれない。

そんな中、水ダウは「説の検証」という名目で、新進気鋭の企画やドッキリを放送し人気を得てきた。ギャラクシー賞や放送文化基金賞などの受賞歴もあり、数ある番組の中でも評価されているバラエティー番組の一つと言えるだろう。

しかし、こうした番組側の「攻め」の姿勢を熱狂的に支持する視聴者が少なくない一方で、生理的な不快感を与えない最低限の配慮や、出演者の健康、さらには食材や協力店舗への敬意を重視する視点も、公共の電波を扱うテレビ番組には不可欠であるという指摘もまた重い。

今回の放送を巡る論争は、現代の地上波バラエティー番組における「攻めた笑い」と「不快感やマナー」の境界線、そしてコンプライアンスとどのように向き合うべきかという大きな問いを改めて投げかける形となった。

取材・文/小島ゆう

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